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第5話 鍛錬(2)

◇◇◇◇



 迷宮探索実習15日目 午前九時半 廃工場

 まだ30分前というのにすでに全員集合していた。しかも、期待で目をキラキラ輝かせながらだ。反応に困る。

 今回の鍛練は『新兵育成教本(地獄編)』に基づいている。少し対応を誤ったのだろうか? 


(課題がクリアされている限り気にする必要はないかな……)


「では少し早いが今日の修練を始める。ピョン子さん。お願いする」


「承りましたピョン。御主人様」


「いでませ。いでませ。ピョピョンのピョン!」


 再び邪悪で悪質な儀式を始めるピョン子さん。

 巨躯のオッサンのバレーの舞により周囲が凄まじい魔力で満たされる。地面に魔法陣が写しだされ、新たな兎が召喚される。今度は木槌を持った大兎。


「この兎は【月の兎】。見ての通り、力は強い。しかも、クリティカルの確立が大幅に上がるという特殊な武器である【渾身の木槌】を持つ。弱点はやはり耳だ。

 今日は単独撃破できるまで【月の兎】との戦闘を続け、撃破できたら次の種類の兎に移る。今日はこれをエンドレスで繰り返す」


「「「「はい!」」」」


 元気の良い返事と共に今日の鍛練が開始される。



 恐怖による身体の硬直がなくなったこと。加えて連携を覚えたことは驚くべき速さでの【月の兎】の撃破を可能にした。

 フェイが第一階梯魔法――【火炎弾(ファイアーバレット)】により散弾銃の如き弾幕を張る。

 炎の弾丸の直撃を受けても【月の兎】は平然としていた。当然だ。【月の兎】はLV7。LV3に過ぎないフェイの【火炎弾(ファイアーバレット)】の攻撃などものともしない。

 しかし、数十発のの炎の弾丸だ。それなりの衝撃はある。案の定【月の兎】は衝撃を完全には殺しきれずたたらを踏む。

 そこをコーマックが束縛の魔法で一時的に束縛。その直後、ベラとバリーが同時に兎の耳を切断する。まさに電光石火。兎は粒子状になり魔石と【渾身の木槌】が残される。

 この木槌はドロップアイテムだろう。所持を許可する。

 【渾身の木槌】はバリーとベラがジャンケンをし、勝ったベラが所持することと相成った。床に拳を叩き付けて悔しがるバリーの横でブンブンと得意気に木槌を振り回すベラ。



 その後、かなりの数の【月の兎】を魔石化することにより全員がLV7に上がり、【月の兎】の単独撃破が可能となった。

 特に【渾身の木槌】を装備したベラの強さは圧巻だった。

 【渾身の木槌】の特殊能力《渾身の一撃》で筋力が倍近くまで上がったベラの一撃は【月の兎】を瞬時に沈黙させる。さらに、勢い余った木槌は地面を打ち、大穴を穿ち大地を地震のごとく震わせる。

 自身の為した破壊に呆然とするベラと脇で悔しがるバリー。無理もない。ドロップアイテムはやはり簡単に獲得できるものではなくベラの一本だけだったのだから。

 次はLV10の魔物――【兎の魔法使い】。ファンシーな名前と姿とは対照的に極めて極悪な生物だった。

 黒色のマントと先が捻じれた三角帽子を着用した小さな兎が杖を空高く掲げると、数十もの緋色の炎が上空に浮かび上がりバリー達に弾丸のような速度で襲いかかる。勿論、ピクリとも反応すらできずに全員が気絶する。

 ピョン子が防御壁を展開していなければ人間の丸焼きが4つほどできていたことだろう。ピョン子に癒してもらうが、全員の心が根元からポッキリへし折られてしまっていた。

 満足な動きが出来ず残りの時間、ひたすら凶悪にして極悪兎になぶられ続ける。

 昨日と打って変ってお通夜のような終了だった。

 絶対やり過ぎたと頭を抱えているとハミルトンが任せろというジェスチャーをして来るので、任せることにし本日の修練は終了する。


 お読みいただきありがとうございます。

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