序章、奪われた日常
7月の下旬この果てのない暑さが続くなか
この俺笹川焔は、金に困っていた。
それは、大好きな異世界が舞台のラノベを買いすぎたからだ。
バイトをしたいが、生憎うちの高校は、バイト禁止であった。
そんな折、親戚の叔父さんの和人さんが古家の庭の掃除を頼まれた。
その古家は昔大層な武家屋敷だったが、今じゃ誰も寄り付かない幽霊屋敷とされている。
叔父さんはその屋敷の地主だったが、その屋敷はとても不気味で自分趣味が、合わないからだ。
「その屋敷売ればいいんじゃね」
と、叔父さんに聞くと、
「あれは、死んだ親父が売るなと、遺言で書かれていた」
と、一蹴された。
早速庭の掃除をやると、とてもしんどくなってきた。
しんどいだけはいいが、この真夏日だぞ、沢山水分持っても死ぬよ俺
今すぐ仕事放り出して冷たいウーロン茶飲みながら「暴れん坊黄門様」の再放送見ちゃうよ。
おい、おい、ここで諦めるのか笹川焔ここで諦めたら、新作ラノベが買えなくなる。しっかり働いたら、バイト代がたくさん貰えるのだと何度も体に言い聞かせて働いた。
気付いたら辺り一面が夕闇で包まれていた。
今日は程よくやったから明日もこの調子でやるかと道具を片付けようとした瞬間俺は獣の声と似つかない叫び声を聞いた。
逃げようとした瞬間体が金縛りにあったかように動かなくなった。
それどころかあの叫び声がある場所まで歩こうとしていた。
しばらく歩くと、古井戸が見えてきた。
どうやらその井戸から声を出していたようだ。
おい待て、このままだと井戸から貞子的な者が出てきて俺を殺すつもりだと俺は覚悟した。
俺は、古井戸の前で立ち止まった。
やはり逃げようとしても動かない。
俺は、今まで産まれてきた出来事を走馬灯のように思い出して、目を閉じた。
次の瞬間その古井戸から落ちてしまった。
自分は、ここで決心した。
笹川焔の一生が終わったのだと。
次の瞬間俺は、目を覚ました。
そして、まわりをみわたすと、あの武家屋敷の敷地じゃないと一瞬で気がついた。
「ここは、どこだ?」