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神様との聖戦  作者: 霧島
第1章
6/6

日常

9月21日、朝。

俺は自室のベッドの上で目覚めた。

昨日寝るのが遅かったせいか、気怠い気分を断ち切ることが出来ない。

こんなに目覚めが悪いのも久しぶりだった。

「はぁ〜、あ。」

口から勝手に欠伸が出てくる。

眠気を覚ますために、とりあえず洗顔。

「よしっ。」

朝食を手早く済ませ、学校の支度を整える。

「行ってきます。」

家族に別れを告げると、俺は足早に家を出た。


「よっす。」

校門に着くと、背後から声を掛けられた。

振り向くと、そこには見慣れた顔があった。

「よう、久原。」

久原は8月まで共にサッカー部で過ごした仲間の一人だ。

同じクラスということもあって、特に仲が良い。

彼は今日も調子が良いようで、いらない情報をペラペラと話してくる。

すると唐突にこんなことを言い出した。

「昨日の夜は綺麗な満月だったな。」

ー不意に、赤い月が、美しい女性の姿が、脳裏によぎる。

「いつからそんなロマンチストになったんだよ。」

俺は、一度無くなった左腕を撫でながら言った。

昨日の夜のことを、彼は知っているのだろうか。

朝から注意してみたが、テレビにも、新聞にも、昨日の事件は取り上げられていないみたいだ。

だが、試しに聞いてみる価値はあるかもしれない。

「なぁ、久原。」

「うん?」

「…今日の一限って何だっけ?」

聞けなかった。


教室に入ると、俺の視覚は無意識のうちに一人の姿を捉えた。

俺の瞳に映る彼女は、一番後ろの席で英単語帳を開いていた。

「おはよう、いいんちょ…いや、上宮。」

俺は昨日の夜にも会った、理知的な彼女に声を掛けた。

「あら、おはよう、桐谷くん。何か用かしら。」

彼女はまるで何事もなかったかのように振る舞ってくる。

「説明、聞かせくれよ。」

俺は彼女に逃げられないよう、やや強めに言った。

俺はなんとしても知りたかった。

昨日の夜の出来事をー。


「い、委員長?」

月明かりに照らされている中で俺が見た姿は、同じクラスの委員長、上宮春奈だった。

彼女は成績優秀かつ、運動神経も抜群という文字通りの優等生で、そのお淑やかな性格も相まって、多くの男子の憧れの的だった。

「なんで委員長がここに?」

俺は驚いた。

そして驚愕のあまり、彼女の何かに対する苛立ちに気付けなかった。

「うるさいわね。」

彼女は静かにそう言うと、再び俺を蹴り飛ばした。

「うぐっ。」

俺は再び痛みで地を転げ回った。

「知り合いか?」

男の声が彼女に尋ねた。

「さぁ?向こうは私の名前も知らないみたいだし、違うんじゃない?」

彼女は学校での彼女と雰囲気が違った。

お淑やかとは正反対の、強気な少女のように感じられた。

「う、上宮。悪かったよ、色々…。」

こちらが折れた方が話が早く進みそうだった。

「あら、同じクラスの桐谷翼くんじゃない?どうしたの、そんなところで無様に寝転がって。」

俺は多少の苛立ちを感じながら、なるべく合理的なルートを選んだ。

「上宮、何があったのか知っているのか?知っているなら、教えてくれないか?」

「…そうね、今日は眠いから明日教えてあげるわ。」

彼女の態度はどこか人を苛立たせるようだ。

「今教えてくれないか。」

「うるさいわね。もう一度這い蹲って貰おうかしら。」

彼女は射るような視線をこちらに向けて言った。

俺は恐れを抱くよりも早く、呆れに至った。

「…わかった。じゃあ、明日な。」

「クロス、事後処理頼むわよ。」

「了解した。」

…結局、最後まで彼女は俺を相手にしなかった。

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