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三、不健康! 4

「不健康で不健全ね、マケトシ! いきなりどっか遊びにいこうだなんて!」

 デイトレードに異様な才能を発揮した少女――香川魅優が、揺れる電車の中で興奮を押さえ切れないと言った感じで叫び上げる。

 はしゃぐ魅優の目の前を、景色がゆっくりと横に流れていく。

 魅優は電車のドア窓の外を覗き込みながら、停車の為に減速を始めた列車の先を見つめた。

「いいだろ、別に。あれだけ頑張ったんだ。明日から為にも、英気を養わないとな!」

 つり革につかまった貧乏学生にして不幸をその身に集めに集めた加納勝利が、同じく窓の外から陽の光が傾き始めた街の景色を見る。

 勝利達を乗せた列車は駅の端に丁度かかり始めていた。

「それにきゅう姫に聞いたらさ。何も現金を差し出すことが、課題をこなすことじゃないってよ。少しぐらいなら無駄に贅沢をすれば、それはそれで相手から財産を巻き上げたことになるってよ」

「そうなの? きゅう姫ちゃん?」

「うん。あんまり割合が増えると、カウントされないけど。無駄な贅沢は、巻き上げたことになるよ」

 つぎはぎだらけの巫女さんの貧乏神の少女――九条院きゅう姫が、困った顔をして魅優に答えた。

「だろ! だったら、これはきゅう姫の課題の為だ! これは必要な贅沢なんだ!」

「大将! いいこと言った!」

 同じくつり革にこちらは両手でぶら下がりながら、疫病神少女覇狼院祭が足をばたつかせてはしゃいでいる。

「ちょっと、祭ちゃん! 迷惑だって!」

 そんな祭を止めようと、きゅう姫がオロオロしながら手を伸ばした。

 列車が駅に到着し、静かにドアが開く。

「着いたわよ! 私達の目的地! テーマパーク!」

 魅優が先陣を切って電車を降りた。ドアから飛び出し両足で着地するはしゃぎっぷりだ。

 勿論今きている服も全身フリルとリボンの洋服。飛び出した魅優の勢いに揺られて、フリルとリボンがフワフワと揺れた。

「まだ不運にも駅に降りただけなのに、この興奮! 半端ないな! テーマパークとやらわ!」

 停車寸前までぶら下がっていたつり革から飛び降り、祭はその勢いのままにドアの外に飛び出た。

「お前はいつも興奮しっぱなしだろ?」

「もう、祭ちゃんたら……」

 勝利ときゅう姫がその後に続いた。

「……」

 フードを目深に被り全身から負のオーラを発している死神少女――吉祥院マヤが無言で最後に降りた。その目はいつもの半目だが、どうにもいつも以上に陰の気が渦巻いている。

 死神の鎌は小さくしているのだろう。勝利を散々突いた妖しい鎌は外側からは見受けられなかった。

「ふふん。きゅう姫ちゃん。そんな冷静な様子でいいの? ここはUSO! テーマパークなのよ!」

「USO?」

「そうよ! USO! UNBELIEVABLE STUDIOS OSAKA――アンビリーバブル・スタジオ・オオサカ! の頭文字よ!」

「あれが……俺達貧乏人の憧れの場所、USO……」

 勝利が駅からでも覗き見える、テーマパークの姿に息を呑む。

「そうよ。ここを訪れたゲストは誰もが、『ウソーッ!』『信じられない!』と、驚きの声を上げると言うわ!」

「もちろんそう言っているのは、不運にもテーマパーク側なんだろうけどな!」

 祭が駅の向こうに広がるテーマパークをもっと見ようとしてか、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねる。

「いくわよ! 不運にも夕方からだらね! 時間がもったいないわ!」

 魅優が率先して改札に向かった。

「むむ! それはアタイの台詞!」

「何だよ。結局魅優もノリノリじゃないか」

「あはは。仕方ないな」

 魅優に続いて勝利達も改札に小走りで向かう。

「……」

 はしゃぐ四人を余所に、マヤはやはり無言だった。少し遅れて歩いて改札へと向かう。

「どうしたの、マヤちゃん?」

 そんな様子にきゅう姫が立ち止まる。

「別に……少しでもお金は大切にしないとと思っただけよ……」

「でも、もう後少しだし?」

「だから……今後の為にも……その、少しでも沢山稼いでおかないと……」

「そうだけど……これぐらいは……」

 言いにくそうに口を開くマヤの顔を、きゅう姫が不思議そうに覗き込んだ。

「そういや、出かける前もぐずってたな、マヤは」

 祭がわざわざ戻ってきてマヤの首に手を回して肩を抱いた。

「不運にももう着いちまっただろ? それに大将の言う通り! ご褒美がある方が、仕事にはせいが出るって!」

 祭はそのままマヤの肩を強引に引っ張ると、二人して改札を一度に通ろうしてバーに道を阻まれた。

「おお! 不運にも機械ごときに、行く手を阻まれた!」

 何処までもはしゃぐ祭に対して、

「……」

 その腕の下でマヤはフードを更に目深に被り直してその表情を隠した。

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