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その8,初めての凛音との特訓

あの夜から一日が過ぎ俺は、明るい日差しが迎えて早朝が来た。

だが、俺の気分はとても寝不足で不安定な感情に抱えながら朝食を食べ終え、食堂の店主から弁当をもらいそれを荷物にしまいそれを抱え凛音と一緒にとある場所に向かっていた。


それはこれからこの異世界を生き抜くために凛音に剣術の特訓をするつもりだ。

もちろん俺の武器は今相良さがらさんに作ってもらっている。というか掘っている?

俺の武器は分からないが、凛音が「剣術こそ戦闘の基本」と言っていたので、俺は戦闘の基礎を学ぶために剣術の修練を行うのであった。

俺は弱い。弱いから少しでも彼女たちを護るために強くなるためにこの世界の戦闘技術を学ばなければならないからだ。だからこれからその特訓の為に凛音についてきてこの村の所有地である修練場に向かっていた。


だが、俺はさっきも言った通り気分が晴れないからだ。その理由が二つある。

その二つの理由に凛音が共通している。

まず一つ目彼女は意外と毒舌でSだ。昨日の相良さんの鍛冶屋を後にした直後に不気味な笑顔で脅されたからだ。脅しかも知れないが真面目にやれば。無理なことはさせないだろう。


二つ目は昨日は節約のために部屋を一つしか借りれなくて、彼女と同じ部屋でしかも俺の布団の隣に寝てたからあまり寝付けなかった。この十五年間母親以外の異性と寝たことないので心臓がバクバクして寝付けなかった。それに比べ凛音は布団に入ってわずか数分でスヤスヤ寝ていていた。どうやら昨日の仕事と俺の付き添いで疲れたのだろう。

でも、やはり隣に寝て、よだれを垂らしながらスヤスヤ寝ている姿を見てるとと無性にムラムラする。

隣の布団に入り夜這いしたい。その右手で小さな胸を揉みまくりたい。

俺はそのどす黒い感情と激しく震える悪魔の右手を抑えながら長い一晩を過ごした。おかげで顔がいつもより表情が暗く目に隈が出来ている。前にも夜中に借りたアニメのDVDを一気見するために徹夜したがアレ以上に疲労する感じがした。


「どうしたでござるか焔殿。朝っぱらからずっとこの表情でござるよ。これから修練を行うのに非常にたるんでいるでござる」

道中この不細工な表情を見て呆れている凛音。いや、ほとんど君のせいだよ。その本音を隠しながら頭を下げ前に進むのであった。



「焔殿着いたでござるよ。とりあえず今日の午前中はここで修練を行うでござる」

「ここは?」



着いた先は周りの約半径三十メートル程の平地があり、周りにある雑木林は鈴のついた太綱で平地を囲んでいた。

いかにもこれから一緒に修行を行う為のうってつけの場所だ。

「さあ、焔殿今からこの中に入って修練を始めるでござる」

凛音は太綱をまたがり中の平地に入り、荷物を隅っこ降ろして、中から二刀の竹刀を両手に持ちその平地の中央に仁王立ちし、俺が来るのを待っている。その気迫はとても静かに冷静に満ちていて、いかにも夜叉の風格が見えた。その姿は見た目以上に怖く見えたが俺も男だ。その太綱をまたがって隅っこに荷物を降ろし凛音と同じ土俵に入った。


凛音と俺は対等に見つめあう。その距離五メートル。

「焔殿!!!」

そして、凛音は、一声を出した直後片方の竹刀を俺に向けて軽く投げつけた。

俺はなんとかそれを落とさずにキャッチした。これから竹刀を使った手合わせが始まるようだ。


「焔殿。これから実戦のつもりでその木刀でうちに攻撃を仕掛けるでござる。お主の実力をここで見たい。もちろん女扱いして手を抜くと分かってるでござるな?」

凛音の声のトーンが段々低くなっていってめっちゃ怖くなった。

俺は男だ!!女の子に向かって手荒なことはしたくない。だけど彼女なら俺の攻撃を何とかしてくれるだろう。

距離はわずかに五メートル彼女は竹刀を下に向けている。いわゆるノーモーションだ。だけど構えがないのが一番怖く感じる。どこの攻撃してもやられるという事態をすでに予想を感じたが、俺はあえて、正面に向かっての突撃をした。


「うわァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

そして、竹刀を上にあげ、彼女に向け下に叩きつけようとした、だが、予想通り攻撃は彼女の一振りで静かに受け流されていた。

でも俺は攻撃は諦めずに連続して行ったが、彼女は顔を一つも動かさずにいや、竹刀を振る右手でしか動いていなかった。


俺は咄嗟に後ろに退いた。本能的に体が退いてしまった。なぜならこのまま続いてらちが明かないそう感じたからだ。

俺にはこの状況を打破するか理解できない。俺は剣道部員じゃないし、彼女は実戦においては恐らく上級者だろう。一朝一夕でうまくなれるなんてただの夢だ。

彼女は、頬を少し動いてほくそ笑んだ。その笑いは、喜びじゃない、俺はゴミくずのように見下しているような笑みだ。


「どうしたでござるか?その程度じゃ来週の作戦はお留守番でござるよ~~まあ焔殿のようなゴミ以下の家畜には無理だったでござるな~~~」


凛音が見え透いた挑発をしている。だけど俺の今の選択は攻撃あるのみ、それしかなかった。

もし俺が攻撃して返り打ちにあってボロボロになろうとも彼女の技術をこの目で見て盗むしかない。

だから俺は彼女に向かって全力で向かい一撃でも与えるため思いっ切り振り上げた。

彼女は恐らくこの隙だらけの一撃を防ぐか斬りつける、くらいの行動をするだろう。

甘いこの俺はその予想を上に行く。進学校平均以上の頭脳を持った俺をなめんなよ。


「ふっ甘いでござるな。焔殿」

俺が斬りかかろうとしたとき、その一言を聞く。甘いのはどっちなんだよ。お前の行動は思い通りなんだよ。

予想通り竹刀で俺の一撃を防御しようとする凛音。だけど俺は斬りかかるのは途中で中断し、凛音のわずかの隙をつき、咄嗟にしゃがみ遮二無二にスライディングをし、凛音の後方についた。

凛音も予想外だろう剣術初心者の俺がこんな奇策を思いつくなんてよ。まさか口を開けてあんぐりとしてるなんてよ。


スライディングをしたおかげで周りに砂ぼこりが立ちこむ。

俺は、凛音の腰を狙い横に一撃を入れる。俺は一瞬勝ったと思った。

だけどそう思ったのは、ほんの一瞬だ現実はそう簡単に甘くない。


ヒュン

凛音は、二メートル程大きなジャンプをして俺の攻撃をひらりと避けた。

例えるなら今の跳び方は、源義経曰く牛若丸が五条大橋で弁慶と戦ったが如く欄干を飛び交うような姿をしていた。牛若丸なんて実際に見たことないが今見ている光景はたぶんそれと似ていると思う。

そして、燕の如く美しく宙に舞いながら俺の竹刀に強烈な一撃をあたえ竹刀は強くはじかれ数メートル程飛ばされ弱く回転しながら地面に突き刺さっていた。


俺は無意識に竹刀を拾うとするが、すでに遅い。気が付くと着地と同時に竹刀の先が俺の喉元に軽く押さえつけられた。軽く押さえつけられたのに激しい重圧と緊迫感が襲った。

そして凛音は、退屈そうに軽くあくびをして、


「はい、おしまいでござる」

凛音は、すぐに竹刀を喉元を押すのをやめ少し距離を放し離れて、元の位置に戻った。それと同時に緊迫感が離れ今度は脱力感が襲った。


「焔殿。初めて竹刀を持っての戦闘でまあ、それなりにやるでござるな」

「そ、そう。咄嗟に思いついた方法なんだけど」

戦闘後に普通に会話する俺達。俺はもうさっきのでもう口が渇いてんのに彼女は全然疲労してない。

この子ホントに少女なのか。もしくはこれも実戦の差なのか・・・・


「さっきのでいろいろと課題はあると思うがとりあえず攻撃面の特訓はしばらく保留にするでござる」

「え?これでおわりなの?」

「そう。攻撃面は対人相手は、はっきりと言って褒めるべき部分はないとして、対妖あやかし相手ではさっきのような意外性がある戦い方は役に立つでござる」

う~~ん褒められてんのか馬鹿にされてんのかどっちなんだ?


「じゃあ次は防御面での特訓はこれからでござる」

休む間もなく凛音は竹刀を構える。

「少しは休んでもいいんじゃ・・・・・」

「甘いでござる!!!!!」

めっちゃ怒られて、俺の要望は一瞬された。


「あれから五分しかたってないでござる。これぐらいで疲れたら誰も護れないでござる。それとも焔殿の根気はこの程度だったでござるか?」

「分かった。・・・・・そうだ俺は決心したんだ。君の力になることを。君に今まで助けられた。だから今度は俺が君を助ける。この恩を返すまで俺は、一歩でもいい、この道を歩み続けるだから続けてくれ」

そう言いながら俺も先程の位置に戻り竹刀を構える。


さっきまで弱気な俺が奮起し彼女を見つめる。それを彼女は認めたか。

静かな眼差しをしながら竹刀を構える。

「じゃあ話を続けるでござる。防御は先程うちが焔殿の攻撃を受け流す。これをやるでござる。要点は、相手の一撃をよく見て、予測をしてからうまく攻撃を当て流す。そして、防御が不可能な一撃を貰うとしたらすかさず避けるのも手でござる。この二つの方法が防御の基礎でござる」

「分かった」

「いまからうちが焔殿に連続して攻撃するから焔殿は防御しつつ隙を見て、うちに一撃を入れるでござる。なぁに、うちはこれから攻撃あるのみ防御なんて一切しないでござる」


ホントかな?もしかしたら嘘かもしれないから一応警戒しよう。

予測して流す。簡単に見てなんか難しそうだ。だけどやるしかない。


「では、始めるでござる」

一言と同時に凛音は急に飛び出し気が付くと俺に近づいた。その距離お互いの竹刀が身体に当たる距離まで達していた。

凛音竹刀を槍の如く突き刺そうとする。俺は避けようとした。


「グハッ!!」

俺は額に一撃を与えられ数メートル吹っ飛ばされる。くそ額がめちゃくちゃ痛い。頭が割れそうな衝撃だ。あいつ本気でやりやがったな。


「大丈夫でござる。今のは最低限に手を抜いているから今すぐ立ち上がるでござる」

「ああ」

今の俺の不様な姿を見てもノーリアクション。この人マジで真剣だ。

俺はダメージを負った額に血が出てないか念の為に確認した後、再び竹刀を持ち構える。くそ今のは避ければよかった。


二回目も相手の攻撃を見切れずに今度は右腕に一撃を与えられる。

そして、三回、四回気が付くと八回目の一撃を受けていた。


気が付くと、体中に数か所の紫色の痣が見られる。だけど凛音はその痣を見ても無視をし構える。

「どうしたでござるか。その程度の痣でへこたれるでござるか」

「いや、そんなことない。続けてくれ」

そして九回目の受けが始まる。体中が痛い。痛すぎて辞めたい。今までの俺なら途中で投げ出すだろうな。

今の俺は他の主人公と違ってチート能力あるかないかの状況。

だけど今の俺はチートがあろうとなかろうが関係ない。

相手の一撃を受け流すことだ。


凛音はこれまで通り強烈な一撃を放とうとしている。今度は、横に一撃を与え胴に当てるつもりだ。

とにかく俺は相手の一撃を相手より早く竹刀を縦に構え防御をした。

気が付くと、凛音の横の一撃は俺の払い技でなんとか受け流した。まぐれかもしれないが俺は、今歓喜に満ちている。


「やった。やっとできたぞ。凛音やっ・・・・・」

「フン」


無言の一撃が俺の頭部に与えられる。

「痛ッ!!!」

今ので恐らく頭蓋骨が割れそうな感覚がした。いや頭蓋骨だけではない。首筋も一瞬むち打ちしそうな感覚になった。

俺は頭を両手で支え地面にうずくまる。

「焔殿、たかが一撃防いだ程度で、喜びすぎでござる。その程度で喜ぶとは小童と同類でござる」

彼女はため息をして、竹刀を肩で背負った状態で呆れた表情で見下している。

くそ、凛音の辛口で今度は心にダメージを受けた。やめて俺、豆腐メンタルなんだぞ。

「だけど・・・・さっきのは、さすがでござる・・・・」

凛音のわずかの褒めで俺は興奮していた。まさかの人生初の女子からのツンデレがもらえるなんて、こんなの嬉しくて涙が出そうだ


「なんでござる!!焔殿突然涙を流して気持ち悪いでござる」

「いや、すまない」

とりあえず俺は、着物の中からハンカチを取り出し顔を拭いた。


「と、とりあえず、一度休憩をとるでござる。その間ゆっくり休むでござる」

「ああ、助かる」

俺は疲弊しながら荷物から水筒を手にし、横になり落ち着く。


「あ、休憩後はこれよりさらに高度な連続技を繰り出すから焔殿覚悟するでござる」

悪魔のような表情でニヤニヤ笑いながら俺を見つめる凛音

「ま、マジすか」


一瞬の安楽が地獄に代わる瞬間だった。

そして、午前の特訓いや、シゴキはまだまだ続くのであった。






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