ひとりかくれんぼ その一
底本「狂郷、少し聞きたいことがあるのだが……」。底本は神妙な面持ちで言う。
狂郷「ん、どうしたんですか、底本さん?」。狂郷は拍子抜けた感じで応じる。
底本「実はな、インターネットとかいうやつで、何か面白いことないかなーって調べていたらな、興味深いものが見つかったのだよ」。人差し指を立てる。
狂郷「ほう、興味深いものですか。それはいったい何ですか?」
底本「それがな、そのサイトによれば、それはどうも非常に危険なことらしいのだ」。腕を組んで訝しげな表情をする。
狂郷「え、非常に危険って、いったい底本さん何を見つけたんですか?」。不安な面持ちになる。
底本「ああ教えよう、拙者が見つけた危険なものとはな……」。狂郷に顔を近づける。
狂郷「危険なものとは……?」
底本「ダラララララララ」。ドラムロール。
狂郷「早く言ってくださいよ」。ゲラゲラ。
底本「ババンッ! 『ひとりかくれんぼ』でござる!」
狂郷「……、へ?」。気の抜けた声を出す。
底本「『ひとりかくれんぼ』でござる!」
狂郷「いやそれはもう分かりましたから」。ゲラゲラ。
底本「どう思うでござるか、狂郷?」
狂郷「いや、『ひとりかくれんぼ』って、要するに一人でやるかくれんぼですよね? 何が面白いんですか?」。ゲラゲラ。
底本「だよな、意味分かんないよな。一人でかくれんぼとか何を考えているのか」。ゲラゲラ。
二人「アハハハハハハハ!」
津島「ひいぃぃぃいいいいぃぃ!」。津島は二人の横で凍りついていた。
底本「やあ津島君。おや、どうしたんだバケモノを見たような顔をして?」。とぼけた顔をする。
津島「底本さん……、今、何て言いましたか?」。ガタガタ。
底本「え? 『バケモノを見たような』って……」
津島「もっともっと前です」
底本「ん? そしたら、『ひとりかくれんぼ』のことか?」
津島「それです! それ、めちゃくちゃやばいんですよ!」。声を荒らげる。
底本「え、一人でかくれんぼをすることがそんなにやばいのか?」
津島「やばいのなんの、死人がでる可能性がありますから!」
底本「ええええぇぇぇ! まじ?」。驚愕の表情で叫ぶ。
津島「ええ、遊び半分でやったら確実に後悔しますよ……」
底本「狂郷、どうしよう……」。後悔したようなテンションで狂郷に話しかける。
狂郷「どうしようって、やらなければいい話じゃないですか」。ゲラゲラ。
底本「いや、実は……」
部屋の明かりが突然消える。
底本「始めちゃったんだよ。『ひとりかくれんぼ』を……」