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第6話 鍛錬(3)

 

           ◇◇◇◇


 迷宮探索実習16日目 午前9時半 廃工場

 今日も30分前に全員が廃工場へ集合していた。

 昨日は意気消沈していたので数人は脱落すると思っていた。しかし全員が大きな試練に立ち向かうような力強い顔つきをしており、負け犬など一人足りともいやしない。

 ハミルトンが上手く励ましてくれたのだろう。レンには昨日のBチームのメンバーにやる気を起させることは不可能だ。やはりハミルトンは一流の冒険者なのだろう。

 


 【兎の魔法使い】はLV10。策を練ればLV7のバリー達に倒せない敵ではない。昨日は兎に対する恐怖により思考が停止し、身体が硬直してしまっていた。あれではただのサンドバックだ。勝てるものも勝てない。

 【兎の魔法使い】の凶悪なところは遠方から緋色の炎弾で攻撃し、それを避けるため接近しようとすると風壁で阻まれる。遠方から魔法で攻撃しようとしても同様に風壁で防がれ八方ふさがりになる点だ。

 しかし、この兎は攻撃と防御は同時にはできない。さらにこの兎は一体しかいない。そこに気付けるか否かが勝利の鍵となる。

 コーマックが風の第1階梯魔法【風の防壁】を発動し、分厚い空気の壁を形成する。

 LV7のコーマックの魔力ではLV10の【兎の魔法使い】の緋色の炎弾は精々防げて一度だけ。しかも全部は防ぎきれまい。

 ベラが木槌を肩に担ぎ身をかがめ、バリーが長剣(ロングソード)を上段に構える。どうやらこの兎の最大の弱点に気付いたようだ。

 【兎の魔法使い】が緋色の炎弾数十個を空中へ出現させると同時に、フェイも【火炎弾(ファイアーバレット)】の演唱を開始する。

 【兎の魔法使い】の緋色の炎弾が放たれる瞬間、ベラとバリーが地面を蹴り兎との間合いを食らい尽くす。

 バリーが兎の首を横一文字に横凪にし、兎の頭部は何が起こったがわからないというような表情を浮かべつつ地面へ落ちる。

 直後、ベラの【渾身の木槌】による《渾身の一撃》が兎の失った頭部付近に落下する。

 ビルを粉々に破壊するような巨大な音と共に、周囲に同心円状の衝撃波が巻き起こる。地面には巨大なクレーターが出現しており、兎の姿は跡形もなく消滅していた。

 【兎の魔法使い】の放った緋色の炎弾も、その半数がフェイの【火炎弾(ファイアーバレット)】によって相殺し、残りの半数はコーマックの【風の防壁】に衝突し消滅した。


「やっ……た……?」


「勝ったぞぉぉぉぉぉぉぉお!!」


 バリーが天空を仰ぎ絶叫する。


「やりましたよ。やはり僕らの理論は正しかった。攻撃と防御は同時にはできない。今回の事ではっきりしましたよ。冷静さを欠いたらその時点でアウトです」


 勝利の余韻に浸りつつも自己分析を欠かさないところなどコーマックらしいと言えばらしい。


「倒したね。ベラちゃん」


「あ~ん。フェイ!」


 フェイとベラは抱き合ってきゃっきゃと嬉しがる。



 その後、ピョン子さんの眷属の人型兎の精霊にベラが抉った地面を修繕させてから再度【兎の魔法使い】を召還する。もっともコツを掴んだバリー達の敵ではなく機械的に【兎の魔法使い】を撃破していく。

 その過程でドロップアイテム【魔法使いの帽子】が手に入った。

 この防具の能力は一定の確立で魔力を倍近くまで上げるものであり【渾身の木槌】の魔法版といったところだ。

 それを教えるとフェイとコーマックの目の色が変わる。ベラ達と同様ジャンケンで勝負をするとフェイが勝利する。フェイが飛び上がって喜びコーマックが項垂れる。Bチームの女性陣は運が強い。

 遂に全員がLV10に到達する。

 【兎の魔法使い】とのタイマン勝負ではバリーは空中に発生させた炎弾が殺到する前に兎を両断する。

 ベラは風壁ごと【渾身の木槌】で兎を消し飛ばした。

 コーマックはLV10により上昇した魔力により第2階梯風魔法――【風刃(ウインドブレイド)】で強力な鎌鼬を作り出し【兎の魔法使い】の炎弾が飛ぶ瞬間に兎を縦断する。同時に自分に【風の防壁】を張り炎弾を防ぐという荒業をやってのけた。

 対して元々攻撃魔法が得意なフェイは【魔法使いの帽子】により倍近く上昇した魔力でハミルトンに教わったばかりの第3階梯火炎魔法――【火炎柱(フレイムウォール)】により強力な火炎の柱を前方にいる兎の足もに作り出し風壁ごと兎を炎滅してしまう。大人しいフェイとは思えない力押しの業だ。

 勢いのついたバリー達は魔物ごときには止められず次の【三角兎】もあっさりと攻略しLV12まで上がりその日の修練は終了する。



             ◇◇◇◇



 迷宮探索実習17日目 午前9時半 廃工場


 今日を含めてあと2日。バリーに明日の最終日は午前7時開始にして欲しと言われる。断る理由もないので許可した。

【剛兎】、【火兎】、【幽霊兎】、【剣闘兎】の4種類の兎を撃破し全員LV17まで上がる。

 現在は午後21時。予定よりも3時間近く遅れてしまった。遅れた理由はバリー達自身がこの鍛練に意義を見出しすぎてしまっていることにある。

 三種類目の兎【幽霊兎】の単独撃破が可能となった時点で午後の18時。丁度良い時間だと終了の宣言をすると全員から異議が申し立てられる。なぜかハミルトンまで彼らを支持するので最後の【剣闘兎】の鍛練も追加となった。

 今日獲得したドロップアイテムは【剣闘兎】が落とす【脱兎剣】。名前は情けないが効果はかなりのものだ。

 装備者の【素早さ】の能力値(ステータス)を10だけ上昇し、さらに大剣が子兎のように軽いという特殊効果付。消去法的にバリーが所持する事になったが、特にスピード重視の戦闘スタイルであるバリーには願ってもない武器だ。バリーは終始、【脱兎剣】に頬ずりをして大層キモかった。

 バリー達が帰宅した後、ハミルトンに明日の鍛練には自分も参加すると宣言をされる。ハミルトンのLVは15。

 LV的にはバリー達より低いが勝負すれば間違いなくハミルトンが勝つ。2、3レベルならばものともしない戦闘技術の差がハミルトンとバリーとの間にはある。明日の卒業試験たる怪物兎との勝負にはハミルトンに力を借りるのもありかもしれない。



 お読みいただきありがとうございます。

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