その6、交錯する思い
「ああ~~我ながらたくさん食べたな」
「確かに焔殿沢山食べすぎでござるよ~~~」
確かに宴が始まる二時間ちょい前におにぎり弁当を食べたのを関わらずあの刺身定食を完食しおかわりするとか我ながらすごいな。やっぱり憑かれたものがとれてスッキリしたのかな?
宴が終わり神社前に凛音と話し合う俺と凛音
あの宴から二時間程が立ち周りはすっかり暗くなっていた。
神社で修行している巫女さんや坊さんも今日のことで楽しめたような雰囲気をして満足して帰宅する人が眼に入る。
「ふふ皆お疲れ様。あと先ほどはごめんなさい。曾祖母様が余計な事を言い出して・・・・」
「雨水さん。」
横から声を掛ける雨水さんその表情は、若干疲れた顔をしていた。
「あのなんかすみません。俺らが来てバタバタしてしまって」
「ふふいいのよ。こう騒がしいのは日常茶飯事なんだから」
「霞さんやっぱりうちも宴の片づけをした方がよかったんじゃ・・・・」
「いいのよ凛音ちゃん今日はあなたたちが主役だからきにしなくてもいいのよ。こういうのは今日の当番の人に任せればいいのよ。とは言っても今日の当番は私も入っているんだけどね」(テヘッ)
凛音の心配を笑顔で断る雨水さん
疲れてても後片付けを責任を持って行う彼女は、は大人の鏡だと思う。
「あの霞さんはどうしてますか?」
俺は、つい霞さんのことが気になった。やっぱりあの後どうなったか気になってしまう。
「曾祖母様の事なら安心して部屋でゆっくりと休んでいるから。後それと焔君に『やりすぎてすまなかった』と言ってたわ。どうやらやりすぎてしまったことを深く反省しているみたいよ。」
「それは、よかった。それにしても意外でしたね。まさか優しそうな雨水さんからあんな表情を見せるなんて」
「!!!」
その一言を聞いて雨水さんが急に真っ赤な顔で照れてしまっている。しまった変な事を言ってしまったのかな?
「あ、あ、あの時は、つい無我夢中で言ってしまってつい。そ、曾祖母様が悪いのよあんな大勢の前であんなことを言うなんて信じられない」
そう彼女が照れながらプリプリと怒っている。その表情が妙に可愛く見えた。
「と、とにかく私は今から宴の片づけがあるからお大事に」
そう言って彼女は、顔を赤くしながら社に戻っていた。
「行ってしまたな」
「なんでござるか焔殿もしかして雨水さんのことが好きになってしまったでござるか?」
「いや、そんなことは・・・・・・」
「顔がデレデレして気持ち悪いでござる」
「気持ちワルイ・・・」
どうやら凛音は、雨水さんにデレデレしまった俺にやきもちを焼いているらしい。でも誤解だよ確かに美しいけど好きかどうか悪い感情だよ。それに気持ち悪いって何だよ。前々から思ったけど彼女毒舌でSなんじゃ・・・・
「もしかして嫉妬してんじゃ」
「別に~~~~」
「やっぱり嫉妬してんじゃ」
「うるさいでござる。それ以上言ったら石段から突き落とすでござる。」
いやいやいや石段の前でそんなことを言ったらマジでシャレにならないよ。っていうかなんだその手マジで落とす気満々じゃねーか。何で両手を構えてんの?マジなの?
「マジですみませんでした」
「フン!!」
一生懸命誤ったおかげで落とす構えを解いた凛音。いやまじでこの高さの石段落ちたらひとたまりもないです。
もしかしたら彼女慌てたら周りが見えないタイプかな?
「修羅場になってるな持てる男はつらいな」
後ろから小声で茶化したのは、雲良だった。いや、やめて茶化すのはいいけど後ろから小声を急に出さないでマジビビるから
「雲良殿これから帰りでござるか?」
「ああそうだ。たぶん妹が腹を空かせて待ってるからな」
と言い今日の夕食の刺身定食の残りを弁当箱に入っているのを見せびらかす雲良いやそれはいいけど・・・
「おいあの宴から二時間以上経ってんぞ弁当箱に刺身傷んで腐るんじゃねえか」
「心配するな。凍結術で弁当箱内の温度を下げているから長時間放置しても大丈夫なはずだ」
よく見ると弁当箱の周りが冷気のようなもので包まれている。
いやそれでも、早く食わねえとダメだろ。てかそんなことで術を使ってもいいの?
「雲良俺の事を怒らないのか?」
「何のことだ?」
「ほら、あの時俺がいたせいで仲間が・・・」
「フンッ」
急に弁当箱を持ってない方の手で頭部をチョップされた。クソ痛ぇ
「馬鹿野郎。あれはお前のせいではねえ。あれは俺たちがあの化け物を甘く見た結果でこうなった。もしそれを剛毅の兄貴に言ってみろ。本気でぶん殴られるだけじゃ済まねえよ」
小さな口調の雲良が声を上げて怒る。
「なんでもかんでも自分のせいにすんじゃねえよ。心配する暇があったら強くなればいいんじゃねえか」
そう言い石段を下り帰ろうとする雲良
「俺だってそうだ。弱いから苦手な師匠のもとで再び修行をし直してるのによ」
「しかも大泣きで土下座をしたでござるからな霞さんも断ることなんてできないでござるな」プププ
「コラッ凛音それ誰から聞いた?」
「雨水さんからでござる」
「あの人は~~~~~~」
黒歴史をばらされ思いっきり落ち込むする雲良それに対しケラケラ笑う凛音。これで確信した彼女は絶対にドSなんだと
「と、とにかく一週間後に兄貴がここに戻って赤覆狒々を再討伐する。お前も参加するか凛音お前の能力は役に立つと剛毅の兄貴が言ったしな」
「え!」
凛音をあの化け物との参加させるつもりかあの男を俺はダメだ。あいつとはもう会いたくないのになんであの小さな少女を誘うんだよ。俺は、ダメだ彼女をあの死地に活かせない。
そう言おうと彼女の手を握り
「そんなこと・・・」
「分かったでござる。その依頼受けたでござる。ただし報酬は」
俺が断ろうとする前に凛音があっさりと受けた」
「何だと?」
「心配するな。報酬の方もあの時より額がかなり上がっているはずだ」
「それはよかったでござる・・・・」
「じゃあなこのことは兄貴に報告する。作戦は後日報告するそうだ。それじゃあな」
そう言って俺達と別れ石段を下り帰る雲良いやそれよりも凛音のことだ。
「なあ凛音。なぜあいつの頼みを受けたんだよ」
「なぜって、それは報酬になるからに決まっているでござる。赤覆狒々は焔殿や剛毅殿達と戦った時より力を増していて懸賞金も上がっている。この仕事をしている上では、当たり前でござろう」
「だけど君が傷つく姿なんて見たことない」
「うちの事あまり知らないくせに偉そうなことをいわないでほしいでござる!!」
俺の反論に逆ギレする彼女。確かに俺は彼女の事はあまり知らないだけど・・・・
「確かに君のことはしらないさ。だけどなんで君は全く知らない俺の世話をするんだよ!!ただでさえ金もないのになんで俺と一緒にいるんだよ!!!」
「そ、それは、」
俺も彼女と一緒に怒りに身を任せるしかない。その方法でしか解決できないのだから。
「それは、・・・・焔殿がとても危なっかしいからでござる。うちがいないとあっさり死んでしまうからでござる」
凛音が泣きながらポカポカと俺を叩き続ける体はあまり痛くないけど心が痛く感じる。俺はそんな彼女の頭をさすりながら
「ごめんよ。凛音俺が、悪かった。俺は正直怖かったんだ。赤覆狒々のせいじゃない。憧れたこの異世界が怖く感じた。アニメや小説での異世界の話は、主人公達が楽しそうにそして普通に怪物を戦って美少女とイチャイチャできると思ったがそれは、違う本物異世界はリライトできない。一回限りの挑戦だ。ご都合主義もなければ主人公補正もないそんな世界だ。まあもしかしたらチート能力はあるかもしれないけど」
「???さっきから意味が分からないでござる。もしかしてそれも焔殿のいた元の世界の言葉でござる」
彼女は泣きながらポカーンとしている。当たり前だよなそりゃこんな意味不明の言葉を聞かれたら。
「凛音今からそこの石段に座ろう。俺が元いた世界やこの世界に来た経緯についてずっと言いたかったんだ」
コクリ
俺の言葉に頷き石段に座る二人
気が付くと彼女の涙は、ひいていた。
「これで顔を拭け」
「いいでござる。自分のがある」
先程雨水さんからもらったハンカチを先ほど泣いていた彼女にわたそうとしたら自分のハンカチで自分の顔をゴシゴシと拭いた。
拭き終わった彼女の顔は崩れても可愛く維持していた。
「じゃあ話そうか俺のすべてを・・・・」
俺は彼女にすべてを話した。
「ふ~~~~~~ん焔殿の世界にはとても奇天烈な世界でござるな」
「奇天烈って」
「だってそうでござるよ。術もないのに遠くの人と通じたり家にいるのに世界について調べるとかしかも時速300キロ以上も走るものがあるとは、どんな魔術世界でござろうか」
「いや科学の世界だ」
創造以上に口を開けていた。でも子供みたいにはしゃいでいる彼女はなぜかほっとけない。彼女が俺のことをほっとけないそう言う法則みたいなものだ。
「でも、焔殿の世界怖いけど行ってみたいでござるよ」
「え、本当に」
「本当でござるよ。だって自分の世界と全く違う世界そう言うのは、興味があるでござる」
「たぶんつまらないよ」
「そんなことはないでござる。最初は帰りたいと思っても後から楽しみが増えてそれにいろいろな人と出会うから楽しいでござる。それが生きてる証拠なのだから」
凛音がこれ以上もない満面の笑みを俺に見せてくれた。
俺は初めて彼女の語尾からござるがなくなったのを耳にした。いやそれよりも彼女の満面の笑みを見て俺はどうすればいい。
「凛音・・・頼みがある俺を強くしてくれ」
「強く?」
「ああそうだ。強くなりたい。できれば一週間ほどで、君の隣で赤覆狒々と戦いたい。君の役に立ちたい」
「一週間て、それは無茶苦茶でござる」
一週間で強くしてくれと言う無茶な言葉に戸惑う凛音
「頼む!!師匠」
俺は堅い石段に強くぶつけ土下座をする。痛くても無茶でも分かっている彼女の役に立つそれが俺の目的だ。
「師匠て・・・・・そんな」
「やらせておけ凛音」
俺らの後ろに立つ先ほど雨水さんに眠らせた霞さんの姿があった。彼女の姿は、力が戻ったらしくいつもの感じに見える。
「霞さん。いやそれよりもお体の方は大丈夫ですか?」
「私の事はいい。それよりもあの小僧の用事を受けろ。これは命令だ」
「命令て何を・・・・」
「お主には見えんのか。あの小僧の気迫満ちたツラを」
俺の気迫に満ちた顔を凛音に見せる俺。ていうか俺あのおばあさんにどんだけ気に入ってんだ。
たぶんどんな無茶ぶりでもいうつもりだぞあの人。
「ん~~~~~~~分かったでござる。焔殿を鍛えればいいんんでござろうな」
凛音は渋々受け入れた。
「でも鍛冶屋の相良さんに付いては・・・・・」
「心配するな。相良にはすでに文を送った」
「はは、早いでござるな」
冷や汗をかく凛音。いやそれより相良って誰だ。」
「霞さんさっきから何の話をしているんだ?」
「焔今から鍛冶屋に迎えそこでお前専用の武器を作ってもらえ。早くしないとあのじじい寝てしまうぞ」
「でも明日の方が・・・」
「走れ~~~~~~~~!!!」
『はい!!』
霞さんの怒号で俺と凛音が走り出し石段を下りようとする。
そして石段を下り彼女に伝える。
「・・・凛音これからよろしくな」
俺は、右手を強く握り彼女に握りこぶしを見せる。
「こちらこそでござる」
彼女も左手を強く握り俺の握りこぶしをコツンと叩いた。
「本当によろしいのですか?曾祖母様?」
「ああこれでいい。さあ、新しい景色が見えるぞ・・・・」