冬の通学路
津島「それじゃあ行ってきますね」。津島は学校へ行くために家を出る。
外の気温は非常に低く、津島の吐く息もはっきりとした白色に塗られている。砂利の上には少しの雪が積もっており、アスファルトやコンクリートの上は、酷く滑りそうな様子である。
津島「うわあ、この中を自転車で行くことになるのか……。こりゃ滑らないように注意して行かないと怪我しそうだなあ」。津島は外の様子を見て独り言を呟く。
津島「まあ、去年転倒することは一度もなかったし、今年も転ぶなんてことはしやしないだろう」。そう言い自転車を置き場から外に移動させる。
そして津島は学校へ出発した。家のすぐ側では凍った水たまりの上で遊んでいる小学生らがいる。
津島「そんなことして転けるんじゃないぞ」。津島は子ども達に聞こえないような声で注意を無意味に呼びかけた。だが――。
津島「いやあ、それにしても今日は本当に寒い――っておわあああぁぁぁぁっ!」
ガッシャーンっ!
皮肉なことに転けたのは津島の方だった。
子達「どわっはっはっはーっ!」。子ども達は転倒した津島を見て大笑いする。
津島「撤回しよう。お前ら全員転けろ」。津島は例の如く聞こえないような声で子ども達を罵った。
それから津島は順調に転倒することなく自転車を漕いで学校へ向かう。
??「おーい! 津島ー!」。そこで誰かが津島を大声で呼びかける。
津島「ん? なんだ、弥七か」。津島はそう応じる。
弥七「地面めちゃくちゃ滑るよなー。津島、転けた?」。ゲラゲラ。
津島「ああ、一度な」
弥七「俺も一回だけー」
そこに大型トラックが津島達の横を走り去っていく。そのとき、彼らはとても面白いものを目撃した。トラックのマフラーから出たガスが、排出されてすぐには見えなくならず、道路の上を滑るように舞っていたのだ。
弥七「おー、なんか綺麗だなあ」。弥七はそれを見て感嘆する。
津島「そうだなあ。これって何かの現象だっけ?」。津島は弥七に問いかける。
弥七「んー、そんなのあったっけなー」。右上を向いて考え出す。すると――。
ガッシャーンっ!
弥七は転けた。
津島「はははっ! 気を抜いたらすぐに転けちまうよ!」。津島はゲラゲラ笑いながら後ろで転倒した弥七を省みた。
ガッシャーンっ!
案の定津島も転けた。
弥七「お前も転けてんじゃねーか」。ゲラゲラ。
津島「あーもう。だめだこりゃ」。津島は呆れ果てて言った。
僕に一緒に登下校するような友人はいませんからー!
残念っ!