二十一話 恐怖
▲極立ぴかリ▲
……うん、アマネの通った道を進みましょう。きっと、アマネに出会えるはずです。本当はセセギ君を探したいのですが、見当たりません。あぁ、強引にアドレスを聞き出しておけばよかったです。
私の前に、茶色に汚れた壁があります。アマネの後を追ったはずなのに、行き止まりでした。一瞬パニックに陥りますが、ふと下がると左右に道が伸びていました。なるほど、アマネはこのどちらかへ向かったのですね。私も……進めません!
何故なら、左右の道から、それぞれ男性が近づいてくるからです。細い道で、男性の横を通り過ぎるのには勇気が要ります。私はゴクリと唾を呑み込み、左の道へと進みました。体を横へ反らして、道を譲って頂けることを期待して。しかし、その男性は逆に、手を広げて私の侵入を拒みます。ニタニタと笑顔を浮かべてです。私は怖くなり、反対の道へ進みましたが、これまた腕を伸ばして私を元来た道へと追いやります。
更に困ったことが、私は壁を背にして、行き止まりに追いやられてしまいました。この状況は、とても危険です。二人は壁のように道を塞ぎ、五メートルほど先で、私を舐めるように見つめてきます。一人は汚らしいジャージを着て、四十歳ほどかと思いますが、妙な幼さを感じます。もう片方は、ほとんど黒色に汚れた上着に、ボロボロのジーンズを穿き、油でネトネトになった髪が、柳の枝のように垂れていました。
この二人は、【極限! 無慈悲慈愛】によって狂わされてしまったのでしょうか? ……いえ、それでしたら、私に危害を加えるような行動を取ることはありえません。私の周りで全力を振り絞って己を解放するだけで終わります。しかし、この二人からは……とてつもない生理的嫌悪感を受けます。この距離からでも、腐った牛乳のような腐臭が鼻を突き、吐き気と鳥肌が同時に襲ってきました。自然と涙も出てきます……。
ぐッ、と歯を食いしばり、私は二人の間を突き抜けるように走りました。しかし、ジャージの男性が私の腕を掴むと、簡単に吹き飛ばされてしまいます。
「きゃああああああああああああああああああ!」
砂塵が舞い、ゴロゴロと転がり口に砂が入り、何度も唾を吐き出します。滑稽な私を見下し、二人は大変愉快に笑い声をあげました。その姿が恐ろしくて、私の体がガタガタと揺れます。歯が、カチカチと鳴っていました。そして、近づいてきます。こ、これは、確実に緊急事態です。本当に私が、危険です。えぇと、嘘ですよね? 二人はバラエティ番組のドッキリ企画のように、私を驚かすだけですよね? うわぁ、ねぇ……ちょっと、辞めて、辞めて、……来ないで……。ごめんなさい、私がアマネの最悪な未来を熱望していた罰でしょうかアマネは私を友達と接して私もアマネを一番のいえ唯一の友達として接していたはずなのに私はアマネを信じているどころか否定しているそれもセセギ君が私を愛する、なんて絶対に叶わない夢のためにですだからこうして天罰が下るのです受け入れるしかないのでしょうかあぁぁぁっあぁぁあああああぁあやだやだこわいたすけて「誰か助けてくださいぃいいいいいいいいい!」
誰も来ない。
誰も来ない。
誰も来ない。嘘嘘嘘嘘ッ!
いやぁああああああああああああああああああああああああああああああ!
セセギ君セセギ君セセギ君が颯爽と助けに来てくれますよね漫画の読みすぎ? そういうつまらない冗談は余所でやれとセセギ君は冷たく私に言うかもしれません……他力本願で何でも駄目な私で助けてください恐いよ恐いよ恐いよぉおおおおおお母さんお父さん助けてぇえぇええええええ声がもう出ません恐いよ、セセギ君、ごめんなさい。