三、不健康! 18
崖に取り残された勝利は、魅優の通報で駆けつけたレスキューに助け出された。
「マケトシ……」
一通り事情を聞かれた二人は、午後になってやっと解放された。くたくたになって勝利のボロアパートに二人は戻ってきた。もう既に半日過ぎており、夕日がアパートに差し込み始めていた。二人は西日に照らされるポロアパートを見上げた。
「大丈夫だよ。足りるってきゅう姫は言ってた。大丈夫!」
勝利が自分に言い聞かせるように言う。
「そうね……大丈夫よね……今はきゅう姫ちゃんの言うことを、信じるしかないないわよね……」
魅優は言葉に詰まる。
「……でも、短い夢だったわね」
「はは……何て言うか、わらしべ短者だな」
「海の見える豪邸……憧れだったのに……」
「悪い悪い。まぁ結局このボロアパートの方が、お似合いってことだな」
「嫌なら住むな」
「意地悪言うなよ。家賃はちゃんと……あっ!」
勝利があちこちのポケットを触りながら、驚きに目を見開いている。
「何よ?」
「もしかして俺……全財産失った?」
「あっ? そうだわ……最初からあった貯金もだわ……」
「じゃ……じゃあ……」
勝利がぎこちなく魅優に振り返る。首の骨が軋む音が聞こえるかのようだ。
「出ていってもらおうかしら……」
「意地悪言うなって! いや真面目な話。家賃待ってくれ!」
「近寄らないでよ。貧乏がうつるわ」
「こらっ! あからさまに、距離とんな!」
「一文なしなんでしょ? 一文なしの甲斐性なし。空気感染したらどうしてくれんのよ?」
「ひでぇ言様だな」
「大丈夫。きゅう姫ちゃんが遊びにきたら、新しい人生が歩めるように、私が相談に乗ってあげるから」
「もう過去の人か? 鬼! 悪魔!」
「鬼? 悪魔?」
魅優が見下ろすように体をそらせて、上から勝利をねめつける。
「誰が今、マケトシの生殺与奪の権を握っていると思ってんの? 家主である、私の両親説得するのは、誰かしら?」
「う……」
「さあ! 私のことを何と呼ぶべきかしら?」
「め、女神様……」
勝利ががっくりと肩を降ろした。
「あはは。よろしい。私が空から降ってきたら、受け止めるように」
魅優がその勝利の様子に、弾けたように笑った。
「じゃあね! きゅう姫ちゃんが、戻ってきたら直ぐに知らせなさいよ!」
「おう!」
勝利は手を振って魅優と別れる。
一人で鉄製の階段をカンカンと鳴らしながら、勝利は久しぶりのアパートのドアを開けた。
そこにきゅう姫がいた――




