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その10、鬼岩沼の探索

早速俺と凛音は、お初ちゃんの依頼を受け鬼岩沼きがんこに向かった。

この依頼を達成したら俺がこれから使う武神は、凛音の手に渡ってしまう。

それをひとまず忘れてここに来ている。自分で言ったことなんだが後で後悔している。見ず知らずの女の子の為に自分の武器を売り飛ばすなんて。

今後悔しても仕方がない。この仕事が終わった後でこれからの事を考えるしかない。俺はそう思った。

俺達は今鬼岩沼の前に来ている。目の前の看板が目印で、ここから一歩進むと覚悟は相当必要だと思う。

一歩でも入るとあやかしの領域何時襲われるか分からない。俺はこれから死地に向かうはずなのにやはり後悔の念がある。


「焔殿」

「ん?」

「ん?これから戦が始まるのにずいぶんのんきでござるな」

「そうか?」

俺が他事を考えている時に彼女は呆れた表情で声を掛ける。


「大方宿屋で言ったことを後悔してるでござるな?」

「バレた?」

彼女は静かに首を振る。何でもお見通しってやつか。

「言っとくが、約束は絶対に護るでござるよ。さもないと・・・・・」

彼女は再び殺気を放とうとする。俺ってそんなに信用できないのかな?

「分かった分かった。俺も男だ約束は護る。だから何度も睨み続けんな」

彼女はふぅとため息を吐きながら殺気をやめる。


「なあ俺って信用できないか?」

「いや、そうでもないでござるよ。ただ、仕事柄、報酬を払わずにそのまま雲隠れする人間も言うからつい警戒してしまうでござるよ」

「前もそんなことあったのか」

彼女は首を下に頷いた。

「そうか・・・・でも俺は嘘をつかないよ。少なくともお前のような信用できる人間がいる前ではな」

俺はそう言いながら彼女の頭をなでる。俺は心から凛音や雨水さんなどの霞ヶ淵村の人達を信用する。

この人達に助けられたから恩を返すためにいけないのだから・・・・・


「そんな・・・ことを言っても何も出ないでござる」

彼女は赤面しながらなでている俺の手を払う。その照れている顔を見るとこっちも無性に照れてしまう。


「と、とにかく焔殿その竹刀を少し貸して欲しいでござる」

「なんで?」

「いいから」

なかば強引に、俺が持ってる竹刀を貸してくれと言われたので、望み通りしぶしぶ貸した。

なんだ?その竹刀で俺をしばくのは止めてくれよ。


スッ

凛音はその竹刀を握り強く念じているようだ。

「はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

彼女が叫ぶと同時に木刀の周りから青白い光のような物のよって包まれた。

その色は美しく神秘的な色彩を持っているようだった。

「ふう、終わったでござる」

凛音は気を落ち着いてのと同時に青白い光は消えていた。そして、その竹刀を俺に返してくれた。

その竹刀を握ると今までと違う感覚をした。握っているだけで自然と気迫が増しており、竹刀がより軽く振りやすくなった。

さらに、その木竹刀を振ると空気を斬った感覚のようなものが俺に走った。

これは爽快だ、何も斬ってないのに何かを斬っている感覚がある。すごい


「凛音、今何をしたんだ?」

「今術でその竹刀を付け焼き刃だけど強化をしたでござる。振っただけで分かるでござろう。今までと違う感覚だって」

「ああ。今までと違うようだ」

「しかもこれでも並の真剣よりも切れ味があるでござるからな」

確かにこれさえあれば怖いもの知らずだ。

「ああすごいよ凛音。これならたとえ強い妖でも何とかなりそうだ。ありがとう」

「いや、それほどでも・・・・いやそれでもこれから進む所はこれでも勝てない妖がいるからくれぐれも油断せずにしてほしいでござる」

「分かった」

俺は返事をすると竹刀を竹刀袋に入れそれを背負った。準備は万端だ。


「じゃあ行くか」

「応でござる」

俺達は鬼岩沼の敷地に入った。



俺達は鬼岩沼の敷地に入りしばらく歩いた。周りはすっかり濃い霧に包まれて今どこにいるか分からない。

視界が悪くなりいつ妖に襲われる恐怖もあったが決してそれだけではない。

周りに何か怪しげな雰囲気がヒシヒシと俺達が襲うような感じがした。これは一体何なんだ?」


「焔殿大丈夫でござるか?」

「ああ何とかな?なんか異様な物が体に入っている感覚がする。これが妖気って奴か」

以前赤覆狒々に出会ったことを思い出す。あの時もそれに当てられた影響で身体が重くなる感覚になったんだ。

それに対し凛音は俺の背中を優しくさすってくれた。そうすると凛音の手の平から何かが送り込まれる感じになったそれによって少しはマシになったようだ。

「凛音今のは?」

「今焔殿に気を送り血行をよくしたでござる。いやしかし今日は妖気がいつよりも増して濃いでござるな。こんな事だったら焔殿に術を習得させれば良かったでござるな。」

凛音は後悔して髪を手でわしゃわしゃとかきながら落ち込んでいる。いかんなんか声を掛けないと・・・・・

「り、凛音?」

そして彼女は突然吹っ切れて、

「後悔しても後の祭りでござるよ。サクッとそのかんざしとやらを探すでござる。いくよ焔殿!!」


凛音が自分に喝を入れると周りの草むらからガサガサと音がした。何かが来そうな感じがする。

「来るでござるよ。しっかりと構えるでござる。」

「おう」

俺達は同時に互いに鞘から刀を抜き構え草むらに意識を集中する。

俺の今見ている点はその草むらのみだ。初めての妖との戦闘・・・・・正直怖い今すぐにでも帰りたい。

でも横には凛音がいる彼女を放って逃げるところなんて見せられない。何としてもカッコいい所を見せないと・・・・・・

そして中から二、三体の約1メートル程に及ぶ小さな鬼が俺達に襲い掛かろうとした。

色合いはシンプルに赤、青、黄とうまいほどに分けられている。


「子鬼でござる。奴は体格は小さいが嚙まれたらひとたまりもないから気をつけるでござる。」

「分かった」

子鬼は洋風ではゴブリンのようなポジションだ。初戦にはもってこいの相手だ。

俺は全力で行くこの凛音に強化してもらった竹刀でな。

そう想いつつ凛音より前に進みその子鬼に向かって猪突猛進する俺。

「ちょっ焔殿」

凛音の忠告は聞いてない。俺の初戦はついくさ初々しく飾ってやる。


「うりゃ」

俺はすかさず赤い子鬼に横に一閃する。するとそいつは真っ二つになり大量の血がシャワーの如く俺にかかってしまった。そして俺はその状況に目をくれず、すかさずに他の子鬼たちを一撃で仕留めた。

俺は血まみれになるものの戦いが終わると解放感に浸った。


「やったよりん・・・・グハッ」

俺は凛音に俺の雄姿を見てどんな反応するかと彼女を見る直後に彼女のチョップが俺の頭部を襲った。

またしても頭が割れそうな感覚だ。

「あほでござるか?お主は周りに警戒もなく猪が如く正面に突っ込むとか呆れて物が言えないでござる」

「すみません・・・でもしっかりと敵を倒しただろ?」

「あの程度の敵並の討伐者でも楽に倒せるでござる」

確かにあれはなんか弱そうな感じがしたな・・・・・


「いいでござるか。誇れるのはあれにを倒してから言ってほしいでござる」

凛音が向けた指の先にはどでかい鎌を持ったカマキリの姿であった。大きさは二メートル程で色は普通の鎌キリと同じ黄緑だが、大きさもあって正直キモイ。

しかもそのカマキリの鎌は歪な形をしてより命さえも刈り取れそうな感じがした。

「あれは死相鎌キリ(しそうカマキリ)このような巨大な鎌が特徴でそれにやられると絶命を覚悟した方がいいでござるな。」

凛音はゆらりと長太刀を構える。そして顔はハンティングをする狩人の顔をした。

そしてその死相鎌キリもその殺気を感じこっちに向かっている。


「ここからあまり離れないでいいでござるよ焔殿・・・・・一瞬で終わらすでござる」

彼女は鞘から刀を抜き取る。そして死相鎌キリも俺達の首を狙うかのように飛び出す。


瞬間勝負がついた。

気が付くと死相鎌キリの首は斬り落とされ地面に転がり落ちる。やや遅れて胴体も崩れ落ちる。

血のシャワーは俺達に降り注ぐ。血色に染まり修羅の顔をしながらも刀を静かに納める姿は今まで見た光景より美しかった。俺はその光景をしっかりと脳内に残すことにした。


「なんでござるか?焔殿」

じっくりと彼女を見る俺にやや引いている。

「いやぁ、服が汚れて洗濯が大変だな~~~と思って」

「ふう・・・・・・妖の血はそのうち自然消えるから心配する必要はないでござる」

俺は咄嗟に誤魔化しそれに対して彼女は呆れた口調で返答した。

俺は絶句した彼女の絶対的な強さにそしてその美しさに、俺は本当にたった一週間で彼女と同じ強さに・・・・・

くそ、こんなの見せられた絶望しそうじゃないか・・・・・



「ん?何してんだお前?」

「見れば分かるでござろう死んだ妖の素材を集めているでござる。こうやって細かくして分けて、商人に高く売ってもらうのも万屋の仕事でござる」

俺が絶望している間に彼女は、死んだ妖の手足を斬りバラバラに剥ぎ取ってそれを袋に詰めているようだ。

なんか某ハンティングゲームを完全再現してるみたいだな。


しかし化け物とはいえ死んでる者をばらすとか生で見ると吐きそうだ。


「ウエッ!!吐きそう!!」

「焔殿この世界で一体どれだけ吐くつもりでござるか。いくらなんでも胃が貧弱すぎるでござる」

俺が気持ちがってるのをお構いなしに死相鎌キリの首をわしずかみにしてこっちに見せる彼女。

「おい人を勝手に俺の事をゲロキャラ扱いすんじゃねえ。この世界に来てお前らがおかしなことをやりすぎて胆が弱くなってんだろーが。大体お前が妖の死体を平然と剝ぎ取るとか可笑しいんじゃねえの。普通女子ならこんなんためらうだろ。なにナチュラルに死体解剖してんだよ。犯罪者か」

俺の弁舌にポカーンと口を開く彼女。当たり前だよなぁ。

この異世界で使われない言葉を連呼してるもんな。


「珍妙な言葉を喋っても何となく分かるでござる。要するにこういうのは女の子がやるもんじゃない。そいいたいんでござるか?」

「そうだ」

俺はハッキリいった。

「え~~~~~それ本気で言ってるでござるか?妖の死体剥ぎ取りとか。何か宝探しをするつもりで楽しいでござろう。焔殿も実際やったら興味枠でござる」

水を得た魚みたいにうきうきして両手に妖の亡骸を俺にグイグイと押し付ける。

ダメだこいつ早く何とかしないと。


「そんなグロイモン押し付けんな。それにすごく臭いぞこれ」

その亡骸のほとばしる異臭に鼻をつまむ俺。

つーか凛音妖の剥ぎ取り楽しみすぎだろ。ドS過ぎるしなんか人も普通に殺しそう。

俺はそれを聞くためにそれを振り払い


「なあお前人殺したことあるのか」

「人は今まででは殺したことないでござる。ずっと妖退治専門だったんで。そういうものは、軍や暗殺稼業の仕事でうちのやってる討伐屋こと万屋はそんなことを受けてないでござる」

万屋がどういう仕事かは分かったが彼女が人を殺してないとか嘘だ。なんか作り笑いみたいだし、目が笑ってない。

「ムッ!!ホントでござるよ

「こんな少女が人を殺すのに見えるでござるか?」

「見えるドSだし」

「そんなヒドイでござる~~~~~」

それを言ったら全国のドSな人に公開処刑されるが、凛音の目の濁りから急にうるうるした瞳でジッと見つめているから恐らく本当だろう。


「分かった信じる。お前はいい奴だ。それでいいだろ」

「やっと信じてくれたでござるか~~~」

そう言うと彼女はニッコリ笑う。たく、調子のいい奴め。


「とにかくサッサと素材を剝ぎ取ってから目的のかんざしを探そう。またあんなのに目をつけられたら厄介だぞ」

凛音はコクリと頷き迅速に素材を剥ぎ取りそれを袋に詰め終えた。その速さ実に30秒

準備を終えた彼女を見て俺達はさらに奥に向かった。




「ここがお初ちゃんがかんざしを落とした場所か」

俺達が着いた場所はお初ちゃんが怖くなって逃げ出した場所である鬼岩沼の沼の前に立っている。恐らく目的のかんざしはこの近くにあるはずだ。

「それにしてもすごく気味の悪い沼だな。入ったらあの世に繋がってそうだな」

俺はその沼に向かってそう言った。そりゃ言いたくなる。ただでさえ不気味で霧が立っている場所でしかもこんな漆黒の沼を見せられたらな。

その沼はドス黒く周りに変な空気が入れ混じっていた。


「その通りでござるよ。いわばここは冥界の入り口と言われる場所ここには凶暴な妖がいる噂でござる」

「凶暴な?」

「そう、しかも噂によるとあの赤覆狒々よりも強力で無間地獄級・・・・つまり妖の強さの最大級の強さを持っていると噂されているでござる」

「最大級?こんなの俺が勝てる訳ないだろ」

「安心するでござる。これはあくまで噂実際にあったなんて報告なんて聞いたことないし、どこぞの阿呆のホラでござる・・・・」

そう言いながら彼女はブルブル震えている。突っ込んでやりたいがもしそれで最大級の妖が目覚めたらシャレにならないから黙っておこう。


「しかしどうやって探すんだ?こんな視界じゃ探すのに随分と時間がかかるぞ。」

幸い周りに妖の姿は無いが時間がかかりすぎると妖が出てくる可能性があるだろう。


「心配ないでござる。落としたとされる場所が分かったなら・・・・・」

凛音は目をつむり鼻をスンスンと吸い始めた。どうやら臭いで探すつもりだ。

そんなことができるのかと俺が突っ込もうとする直前に彼女は眼を開いた。


「こっちでござる。」

凛音は沼の右方に指を示しそこに向けて走る。俺も彼女を見失わないように周りに注意しつつ追いかける。

彼女は草むらを払い除け全力で走る。俺はそれに追いかけるのがやっとだ。おかしいな俺一応走力は学年じゃ平均レベルだぞ。彼女の剣術にしろ握力にしろもしかして彼女がチートじゃないのか?

しかも彼女の武神はまだ隠されてるから分からないが恐らく能力持ちだろ。

俺この世界に来た意味あるのか?主人公変えた方がよくね?

そう想いつつ黙々と彼女の後姿を追う俺だった。


走る中ようやく彼女は止まった。俺はぜぇぜぇと息が切れて倒れそうになる。全力疾走なんてやるもんじゃないな。

「はぁっ、はぁっ凛音どうした」

「焔殿見つけたでござる。」

彼女が握ったものは紫色のやや古そうな玉かんざしであった。しかも彼女は自慢げに見せるからなんか悔しく見える。


「やったな。凛音それにしてもよく臭いだけで分かったな」

「ふふんこう見えても地元は北の山育ちでこのような細かい臭いを分けるのは村の方針で小さい頃から身に付けたでござる」

彼女はあれだけ走ったのに息を切らしてない。

「でもそのかんざしは初見だろ。なんで分かったんだよ?」

「お初殿臭いでござるよ。お初殿はそれを肌身離さずに持っていたおかげでそれを感知することができたでござる」

「ははっさすがだ」

俺は急にがっかりして落ち込む気持ちになった。



「焔殿何を落ち込んでいるでござるか?」

「だって俺来た意味あるのかな~~~~ってそう思っただけ」

いい年こいて体育座りで落ち込む俺

「来た意味あるでござるよ」

「なんで?」

「ほら焔殿妖倒したでござろう」

「あれ、クソ弱いといったじゃん」

「確かにあれは弱かったと思う。でも焔殿は経験を得たでござろう」

「経験?」

「そう、うちと依頼を受けることで今までにない経験を得たで良かったでござる。その経験を活かしてまた次を活かせればいいでござるよ。今度はお主の武神を使って・・・・」

「あれこの仕事が終わったらお前のものになるんだろ?」

それを言われるとああ、そうかと思い出し彼女も頭を抱えて落ち込もうとする。

なんだよ自分の言ったこと忘れたのかよ。


「あ、あれは・・・・・・」

凛音はフォローしようと何か言いかけるその時、周りがざわついた。

体中に鳥肌が立ってっくる。なんか嫌な感じがする。

「凛音、これは?」

「ああ、これは来るでござるな・・・・・・・・・・・・大物が」

凛音もその異様な空気を感じたようだ。周りが時間が止まったように静かになる。

そして・・・・・・・俺達はこれから来るであろう敵に上空を見た。

俺達はその存在に唾を飲み込む。そしてこう思った。

依頼はまだ終わってないと・・・・・・・・・








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