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『テロに屈しない』とは

津島(つしま)「あー、やっべー。まじやっべー。っべー」。津島はひたすらレポート用紙に向かって何かを書き込んでいる。


底本(そこもと)「最近津島君のキャラブレているよな。前はこんなんじゃなかったよな」。底本は様子のおかしい津島を見て呟く。


狂郷(きょうごう)「ええ、完全にキャラ崩壊していますね」


底本「いったい何がやばいんだ津島君」。底本は津島に尋ねる。


津島「いやあ実はですね、明日までに提出するレポートを書いているんですよ」


底本「レポート?」


狂郷「和訳で、報告書ってことですよ、底本さん」。狂郷は人差し指を立てて説明する。


底本「ほほー、報告書かあ。って何の報告書なんだ? 何かやらかした?」


津島「何もやらかしていませんよ! 始末書じゃないんですから」。ゲラゲラ。


底本(こいつはやべぇっ! 狂郷のゲラが感染していやがる!)


狂郷「何か読みながらレポートを書いているようですね。きっと評論などのレポートでしょう」


津島「ビンゴですよ狂郷さん!」


底本「どういうレポートなんだ? ちょっとその本を見せてくれ。……なになに? 『テロ』……?」。底本は津島の読んでいる本を手に取る。


狂郷「『テロ』っていうのは正式には『テロリズム』と呼ばれて、政治的な目的達成するための暴力行為のことなんですよ」


底本「これまた難しい言葉なのだなあ……」


狂郷「まあ、政府に自分達の要請を飲み込ませる手段に暴力を働いているってところでしょうかね」


底本「なるほどなあ。津島君、その本に書かれていることを簡単に説明してくれ」


津島「むちゃぶりじゃないですか? まあいいですけど」。ゲラゲラ。


津島「えーっと、よく人々は『テロに屈しない』という言葉を使いますが、ほとんどの人はその意味を履き違えているんですよ。実際に『テロに屈しない』と言いながら、交渉なぞせずに、テロリストの人質になった人を政府は見殺しにした事件がありました。そこでこの筆者は疑問視するんです。『テロに屈しない』とは、『交渉しない』という意味なのか? と」


底本「それはないだろう。拙者は何があっても死者は出してはいけないと思っている。交渉しなかったとして、それは人質を危険に晒し、さらに相手の怒りを買うことになる」


津島「よく分かっていますね底本さん。そして、日本人は同調圧力がとてつもなく強力なんですよ。日本人は多数派の中にとても属しがちなんです。たとえその派が正しくない考えを持っていたとしても、それに気付かないんです。周りがそう言うから自分の言うことも正しい。そうやって無意識に無理やり自己肯定するんです。そうして少数派をあたかも間違いのように蔑視する」


底本「それはもはやメンタルの問題だろう。自分自身というのを失っているのではないか。まるで保険をかけるように社会から逃げている。たとえ自分達が間違いだと判明したとしても、みんな間違えていたと言って責任を軽くできる。そよ程度に考えている」


津島「そこで必要なのが、さらに平和的な考え方。犯罪者の大抵は、幼い頃に苦しい思いをしてきていたり、辛辣な環境に生きている者達だそうです。だから、その犯罪者などに罰などの苦しみを与えるのではなく、今まで苦しんできたところを補ってあげることが必要なんです。少数の犯罪者が大きな憎しみを見せるのなら、僕達はさらに大きい愛情を示そう、ということです」


底本「なるほど、非常に綺麗な考え方だ。しかし、それはあるいは詭弁かもしれない。間違いなのかもしれない。その考えを実行したところで最悪の事態が起こるかもしれない」


津島「そうなんです。だから、この段階では何が正しいのか分からないんですよ。一度失敗してみないと分からないですよ。しかし、それを裏返せば失敗すれば分かるということ。だが日本人は失敗してもそれを反省しない。顧みない。検証しない。だから何も変わらないんです」


底本「なるほどなあ……」


狂郷(底本さんってこんな政治的だったかなあ……?)

僕の読んだ本は、森達也さんの「『テロに屈するな!』に屈するな」です。

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