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第22話 ルドラの巨人(2)

              ◇◇◇◇


 迷宮実習21日目午前零時24時16分 王立高等騎士学校グラウンド中央

フェイ達は遂に先ほど最後のコーマックがLV20に到達し、アフロ先生から第二の試練を受ける事を許可された。

 ちなみに、先生の舌を噛みそうな名前は呼ぶのに一苦労だし第一覚えられない。自然に皆『アフロ先生』と呼ぶようになっていた。無論、サングラス兎は『ノンノンノン! アフロではありまセ~ン』と言っていたが構わずアフロ先生と呼び続けると途中から肩を落として諦めた。

 アフロ先生曰く敵は英雄譚に出て来る伝説の魔物らしい。少し前なら子猫の様に縮こまり身を振るわせていたのだろうが伝説云々はもう慣れた。どの道、先生達は出来ない事は決してフェイ達にさせない。なら相手が何者だろうとさほど変わりはしない。

それにこの戦いで魔物の弱点を見つられたら全員に30点がもらえる。今フェイ達は37点。これにより全員にプレゼントやらが与えられるのだ。そちらの方がフェイ達にとっては重要事項。

とは言え物事にはやはり限度があると思う。迷宮から出て来た魔物は授業で嫌というほど習ったルドラの巨人だったのだ。横のコーマックに視線をむけると顔がげんなりしていた。当然だ。ルドラの巨人が中ボスならラスボスも自然と思い描けてしまうから。

もっとも、バリーとベラはプレゼントの事で頭が占拠されルドラの巨人の存在など眼中にすらないうようだ。こうも単純だと少し羨ましい。

 こうして戦端は開かれる。

 

 

 最初は様子を見る事にした。フェイ達はタダ倒せばよいと言う訳ではない。弱点をみつけなければならないのだ。しかも、第二試練の際の特別ルールで2度全滅すればアフロ先生から弱点が教えられてしまう。何度も全滅は出来ない。

まずは伝説の確認。バリーがグラウンドの地面を縦横無尽に疾走し、その度にルドラの巨人の漆黒の斧が爆風を伴い舞い踊る。伝説通り巨体とは思えない速さだが、これならLV20の空飛ぶ蛇の方がよほど速い。案の定バリーにはかすりもしない。

同時に隣のコーマックが魔法の演唱を開始する。

小型の魔法演唱短縮装置――(ファルコン)はあくまで魔法の演唱を短縮するだけだ。しかも、魔法が強力になるほどその効果は薄くなる。第5階梯魔法以上になると数分の演唱が必要だ。だが一度演唱をしてしまえば後は意識的にキャンセルしない限りいつでも発動できる。この技術もアフロ先生に教わったことだ。

もっとも、クラスGに到達しフェイには【演唱破棄】という特殊能力が発現していたのでこの演唱はフェイには必要ない。

巨人はバリーを捉えることに夢中だ。ベラがその隙に右手に持つ木槌で巨人の脛を混信の力で殴りつける。筋力が倍化されているのだ。一段階上の実力でも多少は痛い。


『オオオオオォォォ!』


激痛と屈辱でベラを睥睨する巨人。知能が低いのか、ベラに気を取られ過ぎだ。このような絶好な機会を陰険、もとい計算高いコーマックが見逃すはずもない。


「足元がお留守ですよ」


コーマックが杖を地面にトンをつき、魔法名を唱える。


「《(ツリー)(キング)束縛(リストレイント)》!」 


 魔法陣が巨人の足元のグラウンドの地面に浮かび上がる。その魔法陣が写し出されたグラウンドの地面が突如割れ、その割れ目から幾多もの緑色の蔓が伸る。


『ギオ?』


巨人は凄まじい反射神経で即座に後方にバックステップをするが神速で迫る蔓に身体を空中で雁字搦めにされ地面にズシンと衝突する。巨人は蔓を外そうともがくがびくともしない。

当然だ。この《(ツリー)(キング)束縛(リストレイント)》は本来、次の段階のLV後半台になって初めて取得可能な第6階梯魔法。アフロ先生曰くルドラの巨人は次の段階のLV1。束縛は絶対に外れはしない。

アフロ先生は本来後衛専門の兎の精霊らしくコーマックとフェイに様々な魔法を伝授してくれた。とは言えいくらアフロ先生でも次の段階の魔法をフェイ達に取得させることは本来出来ない。だがコーマックは元々この束縛系の魔法に異様な執着があった。所謂その道の天才という奴だ。コーマックがより上位の束縛の魔法を教えてくれとしつこいのでアフロ先生が試しに教えたらできてしまったのだ。アフロ先生も顔を引き攣らせていたから珍しい事なのだと思う。

そして、その事情はフェイも同じ。


「皆ぁ! 退いて!」


「まっ、まさか! 馬鹿、止めろ! フェイ!」


「フェイ、落ち着いて!」


 遠くでバリーとベラがフェイに向かって必死な形相で何か言っているが極限まで集中しているフェイには何も聞こえない。

この頃【魔法使いの帽子】の扱いに慣れてきたおかげで3回に1回は魔力の倍化に成功している。杖を地面に叩き付け魔法を演唱する。


「《暗黒(ブラック)煉炎(ゲヘナ)》ぁぁぁぁぁ!!」


ルドラの巨人が横たわる地面とその上空に漆黒の巨大な魔法陣が浮かび上がる。魔法陣は巨人をサンドする形で高速回転していく。

暗黒(ブラック)煉炎(ゲヘナ)》は第7階梯魔法であり本来今のフェイの二つ上のクラスになって初めて習得し得る魔法。一瞬だけ数千度にも及ぶ超高熱を発生させるフェイの最強の術。

【魔法使いの帽子】によりフェイの倍化した魔力をたっぷり吸って発動した《暗黒(ブラック)煉炎(ゲヘナ)》は魔法陣から漆黒の闇をジワリと湧き出させルドラの巨人の銀色の鎧や兜の中に蛇のように纏わりに着く。そして、漆黒の闇に覆われたルドラの巨人はジュッという音を最後に魔石さえも残さず炎滅し、鎧と兜だけが地面にガシャーンと衝突する。

数メルもあった鎧と兜は急速に収縮し人型の大きさになる。ドロップアイテムだ。


「やったぁ!」


 フェイが満面の笑みで杖を天に掲げるが皆は無表情で硬直していた。


「ノオオオオオォォォォォ!!」


バリーが両手で頬を抑えて絶叫する。ビクリとして皆の様子を窺うフェイ。


「アフロ先生! 今のなし! もう一回!」


「そうです。先生、フェイは天然で空気読めないだけなんです。ワンモアチャンス!」


 途轍もなく失礼な事を言われているような気がする。


「ノンノンノン! 駄目~デ~ス。ボ~イ達は試練をクリアして次の段階に進んでしまいまシ~タ。弱点を見つけられなかった以上、点数を上げるわけにはいきまセ~ン!」


 チッチッチッと人差し指を口元で左右に動かすアフロ先生。


「ご、御免なさい!」


 フェイは戦闘になると敵を殲滅する事以外何も考えられなくなる。やっと状況を理解したフェイは冷たい汗を流しながら皆に頭を下げるが、ベラにその頭を優しく撫でられる。


「は~、まあいいわ。まだ、この手の魔物沢山いるらしいし」


「ですね。それにドロップアイテムも手に入りましたしね」


「ああ、フェイの天然を想定してなかった俺達が一番悪い」


(だからそれ失礼だと思う……)


「それでこのドロップアイテム誰が装備するんです? 伝説では魔法を無効化するらしいですし、フェイの魔法でも傷一つないところ見ると信憑性はあるのでは?」


「じゃあ、俺がもらう!」


「私も欲しい!」


 結局、再びバリーとベラのジャンケンによる闘いが繰り広げられることになった。5班Bチームは今も通常運行だ。



 お読みいただきありがとうございます。

 評価者数100を頂きました。本当にありがとうございます。2部も佳境です。最後までお楽しみいただければこれほど嬉しいことはありません。

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