驚き
彼女の手から血が吹き出していた。
俺に触れようとした手は、その寸前で何かに切り落とされていた。
「…助かった。」
俺は安堵と痛みで意識を失った。
「とりあえず、死に損ないを救助したわ。」
意識の遠くで女性の声がする。
「やつは?」
今度は男性の声。
「逃げられた。」
再び女性の声が聞こえ、俺は重い瞼を開けた。
「う、うぅ…。」
目を開けると、夜空が見えた。
星はあまり見えないが、月は満月で綺麗だった。
見慣れた夜空が今は愛おしく感じられ、俺に安心感を与えた。
「起きたようね。」
女性の声がした。
俺は自分の状況を把握するために、視線を周囲に巡らせた。
どうやらここは駅前のロータリーのようだ。
その中央のオブジェの横の地面に、俺は仰向けで寝ていた。
「こいつ、どうするの?」
ちょうど頭の上方で声が聞こえる。
俺は女性の声がする方へ視線を向けた。
最初に見えたのは、白く肉づきの良い脚だった。
そして次に見えたのは、白い布地だった。
これはおそらく。
「白のパンツか…。」
生きている喜びを確かめるかのように、俺は思わず口に出して言った。
「はぁ?…きゃっ!」
女性は俺の言葉を理解し、可愛らしい声を上げた。
そして、脚を振り上げ。
「死ね。」
殺意のこもった、どす黒い声でそう言って、俺を蹴飛ばした。
「ぐはっ」
俺はオブジェに衝突し、横向きに地面に倒れた。
そのおかげでようやく、彼女の全容が見ることができた。
彼女は制服姿だった。
しかも、俺と同じ学校の。
そして、黒髪のポニーテイルを揺らし、起伏の少ない胸の前で腕を組む姿はどこか見覚えがあり。
「い、委員長?」
そう、そこにいた女性は同じクラスの委員長、上宮春奈だった。