荒廃世界の機械人
――わタシはモウ、にンゲンじゃナイ――
荒廃した世界。
全てを焼き尽くした戦争。
わたしの身体は改造されて、もはや生体部は18%しか残っていない。
自分の意志で動かせない。
動くものを捕捉。
敵か味方を識別して、味方の識別信号が発せられていなければ無条件で破壊する。
ただそれだけの人形。
けれど、それももう終わり。
もうすぐ最後の動力も無くなり、ただの鉄クズとなる。
複合型音源センサーが音声を認識。
圧倒的速力で身体が動き音源へと駆け付ける。
光学センサーにて対象を認識。
大型野犬の群れと一人の少女。
味方の識別信号なし。
――敵も味方も滅んだこの世界で、味方の信号など存在する訳はない。
少女に襲いかかる大型犬。
高速で動く目標物を光学センサーが捕捉。
拳が反射的に大型犬を捉えて吹き飛ばす。
別の一匹。
わたしの腕に向かって跳びかかる。
すぐさま正面へと蹴り飛ばす。
初速が圧倒的に違う。
蹴り飛ばした後ろからもう一匹が躍り出る。
それと同時に背後から二匹が襲いかからんとする。
さらに一際大きな一匹が少女に対して、その顎を開いた。
――わたしの身体は、最も効率よく敵を殲滅するように動く。
後ろに小さく跳び、背後の二匹を踏み台に前の一匹を蹴り飛ばす。
その方向は少女の目の前、
大きな一匹の口の中。
着地後すぐに、体勢を立て直し、野犬を吐き捨てた一際大きな一匹の眼前に立つ。
――奴がわたしを認識するより速く、わたしは拳を突き上げた。
飛び散る肉片。
実にあっさりと戦闘は終わった。
わたしの前には小さくなって震える少女。
光学センサーが対象を捕捉。
味方の識別信号なし。
わたしは腕を大きく振り上げて――――
――振り下ろ、
ギィと小さく金属音。
…………
わたしの身体は動きを止めた。
――消える意識で最後に思う。
――――ワタシはマダ、にンゲんダッタ……
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