ハッピーハロウィン
十月三十一日の夜、津島家にて――。
底本「あれえ? おかしいなあ……」。底本は何かを探しているようだ。
津島「どうしたんですか底本さん?」。津島は何かを探している底本に尋ねる。
底本「いやあ実はね、狂郷どんが見当たらないんでござるよ」
津島「ああ狂郷さんを探していたんですね。確かにいません。どこへ行ったのでしょう?」。首を傾げる。
ピーンポーン。インターホンが鳴る。
底本「おっ、もしや狂郷か? 出掛けていたのかなあ。こんな時間まで出掛けているとは珍しいこともあるものだ」。玄関へ駆けていく。
津島「あっ……」。察し。
玄関にて――。
底本「狂郷どんおかえりでござるー! いやあ、ずいぶんと遅っ……ん?」。底本はそう言って玄関の扉を開ける。すると……。
お化「トリック・オア・トリートオオォォォ!」
そこには白い布を被ったオバケがいた。
底本「イヤあああぁぁぁぁ! 出たあああぁぁぁぁ!」。底本は猛スピードで津島の元へ戻る。
リビングにて――。
底本「オワアアアァァァァ! 助けて津島君! ひとりかくれんぼの余波が! ひとりかくれんぼの余波が!」。底本は津島にしがみつく。
津島「あー、やっぱり来てしまいましたか」。津島は冷静に呟く。
底本「やっぱりあれかなあ? ひとりかくれんぼを終わらせるとき、拙者だけふざけて『拙者の勝ちだ』って言ったからかなあ?」。半ば泣きべそ。
津島「ああ、それもあるかもしれませんね」
底本「イヤあああぁぁぁぁ!」
津島(底本さんかなり怯えているなあ。今日はハロウィン。おそらく底本さんの言っている『ひとりかくれんぼの余波』というのは、オバケに変装している狂郷さんのことでしょう)
狂郷「トリック・オア・トリートオオォォォ!」。ドアの向こうから声を発する。
底本「アアアァァァァアア! 終わった! チーン……」。失神。
津島「気絶した!」
狂郷「いやあ、底本さん叫び過ぎですよー……ってあれ?」。狂郷はゲラゲラ笑いながら部屋に入ってくる。
底本「……」。目を回している。
狂郷「あちゃー、やり過ぎちゃったかな?」。ぽりぽり頭を掻く。
津島「いや、底本さんが大袈裟なだけですよ」。ゲラゲラ。
狂郷「やっぱそうだよね」。ゲラゲラ。
底本「zzZ」
狂郷「あ、津島君手を出してみて」
津島「ん、なんですか?」。手を出す。
狂郷「はい、ハッピーハロウィン!」。津島の手に何かを渡す。
津島の手に渡されたのは、『うめえ棒』だった。