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八話 システムJK ver16-18

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「……」

「……」

「……」

「……な?」

「な? じゃねぇよ。キト、正直に答えるけど、本当に理解出来ない。もしお前が宇宙人で、なんかわけのわからない技術で俺が試されているって話なら、早めに教えて。それなら、何とか納得できるからさ」

「僕は人間だよ」

「そう、ってか、お前、これ自分で書いたんだろ、意識あるじゃん」

「いや、気が付いたらこの文字列が僕のケータイに書き込まれていたんだ。リンちゃんに迫るたびに、僕の視界は黄色で包まれ、意識が無くなっていたんだ」

「すげー恐い……」

 それは、キトという狂った人間への感想であったが、「そうだ、リンちゃんは可愛が、同時に恐ろしい」とキトは返してきた。

「で、それが、原因なの?」

「あぁ、リンを見た人間は、このように脳内が汚染されてしまうんだ」

「どうして? あ、お前と同じ、……超能力を持っているから?」

「いや、あれはまた別の力だと僕は判断している。僕の予想では、リンちゃんのあの可愛い顔や、小さな姿、行動、匂い、視線、動き、などそれらが奇跡的に合成され、サブリミカルのように脳に侵入を果たす。そして、リンちゃんを守ってあげたいと全力で願ってしまうんだ。ちなみに、能力名は【アザートE・DP(ダブルピース)】でどうかな」

「あざとい? 知るか、勝手につけるな。……でも、確かに、これはおかしいのかもしれない」


 ビーチバレーはお互いの肉体精神を極限まで消耗して死力を尽くしている。スイカ割りを始めようとした生徒は、棒をへし折り、スイカを素手で叩き割り、豪快な踊り喰いを始めていた。  バーベキューでも、偶然養豚場から逃げ出していた子豚が捕まり、丸焼きとなって、クラスメイトが猛食していた。

「恐ろしいのは、リンちゃんへの守りたい欲求は道を逸れて行き、現在のように極限まで己の中の己に挑戦しようとしてしまうところにある。僕だって、もう半分狂っているが、それでも必死に自分を抑えているんだ。だが、そのたびに、己の中でミシミシと何かにヒビが入る音が聞こえ、僕の中で折れてはならない軸が折れ、内側から何かが噴き出してくる」

「いや、お前はいつもと何も変わっていないから」

 キトは震えながらも写真を撮り続けている。セセギは灼熱の砂浜で、一人精神的な涼を感じつつ、海辺で広がる光景を見つめていた。それは、まるで自分一人だけが取り残されてしまうような感覚で、ぞわっと、幼き頃のトラウマが、蘇ってきた。

 その中で、一人の女性が目に留まった。

「アマネも、普段と変わらない。だよな、キト?」

「うへへへへべろろろんべろろんうへへへへへへへへへへへへへへへへへへ」

 もう既に、キトは人を辞め、変わり果てた存在へと堕ちていた。それでも写真を撮り続ける姿に流石のセセギも感服したが、セセギは現実から目を反らすかのようにキトから眼を反らすと、アマネの表情を観察することにした。現在、リンはクラスメイトの魔の手からやっと逃れ、アマネと楽しそうに海水を掛け合っている。


 ――いつものアマネだ。キトから、リンには人を狂わせる力があると聞いた時、アマネはその力によってリンを愛してしまったのか、と思ったけど、違うのか? ってか、傍から見ると、塩分濃度の高い水を掛け合うのって、何が楽しいんだろう。糞つまらないな。リン溺れろ。

 セセギの妬みは、今日(こんにち)だけでなく、アマネの告白を聞いた瞬間から蓄積され、日を追うごとに増えていた。セセギの、アマネは途中で我に返るんじゃないか、という願い虚しく、逆に二人は日々親交を重ね、深めている。キトの情報では、アマネとリンは別の授業で離れる以外、空間を共に行動しているという。更に、アマネは別の授業中でも、メールを繰り返して繋がりを持っている、とセセギに豪語していた。

 ――時間の問題なのか?

 セセギの中で、その言葉が膨れ上がっていく。リンは、アマネに纏わりつかれて嫌がっているのではないか、とセセギは願ったが、それは杞憂に終わる。アマネ曰く、自分よりもリンのほうが懐いてくると、嬉しそうに語っていたのだ。

 以前、アマネの恋する相手がキトと勘違いしたセセギは、キトを背後から襲う計画を立て、それを実行しようとしていた。幸いにもそれは誤解とわかり、友を血に染めることは無かったが、もし誤解と知らなければ、過ちを犯す覚悟がセセギには存在している。

 自分であって欲しいからだ。

 アマネが話す相手、接近する生物、視界に映る景色はもちろん、アマネの着る服、髪を整える櫛、口に含む飯、喉を潤す水、吸う空気、体を流れる血液、アマネが存在するこの空間にすら、セセギは強い妬みを感じていた。

 セセギは、アマネに対し、清々しい晴天のような、独占を求めている。

 故に、アマネに接近するリンに対しても、セセギは制裁を加えるつもりでいた。キトと同じく、ロッカーの中にある変装道具を使い帰り道背後から襲おうとしたり、階段の上からリンを突き飛ばして事故を引き起こそうとしたりと、様々な行動を仕掛けていた。だが、チャンスに恵まれないのである。学校ではリンによって狂わされて生徒によって隙が無く、一人になることはありえない。それでもセセギが必死に探し当てた隙を、アマネが消していた。ストーカーするも、アマネが一緒に返り、これまた隙は存在しない。家の前で別れるか、アマネと一緒に家に入り、その光景を眺めるたびに、セセギの胸は疼いた。

 リンが生徒に守られている理由を今日知ったセセギであったが、殊更手を出せないと、悟る。

 現在のセセギの唯一の防衛方法は、アマネからリンに対する想いを相談された時に、「まだ早いと思うよ」と勇むアマネを論するフリをして、第三者的な視線で言葉を返すだけであった。

 ――アマネの悲痛で歪む表情を、俺は見たくない。だから、つい、アマネが語るリンとの関係を、ぶち壊したい衝動に駆られながらも、アマネの笑顔を願って、助言を繰り返してしまう。

 そのたびに、セセギは自嘲していた。完全に混乱しているのだ。アマネの笑顔を保ち、哀しみに陥れたくないという欲求と、自らはアマネには決して愛されていないと突き付けられる苦しみによってである。アマネの力になろうと思うたびに、セセギは痛みを味わっていた。矛盾しているのだ。

 時間は、もう残されてはいない。セセギは焦っている。リンを、アマネの前から消し取らなくては、この問題は解決しないのでは、と危惧している。

 それに、リンをアマネから引き剥がすという行為は、リンを愛しているアマネに辛い経験を課すことでもあった。

 ――だからこそ、早めに成功させないといけないんだ。まだ早いうちならアマネの傷も、そこまで深くはならないだろう。皮膚を裂く傷を負っても時間が経てば治る。でも、リンとの関係が、骨まで達する病魔みたいに侵食していたら……。それを無理やり引き剥がしたら、アマネは立ち直れるか、わからない。

 だが、セセギはその思考を消した。何故なら、アマネが例え壊れてしまったとしても、セセギは一生アマネの傍らで支える自信があるからだ。むしろ、人として壊れてくれたほうが、セセギにとって有難いのかもしれない。アマネが、セセギを生きる上で絶対に必要としてくれたら、それはセセギには大変嬉しい結末であった。

 その未来を想うと、セセギには笑みが零れた。


「おーい、何笑ってるの?」

 唐突に声を浴びせられ、セセギは仰け反った。さっと辺りを警戒しながら見回すと、目の前に、一人の女性が立っていることに気づく。

「わ、腸辺か、驚かすなよ……」

 腸桐辺、通称――腸辺が、ギラギラと輝く太陽を背に、セセギを見下ろしていた。腸辺は人間としてあまりに影が薄いことで有名で、思考に集中していたとはいえ、セセギは目の前に近づくまで存在を把握出来なかったのは、そのためである。

「んー、あたしは驚かしてなんかいないよ。セセギが勝手に驚いたのよー」

「何か用?」

「ほれ、これ」

 腸辺の手には、串焼きがいくつも盛られた皿があった。「もう無くなっちゃうよー。今、皆凄い勢いで食べているから、いくつか持ってきた。食べて無いでしょ?」

「ありがとう」

「セセギ、女子の水着を眺めているからって、ニヤニヤしないほうがいいよ」

「ち、違うよ。思い出し笑いだから、関係無い」

「へー、んじゃ、そういうことにしておこうかな。あ、そっか、アマネちゃんもう帰っちゃうみたいだからね、セセギはもう興味無いのかなー」

「え、帰るの? まだ一時間も居ないだろ?」

 セセギがそう問うと、腸辺は驚いた。「ありゃ、知らなかったの? 用事があるんだってさ。今日も、この子を連れてくるために、寄っただけなんだって」

「この子?」

 すっと腸辺が身を横へずらすと、セセギの瞳に、一人の少女が映りこんできた。途端に、セセギは息を飲み、ぐっと拳を固めた。――いつでも殴れるように。

 極立ぴかリ、通称――リンが、紙コップを持ちながら、セセギに迫ってくる。

「あの、ジュースです」

「……ありがとう」

 セセギは漏れ出る敵意を零さないように注意しながらジュースを受け取った。

「キトもお肉食べるよねー?」

「あぁ、ちょうど食べに行こうと思っていたところだ。助かった」

 キトは先ほどの姿と一遍し、爽やかに返事を返した。その姿に、セセギは眼を開いて思わず見つめてしまう。

「んじゃ、私はあのブイまでひと泳ぎしてくるかなー、またねー」腸辺は手を上げると、全力で海へ駆けて行った。取り残される、セセギとキト、そしてリン。


「……リンさんは、戻らないの?」

 俺の視界から失せろ! と思いながらセセギはリンに問うた。

「少し疲れたので、ここで休んでいます」と呟き、横にあったテーブルとパラソルが一体化したベンチに座った。セセギは「そう」とだけ口にして、アマネの消えた海を見つめる。セセギは、もうアマネの消えた海に興味は失せ、帰ろうかと考えていた。その時、キトは悠然と立ち上がると、セセギにケータイを差し出す。

「僕もビーチバレーに参加するとしよう! セセギ、ケータイを預かっていてくれ」

「え、うん……。あ、待てよ、俺も……」

「しゃッ! しゃッッ! うぉりゃああぁぁああッ!」

 キトは雄叫びを上げると、全速力で走り去っていった。リンが急接近したことで、脳にナイフを突きつけられたかのように、狂ったのである。

 その瞬間、セセギの持つキトのケータイが光り始めた。画面を覗くと、あのアプリが立ち上がり、文字が浮かび上がった。


レベルアップしました。新たな力が付属されます。

【システムJK  ver.16‐18】

 16‐18(JK)の水着とリンクしたことで発動する。これによって、一つの時間軸上で時間を戻すことが可能となる。

『――何回、何十回、何百回、何千回、何万回……何無限回。とびっきりのJKなら、繰り返しみたいものだ。 キトの心の叫びより』


「フ、フレイバーテキストつき……」セセギが呆れたと同時に、ビーチバレーでは、また異変が起きていた。


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