ブラジルのクリスマス
十二月二十六日、底本達は家でクリスマスケーキを食べていた。
底本「どうして拙者達は一日遅れてケーキなんかを食べているんだ……」。底本は愚痴りながらケーキを食べる。
狂郷「仕方ないでしょう。私が黒白ちゃんに思いっきりボールを当てられ、ブラジルまで吹っ飛んでしまったんですから」
津島「パスポートも持っていないのに、どうやって日本に戻って来れたか些か疑問ですが、無事帰還することができて良かったです」。津島はコップにオレンジジュースを注ぐ。
底本「本当だよ、それで狂郷、向こうのクリスマスはどうだったんだ?」。底本はホイップクリームを口に付けながら狂郷に尋ねる。
狂郷「ああ、ブラジルのクリスマスでしたか、とても印象に残りました」
津島「へえ、どのような感じだったんですか?」。津島も狂郷に問う。
狂郷「まずですね、向こうは暑かったです」。狂郷はジュースを飲みながら応える。
底本「暑いの! この冬に?」。ケーキを噴き出す。
津島「ブラジルは日本とは違って南半球に位置しているので、今の季節的には正反対の夏なんですよ」
狂郷「そうなんですよ、それに、私サンタさんにあったのですが……、サーフィンしていました」
底本「サーフィンしてたの!」
津島「なかなか向こうのクリスマスも楽しそうですね」
狂郷「それと、向こうではパネトーネというイタリア発祥のパンのようなものを食べていました」
底本「ふえー、美味しそうだなあ」
狂郷「さらに向こうには、会社から『13番目の給料』と呼ばれるボーナスがあるようですよ。また、会社や友人とは『アミーゴセクレート』という特殊なプレゼント交換をしていました」
津島「アミーゴセクレート? いったいどんなプレゼント交換ですか?」
狂郷「事前にくじを作り、引いた人に対してプレゼントを送るというものです」
底本「それは面白そうだなあ」
狂郷「それと、商店街はいつも五時に閉まるのですが、このシーズン中は十時まで開いているんです」
津島「プレゼントを買い忘れても、すぐに買いに行けるってことですね」
底本「だが拙者みたいな貧乏にはプレゼントなんてものは買えないでござるよ」
狂郷「そんな人のために、スーパーや教会には募金箱や子ども達へのプレゼントを買って入れる箱が設置されています」
底本「本当か狂郷!」。底本は身を乗り上げる。
津島「たぶん底本さんのためではないと思います」
狂郷「あと、ブラジルはカトリックの国なので、クリスマス当日は祝日なんですよ。ですから、その日は仕事なんかしないんですよ。また会社から、『良いクリスマスを』という意味で『セスタ ジ ナタウ』というシャンパンやパネトーネが入ったバスケットのようなものを貰えます」
底本「そうなのかあ、いいなあ」
津島「日本は仏教や神道の国なので、そのような待遇は一切ありませんね」
狂郷「まあ、ブラジルのクリスマスもなかなか良かったですよ」
こうして、底本達のクリスマスは終わった。