第1話 再会
聖歴2020年 5月18日(月)
「兄様! 兄様! 起きてください!」
何度も身体を揺らされ、仕方なく重い瞼を開けると覗き込む艶やかな黒髪を腰まで伸ばした可愛らしい少女の顔がレンの目に飛び込んで来た。
大切なものを忘れたかのような半身を失ったかのごとき喪失感がレンを襲う。寝ぼけているらしい。頭を数回振る。
「エーフィ。おはよ」
「おはようじゃありません。もう7時30分です。あと30分で遅刻ですよ」
「7時……30分?」
レンの妹――エーフィ・ヴァルトエックの言葉でまだ僅かに夢の世界にいた意識が一気に覚醒する。枕元にある目覚まし時計を引っ掴み注視する。7時30分だ。何度見ても7時30分――。
「ね、ね、寝過ごしたぁぁぁ!」
弾かれた様にレンはベッドから飛び起き、パジャマをベッドの上に脱ぎ捨てクローゼットへ直行する。
「っ!?」
エーフィは顔を両手で覆って言葉にならない悲鳴を上げる。レンはそれをガン無視し『王立中等騎士学校』の制服に着替える。悪いが今はそんな場合ではない。
「着替えるなら私が部屋を出て行ってからにしてください!」
エーフィは顔を紅潮させて俯いている。兄妹同士で今さら何を恥ずかしがっているのだろう。幼年学校時代には一緒にお風呂にも入った中だろうに。まあ、八年ほど前の事ではあるわけだけど。
兎も角、今日は『王立中等騎士学校』、迷宮実習前半の試験日。レンの夢のためにも遅刻などもっての外なのだ。
ドタドタと階段を駆け降りキッチンで食パンを一枚拝借し口へ放り込む。
「レン! お行儀が悪いわよ」
キッチンで朝食をとっていた母――アニータ・ヴァルトエックが眉をひそめる。
「ごめん。母さん。今日僕急いでるんだ」
母さんは軽い溜息を吐く。
「車に気を付けるのよ!」
「は~い。行ってきま~す」
玄関で靴を履き外に出ると申し合わせたようにエーフィが門の前でレンを待っていた。学校までは十分程度、もう早歩でも十分間に合う。
「お待たせ! 遅れないうちに行こう!」
「はい!」
エーフィは顔に喜色を浮かべつつレンを見上げて来る。
「兄様。どこに進学するかはもう決めたのですか?」
躊躇いがちに尋ねて来るエーフィ。
「まだ……かな」
これは嘘だ。とうの昔にレンの気持ちは冒険者になる事で決まっている。そのために猛勉強をしたし、決死の覚悟で鍛練を積んできた。
レンの前に聳え立つ才能という絶壁が何度もその気持ちを打ちのめしはしたが、今更この意思を変えるつもりはない。
そしてこの進路の事は家族には伝えていない。反対されるに決まっているからだ。特に目の前の少女が烈火ごとく反対するのは目に見えている。
「そうですか……」
それ以来、エーフィは聞いて来なかった。もしかしたら薄々勘図いているのかもしれない。
他愛もない話に花を咲かせながら、校門でエーフィと別れる。
エーフィは『王立中等騎士学校』の隣にある『王華女学院』に通っている。エーフィはレンと同じ『王立中等騎士学校』に通いたかったらしいが家族会議の末、エーフィ以外の満場一致で否決された。
だいたい、『王立中等騎士学校』は将来官僚、軍隊、冒険者等の限られた選択しかいない。これらの職業がエーフィに相応しいとはとても思えない。
下駄箱から上履きに履き替え教室へ向かう。
今日はレンの夢の第一歩。十分に気合を入れなければならない。
廊下を歩くレンの行く手を3人の少年達の集団が遮った。その中心にいるのは肩幅の広い体格の良い黒髪の少年だった。
(朝から面倒な奴らにあった)
少年の名はパット・ボスロイド。
この粗暴な外観に反しボスロイド伯爵の次期当主、つまり貴族であり3組だ。
この『王立中等騎士学校』は発足当時からの伝統から1組から3組が貴族、4組から8組が平民で構成されている。もっとも、貴族クラスに入るのはあくまで本人の希望であり、レンのように数人の物好きは4から8組を希望する貴族もいる。
「よう。『最弱』。今日の中間試験逃げなかったみたいじゃねぇか。てっきり家で布団でも被って震えているかと思ってたぜ」
パット達とは幼年時代にはよく遊んだが、中等部生になってほどなくして急に冷たくなり、レンを『最弱』と称し、このように執拗にバッシングしてくるようになった。
ちなみに、このパットが付けた『最弱』という二つ名は、悔しいがそれなりの根拠がある。
レンは8組でいや、3学年で最弱だ。現に騎士校2学年、3学年前期の個人試合で全敗している。
この理由は本来誰にでもあるはずの魔法の素養が全くないからだ。馬鹿長い演唱が必要だった昔ならいざ知らず、小型の魔法演唱短縮装置――隼が開発された今、魔法は現代戦闘においてなくてはならないものとなっている。
身体能力の向上の魔法から、演唱が短い攻撃魔法など魔法を覚えていないだけで戦闘は限りなく不利になる。
無論、その差を埋めるため身体能力の向上の鍛練や、剣や体術の鍛練に励んだが人並みを超える事はできなかった。
「……僕は逃げないよ」
口から声を絞り出し、パットを睨み付ける。
「どうだかなぁ。知ってるか? こいつ、先月迷宮でゴブリンにさえ立ち往生してたんだぜ!」
「ゴブリンってあのゴブリンか?」
「そうだ。あの糞弱いゴブリンだ」
「マジかよ。2年前期の実習始めたばかりのド素人でもそんなのねぇよ」
「レンの奴、ゴブリン前にぶるぶる震えてやがんの。爆笑もんだったぜ!」
廊下中に嘲笑が木霊する。同級生どころか下級生からも侮蔑の視線と嘲笑が向けられる。自然に握り締めていた両手の皮膚に爪が食い込む。
悔しくないわけがない。レンは真剣なのだ。この学校の誰よりも強さを求め日々努力して来た自信はある。
冒険者になる。それがレンの今の生きる目的と言っても過言ではない。恥辱と怒りで全身が燃えるように熱い。
「お前、冒険者になりたいんだってな? 確かに、冒険者なんて力のない屑共のなる職業だけどよぉ、それでもお前のような虚弱野郎は御免だろうよ」
胸の中が悔しさでいっぱいになる。レンが貶されるのはいい。力がないのだ。言われても仕方がない。だが、レンのせいで冒険者という職業まで馬鹿にされるのだけは許せない。
冒険者は勇者や英雄を生み出す誇り高き職業だ。それだけは否定はさせない。レンが憤怒の視線をパットに向けるが……。
「黙るニャ! 顔面岩石野郎!」
「あぁ?」
パットは額に太い青筋を張らせながら声の主を睨む。
声の主はブラウン色の髪の猫耳娘。下手をすれば幼年学生に見間違われる幼い体躯と容姿はとてもレンと同じ中等部3年生には見えない。
だが、彼女もれっきとしたレンの同級生だ。
この猫耳ショートカット少女はミャリー・アイファンズ。通称――ミャー。彼女はこの呼び方を嫌がるが信頼と親しみを込めてレン達8組の皆はそう呼んでいる。
彼女は獣人国の留学生だが貴族だ。本来1~3組に入る権利があるが、レンと同様自らそれを拒んだ稀有な物好きの一人だ。つまり、ロイスター王国の貴族達が死ぬほど嫌いなのである。
「レンはもうゴブリンは(、)一人で倒せるニャ。でたらめ言うニャ!」
「そうだぜ。レンはもうゴブリンなら(、、)敵じゃねえよ」
猫耳少女の後ろから長身の赤髪の少年が姿を現す。端整な容姿に服の上からもわかる鍛え抜かれた筋肉。この野生児はカラム・バンブリッジ。レンの悪友であり、我が8組最強の一角だ。
「いや、いや。ミャー、カラム。それ全然フォローになってないから」
彼らの馬鹿みたいなお節介のおかげで体内中をのたうち回っていた悔しさや怒りなど、どこかに吹っ飛んでしまった。
カラムが出て来た途端、パットは顔を嫌悪で歪める。
パットはカラムをレン以上に毛嫌いしている。レンに対しては直接的に絡んで来るが、カラムに対しては空気のように扱うだけだ。パットとは幼年時代それなりの付き合いがあるからわかる。この態度はパットが最も嫌いな奴に対してする仕草だ。
案の定、パットは舌打ちをしてその場を離れる。
「ありがとう。助かったよ」
「どういたしましてニャ」
「おおよ。それより、もうすぐ集合時間だぞ。待っててやるから教室から武具と鞄取って来な」
「うん!」
レンは小走りで教室まで行き荷物を机に置き、ロッカーから武具の入った布袋と小回復薬やロープ、ナイフなど冒険に必要な小道具が入った鞄を掴み、カラム達の所へ向かう。
◇◇◇◇
カラムと更衣室へ行き体操着に着替え、レン専用のライトアーマーを肘、両腕、腰に装備する。次いで剣の鞘を腰につけた専用ベルトに装着し、鞄もベルトにかける。これで準備は完了。
迷宮の入口がある王立高等騎士学校の運動場前が集合場所である。運動場へ行くとザワザワと喧騒が辺りを支配している。今日、実習前半試験を受ける同級生どころか、下級生、さらには王立高等騎士学校の生徒までいる。
「ミャー、これ何の騒ぎ?」
カラムと共に人込みをかき分けて、猫型獣人幼女に話かける。
「ロイスター王国の王女様が来てるらしいニャ」
「へ? うわ~。マジだよ! マジで本物の王女殿下だよ! テレビで見るよりずっと美人だなぁ~。なあ、レン?」
カラムがレンの肩に手を乗せ同意を求めて来る。
「うん……」
光りに反射するややウエーブのかかった金色の髪に、完璧と言うほかない程の顔の造形。垂れ目気味のおっとりとした目。なにもかも昔に会ったままの彼女だった。
もっとも、王国中央軍中将である父――ルーカス・ヴァルトエックに連れられ数度度王宮に訪れた際に遊んだ事があるに過ぎない。レンなど覚えてすらいないだろう。
高位貴族の子弟達に囲まれている彼女はレンとはもう一生関わりになるはずもない人物だ。それも当然。彼女はキャロル・ダイアス・ロイスター。このロイスター王国の第二王女であり、『歌姫』の名で呼ばれる王国の象徴的存在だ。下手なアイドルよりずっと人気がある。
ボ~とキャロル王女殿下に目を奪われていると、ミャーがレンの頬をつねる。
「い、痛いよ。ミャー」
レンの涙目の非難の言葉に、ミャーは呆れたように肩を竦める。
「鼻の下伸ばしてる場合ニャ? 今日の中間試験落ちたら『世界冒険者育成学校』への入学は絶望的ニャ」
ミャーの言う通りだ。『世界冒険者育成学校』の推薦入学試験受験資格を獲得するには、迷宮実習試験で高得点を得なければならない。中間試験で赤点などもっての他だ。今のレンは首の皮一枚つながった状態というわけだ。王女殿下に見惚れている暇などでは断じてない。パンと頬を両手で叩く。
「ありがとう。ミャー。目が覚めたよ」
「わかればいいニャ!」
ミャーは満足そうに頷く。それを見たカラムが呆れたようにかぶりを振っていた。
「だがよ。レンはどうしてそんなに冒険者になりたいんだ? お前一応貴族だし、父ちゃん軍隊の偉い人なんだろう? 軍隊に入ればそれなりの地位が約束されてんじゃないのか?」
「僕は貴族といっても紛い物だよ。それに、僕は父さんみたいにはなれない」
ドスッ!
「ぐふッ! わ、わりい」
カラムの鳩尾にミャーが無言の肘鉄をかまし、カラムはすまなそうに項垂れる。
「いや、いいよ。本当の事だし。僕が冒険者になりたいのは僕の記憶を取り戻すためさ」
レンが冒険者になりたい理由二つある。
そのうち表向きの理由は過去の記憶を取り戻す事。レンには6歳以前の記憶がない。
9年前、ロイスター王国の地方都市ガルトレイドが一夜にして死の町と化した。その原因は未だに謎とされている。レンはこのガルトレイドの唯一の生存者。
この死に絶えたガルトレイドの街を亡霊のように歩いていたレンを当時中央軍の少将だったヴァルトエック子爵が保護し養子したのだ。
養子になった当初は記憶を取り戻す事を切に願ったものだが、知ったところで今のレンが何か変わるわけでもない。今では取り戻せたらいいなという程度のものでしかない。
本当の理由はもっと子供染みた恥かしいものだ。それは養父であるルーカス・ヴァルトエックからもらった一冊の本『世界冒険記』から始まった。
この『世界冒険記』は過去に冒険者でなおかつ伝説の勇者が記したとされる伝記と御伽噺がごちゃ混ぜになったような書物だ。何気なしに読んでみたが最後、あっという間に虜となった。当初は物語に出て来る世界そのものに対する興味にすぎなかったが、いつしかそれが、自身が勇者や英雄になって世界を旅する事を夢見るようなったのだ。
勿論、勇者や英雄になりたいなど例え実力があっても恥ずかしくて口になど出せない。実力がない今のレンなら尚更だ。だから、尋ねられたら冒険者になって過去を取り戻すことを理由にしている。
ハーフエルフの鬼教師――アラベラ・ヘイズが校庭に設置された檀上傍まで来た。ようやく、迷宮前半試験が始まるらしい。アラベラ先生が試験の概要を説明する。
三人一組のパーティーを組み迷宮を探索する。迷宮の5階の祭壇に置かれた指輪を取り、この校庭まで7時間内に戻って来る。時間が速ければ速いほど得点は高い。さらに魔物を倒すと得られる魔石も得点に加算される。
この魔石の得点の加算は予想以上に高く、7時間内ギリギリにゴールしても魔石十個があれば合格する。
迷宮探索をしていれば魔石十個などすぐ溜まる。つまり、事実上7時間以内にゴールするか否かの試験だ。
「静かに! 王女殿下の御前だ!」
このアラベラ先生の言葉で親鳥に餌をねだる雛のように騒々しかったグラウンドは静まり返る。
「王女殿下は今日お前達の迷宮試験を見学なされる」
今年は3年に一度の世界学生武道大会の開催年であり、このロイスター王国が開催国である。そして今日の実習試験の結果により世界学生武道大会団体部門の選手が決定される。
加えて迷宮を管理しているのは王族だ。キャロル殿下がこの場にいるのはパフォーマンス的意味もあるのだろう。
「先生、それは殿下も迷宮に入るという事ですか?」
先刻王女殿下に取り巻いていた貴族風の生徒が教官に即座に尋ねる。アラベラ先生が言葉を発する前に騎士風の青年が一歩前にでて説明を始める。
「ここからは私が説明いたします。私は近衛騎士団副団長のアハル・エイブラム。
今日は迷宮を見学されたいという王女殿下のたってのお願いから皆様方に混ざり迷宮探索をしたいと思っております。
勿論、王女殿下はこの私が護衛いたしますので皆様方に御迷惑はおかけいたしません。どうぞお許しいただきたい」
近衛騎士団副団長アハルが頭を下げると同時に騒めきが波の様に生徒達の間に広がっていく。当然だろう。
殿下が迷宮に入ること自体目ん玉が飛出るほどの驚愕すべき事実だ。さらに先ほどの騎士団団長の話を総合すれば殿下は学生と同じパーティーに混ざる可能性が高い。
「アハル殿の仰られた通りだ。殿下はお前達のチームと行動を共にしてもらう。殿下と一緒に行動を共にしてもらうチームは公平の観点からクジで選ばせてもらった」
「クジなど納得いきかねます。王女殿下の安全の観点からも最も優秀なチームと行動を共にしていただくべきです」
金髪の美少年がアラベラ先生に食ってかかる。彼はレンにも見覚えがあった。
フレイザー・バルフォア。ロイスター王国六大名家バルフォア家の次期当主であり、ロイスター王国の大英雄――ベオウルフ・バルフォアの子孫でもある。
ベオウルフは1500年前、女神から加護を受け弱小国の王女であったルミル・ダイアス・ロイスターを盟主に、世界にある北部、南部、東部、西部、中央部大陸のうち、この西部大陸の覇権を握った人物であり、事実上現在の巨大国家ロイスター王国を建国の父といっても過言ではない。キャロル殿下と少なからず関係がある方が自然というものだ。
このフレイザーの言葉に対し賛否が巻き起こる。アハルが白い歯を見せつつ笑顔でそれに答える。しかし、その話の内容は表情とは異なり痛烈なものだった。
「申し訳ありませんが、皆様方の実力では誰であっても護衛の足手纏いでしかありません。護衛の役は私一人で十分です」
フレイザーは苦虫を噛み潰したような顔で引き下がる。フレイザーはこの王立中等騎士学校でも断トツに優秀だ。少なくともアハルの言った言葉の真否を理解できない程愚かではない。
「わかったようだな。王女殿下と行動を共にするのは8組10班だ」
悲鳴にも似た声が至るところから上がる。だが、今のレン達には周囲の声など耳には入らない。それどころではなかったのだ。
「お、おい。8組の10班って言ったら……」
「僕達……だよね」
「そうみたいニャ……」
レン達が絶句しているのを尻目に、貴族の生徒を中心にクジのやり直しの進言が相次いだが、アラベラ先生はそれに取り合おうともしなかった。
開始の挨拶がキャロル殿下からなされ試験は開始される。
レン達8組10班の出発は丁度30分後だった。貴族達の子弟達はレン達に嫉妬と怨嗟の視線を投げかけつつも迷宮内に消えて行く。
キャロル殿下はレン達に近づきスカートを細い指でつまみ挨拶をする。
「よろしくお願いいたしますわ。レン。皆様方」
「えっ? 殿下僕の事覚えて?」
「レン! 私が大切なお友達の事忘れると思っていたのですか?」
頬をぷく~と膨らますキャロル殿下に慌てふためくレン。
「い、言えそのような事は決して」
「なら、許してあげます」
人懐こい笑顔を浮かべるキャロル。その笑顔を見たのは7年ほど前のはずなのに鮮明に思い出せた。顔が熱くなっていくのがわかる。
「王女殿下、自分はレンの親友のカラムです。後でサインください」
基本ミーハーなカラムがレンを押しのけ暴走気味にキャロル殿下に詰め寄る。普段絶対口にしない『親友』という言葉を口走っていることからも舞い上がっているのは明らかだ。
「はい。よろしくお願いしますね。カラムさん」
「勿体ないです。マジで勿体ないですぅ」
「カードを確認して、もう出発するニャ」
カラムの情けない姿を横目で見ながらミャーが促す。レンとカラムもミャーの言葉に頷き、ポケットから能力値カードを取り出す。この能力値カードは世界冒険者機構で発行される自己の能力値を確認する事が出来るカードであり、この迷宮実習が始まる前に全員作成する事になっている。
【レン・ヴァルトエック】
・種族 :人間
・年齢 :15歳
・LV :1
・能力値: 筋力1 耐久力1 素早さ2 賢さ2 魔力1 魔力耐性1
(何度確認してもショボ過ぎる。僕弱すぎるよね……)
このLVは1~20まである。これをレベリングシステムと呼ぶ。
このレベリングシステムはこのカードを発明した自身を変革と名乗る魔導士が考えだしたシステムであり、世界各国で常用されている。正直、ネーミングセンスがどうかと思う。聞くだけでむず痒くなる。
そして、このLVは1上がるだけで数値的に大きな差がつく。これはカラムとレンを比較すると非常にわかり易い。カラムのLVは3、平均能力値15。約レンの15倍だ。
ちなみに、LVは一流の騎士クラスでも10を超えることはまずないらしい。
「準備はいいニャ?」
「「うん(おう)!」」
ミャーの問いかけに勢いよくレンとカラムが応え、レン達の迷宮前半試験という名の冒険が始まる。
お読みいただきありがとうございます。




