おいでよ、杜の都
底本「狂郷どん、ここはいったいどこでござるか?」。底本はとある広い通りを歩きながら狂郷に尋ねる。
狂郷「ここですか? ここは仙台の、定禅寺通りですよ」。狂郷は底本と同じように歩きながら答える。
底本と狂郷は、仙台の勾当台公園の辺りへ遊びに来ていた。
底本「ほう、定禅寺通りでござるか。にしてもここは随分と緑が多いなあ。江戸でもこんなに自然豊かではなかった気がするぞ」
狂郷「仙台は杜の都とも言われていますからねえ。そりゃあ江戸は都市部なので緑は多くありませんよ」
底本「しかしここも都市部ではあるのだろう? だったら十分ここは緑が多いと言えるでござろう」
狂郷「うむ、確かにそうですねえ。しかし空気はあまり良くないようです」
底本「確かにそんな気がする。しかし、どうして空気が悪いのでござろうか?」
狂郷「まあ、大きな理由としては大気汚染といったところですかね」。狂郷は人差し指を立てて説明する。
底本「大気汚染でござるか?」
狂郷「はい、そうですね、例えばあの車を見てください」。狂郷は定禅寺通りを走っている車を指さす。
底本「なんだ、汚い車でござるな。車が汚いから空気も汚れるということか?」
狂郷「んなわけないでしょう! ほら、後ろの方に筒みたいのがあるのに気付きましたか?」
底本「おう、拙者の優れた動体視力にかかれば御茶の子さいさいでござるよ」
狂郷「さすがですね底本さん。実はですね、あの筒から、 きったねぇ空気が排出されているんですよ」
底本「おほほー! あそこからきったねぇ空気が出てるのでござるか!」。ゲラゲラ。
狂郷「え、なんでそんなに笑ったいるんですか?」。ゲラゲラ。
底本「いやだってさ、狂郷が『きったねぇ』だなんて砕けた言葉を使うんだもの。そりゃ笑うでござるよ」。ゲラゲラ。
狂郷「ええー、そんなにおかしいですか? なんだか不服だなあ。……おや、あれはいったい何でしょうか?」。狂郷は何かを見つける。
底本「おー、これは何かの看板のようでござるな。なになに? 『通行止めのお知らせ』?」
狂郷「あー、もうこんな時期なんですねえ」
底本「え? 狂郷、拙者にはこの看板に書かれていることが全く分からないぞ。どうか説明してくれないか」
狂郷「ええ、まあ簡潔に言えば、近日ここ仙台で、『みちのくYOSAKOIまつり』という催しものがあるんです」
底本「む、よさこい?」
狂郷「毎年十月になると、ここで大規模なYOSAKOIまつりが行われるんですよ」
底本「ほほう! そのYOSAKOIまつりというのは、いったいいつ行われるんだ?」
狂郷「今年は、十月八日と九日の二日間で行われますね。とても賑わって楽しいですよ」
底本「なるほど、それはぜひ一度見てみたいものだな」
狂郷「見に行ってはどうですか? きっと後悔はしませんから」
底本「うむ、そうしてみるか。そうそう、そのときは狂郷も……」
狂郷「もちろん一緒に行きますよ」。ゲラゲラ。




