本拠地となるのは……
底本「ここは、いったい……」
狂郷「ここですか? ここはですね、私達が底本さんをここに連れてくるまで、ここで居候していた家です」
底本「え、居候?」
狂郷「はい、居候ですが」
底本「……何ぃっ狂郷! 拙者を差し置いて居候など、何楽しそうなことをしているのだ! 許さんぞ!」
狂郷「えぇっ! なんでそんな怒っているんですか」。ゲラゲラ。
そこへ、家の扉が開く。
津島「うるさいなあ。いったいどなたですか?」
狂郷「お、津島君。元気そうだね!」
津島「あ、狂郷さん。こんにちは。あれ、隣にいる貧乏そうな人は誰ですか? 代りに平賀さんがいないようですが」
底本「貧乏そうとは失礼だな! 拙者は底本貧三、江戸の傘侍でござるよ! これでも武士だ、甘く見ないでもらいたい」
津島「はあ、傘侍って何ですか」。こそこそ。
狂郷「傘を作ったいる侍のことです、たぶん」。こそこそ。
底本「何をこそこそ話しているのだ!」
津島「まあ、ここで話すのもなんですし、中に入りませんか?」
狂郷「底本さん、ここはお言葉に甘えて、お邪魔しましょう」。ゲラゲラ。
三人は津島の部屋に入る。
津島「それで、平賀さんはいったいどこに?」
狂郷「それがですね、実は平賀さん、拉致られてしまったんですよ!」
底本「『拉致られた』、狂郷、そんな砕けた表現、いつから使うようになったのだ……」
津島「なるほど、まあ、あんな格好なら拉致られるのも仕方ないでしょうね。それで、底本さんはなぜここに来たんですか?」
底本「そうだ狂郷。なぜ拙者を連れてきたのでござるか。拙者がいなくとも、狂郷の力量だけでも事は運ぶことができるだろう」
狂郷「それは、単純に、一人じゃ心細いからで……」。もぞもぞする。
底本「何を照れているんだ……、まさか、狂郷貴様ァ!」
狂郷「いやいや! そんな深い意味なんてあるわけないでしょう!」
底本「びっくりしたなあ……」
津島「ふーん……」