第6話 生活の跡
拠点での朝と、スキルの検証
明け方、森は静寂に包まれていた。しかし、それは決して安心できる静けさではない。
「…うぅん」
坂本は、全身の痛みと、深い眠りに入れなかったことによる疲労感で目を覚ました。光る苔の青白い光は、夜が明けるにつれて薄れ、洞窟の入り口の木の幹の隙間から、わずかな朝の光が差し込んでいた。
昨夜、真鍋と身を寄せ合って眠った体温の余韻が、まだ背中に残っている。
(…あぶねぇ。昨日は極限状態だったから、おかしなことは考えなかったが…)
坂本は、洞窟の外が気になり、静かに木の幹を押し開けた。
外の気配探るが、所詮は素人。恐る恐る、外に出ると、ひんやりとした朝の空気が肺を満たす。
「…あっ」
すぐ近くで、サラサラと水が流れる音が聞こえた。
「川だ…!」
坂本は、音のする方へ注意深く進んだ。数十メートル離れたところに、清らかな水が流れる小川を見つけた。
そして、川岸には、石を積み上げて作られた、簡易的な炉の跡も…。
(誰かの生活の跡だ…。)
「坂本君!」
遅れて咲希も洞窟から出てきた。彼女もまた、森の物音や獣の遠吠えに怯え、眠りは浅かったようだ。
「おはよう、真鍋さん。ここを見てくれ」
坂本は、川と炉の跡を指差した。
二人は、水筒に水を満たし、洞窟に戻って、カバンに入っていた硬いパンと、水で朝食を済ませた。味は相変わらずそっけないが、飢えを満たすには十分だった。
川で顔を洗い、硬いパンを齧りながら、坂本と咲希は互いに視線を交わした。
夜を越えた安堵と、この先の不安が混ざり合った、複雑な表情だ。
「そう言えば、昨夜の声、『スキルを授与します』って…」
咲希が硬いパンを飲み込んで言った。
「ああ。『AIアシスタント』と『魔力の源』」
坂本は、ナイフを磨きながら答えた。冷静に振る舞っているが、彼の心は、この未知のシステムを解析しようと躍っていた。




