第11話 暗躍
迷宮実習20日目真夜中 迷宮51階層
「ありゃりゃぁ~、悉く門番倒されてるねぇ。やっぱりアジ・ダハーカちゃんの封印解かれたみたいだぁ。最恐の悪竜の復活かぁ。きっと世界は楽しくなるよぉ。でもさぁ、僕せっかちだから、待てないんだよねぇ」
絢爛な装飾がなされた黒のズボンに黒の上着を着用した金髪の美少年は右手の掌を天に掲げる。すると掌には三つの真っ赤な宝玉が出現していた。少年は宝玉を宙へ放り投げる。三つの宝玉は宙に浮くと大気の魔力を吸い変質していく。一つは百の腕と五十の頭を持つ巨人に、もう一つは煌びやかな装飾がなされた闇色のローブを着た骸骨に、最後の一つは頭から幾多もの蛇を生やした美しい女性に徐々に変わっていく。
三体の宝玉だった存在は金髪の美少年に片膝をついて臣下の礼をとる。
「君達は魔王。魔を司る王にして万物に死と破壊をもたらす悪の権化。その魔の王に相応しい名を与えよう。獣の君は巨魔王ヘカトンケイル、骸骨の君は不死魔王スカルロード、蛇女の君は蛇魔王メドゥサ。どうだい、いい名前だろう?」
三体の魔王達は答えずただ平伏するのみ。自らを生みし偉大な存在に対して言葉を発する事すら畏れ多いから。金髪の少年は満足そうに頷き恍惚表情で迷宮の冷たい石の天井を見上げる。
「魔王如きでは女神も天神も動かない。君達で解決するしかない。でもね、魔王如きでもされど魔王。君達全てを殺戮し尽す程度の力はあるよぉ! さぁ、これは僕からの試練。人間達、僕に見せておくれ! 君達人間種の力を! 君達人間種の無限ともいえる可能性を!」
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