携帯のお付き合い
携帯を持って、早10年。
大学1年の時に、サークルの仲間や先輩から、スケジュール日程の連絡が家の電話にかかってきていた。
男性からだと、両親が耳ダンボにして、気にしているのを薄々感じていた。
携帯は便利だ。
忙しくても、メールで用件を入れておけば、相手の都合のいい時に読んでくれて、適当に返事が返ってくる。
今までは相手の家族に取り次いでもらったが、今は直接本人が電話口に出る。
電車の中や喫茶店、街中でも、ネットができるようになり、いつでも情報を見ることができる。
とても便利だ。
このような技術の発展を享受しているが、逆に疑問なところもある。
例えば、待ち合わせ。
携帯電話がなかった時代、人と待ち合わせをする際は、遅刻しないように少し早めに家を出た。何らかの理由で遅れた場合、駅から待ち合わせ場所まで必死に走った。相手に遅刻して悪かったと心から思った。
なぜなら、今のようにメールや電話で「遅れるから、近くの本屋で待ってて」や「先に行ってて」と、遅刻することや次の行動を相手に伝えることができなかったからだ。相手はひたすら待ち合わせ場所で待つしかなかった。待たせている、申し訳ない思いが、今より強かった気がする。
友人から、「メールの返信が1時間なかった。私のこと嫌いになったの?」こんなメールをもらったこともある。
その時、私は久しぶりの休日で、休みを堪能し、お昼寝をしていた。友人が嫌いになったわけではないが、人には都合というものがある。毎回、すぐに返信ができるわけではない。
携帯の情報に頼り過ぎたため、相手への思いが薄くなっている気がする。
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ニュースで「デートDV」の特集をしていた。
デートDV。恋人間の暴力のことをいうようだ。
例えば、浮気を疑われて腹や顔を殴られたり、街中で他の異性の友人に手を振ったら、嫉妬で近くのゴミ箱を蹴ったり。
直接の暴力でなくても、相手に過度の拘束や精神的苦痛を与える行為も、「デートDV」になるらしい。
ニュースによると、内閣府の10代から20代に行った調査では、22%が被害にあったことがあるという。
専門家の分析によると。原因のひとつとして、携帯電話があるようだ。
携帯電話は、今やほとんどの人が、その名のとおり携帯している。
友人、恋人、家族。いつでも連絡を取ろうと思えば取れるし、履歴を見れば、その人の交友関係を知ることが可能だ。
今や携帯は、最大の個人情報だ。
嫉妬や束縛から、相手の行動を携帯電話を通じて監視できてしまう。携帯がない時代は、会いに行ったり、家の固定電話で話している時間だったり、そういうポイントでしか、相手を知ることができなかったし、それで十分だったはずだ。今や、GPS機能で、位置情報まで知ることができる。
相手のことを何でも知ることができるがゆえに、全部知らないと不安になる人もいるようだ。
デートDVは、そういうことだけが全ての原因ではないが、相手のことを束縛、監視できてしまう中で、歪んだ付き合い方という、ひとつの産物かもしれない。
携帯電話は、私たちの人との付き合い方まで、大きく変えた。