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AIアシスタントと行こう!異世界テンプレ記  作者: tomo
☆第2章 冒険の幕開け
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第25話 能力

天気の良い昼下がり。

窓から差し込む陽光が、応接室の重厚な木目調のテーブルに柔らかな模様を描いている。

ユタル老師が気を利かせて席を外した室内で、ライカは一人、冷めかかった紅茶を口にした。


これから二人に伝えねばならない”厄介な事情”をどう切り出すべきか。

伯爵という地位にあっても、これほど言葉選びに苦慮することは稀だった。


扉が開く。


「ライカさん、お久しぶりです」


「坂本君、久しぶりだ。……ああ、真鍋殿も」


ライカは立ち上がり、穏やかな笑みで二人を迎えた。


「その後、ここでの生活はどうかな? 何か不自由なことはないか」


「いえ、老師がこの世界につて色々教えてくださっていますし、街の方も親切な人ばかりで、毎日が新鮮ですよ。ねぇ、真鍋さん」


「お久しぶりです、ライカさん。私も……えっと、よくして、いただいてます。ありがとうございます」


たどたどしいながらも、AIアシスタントなしで言葉を紡ぐ真鍋に、ライカは目を見開いた。


「おお、だいぶ話せるようになってきたな! 素晴らしい。……今度はエリスも連れてこようか。あいつも貴方に会いたがっていたよ」


「本当ですか! ぜひ、よろしくお願いします」


真鍋の顔がパッと華やぐ。だが、ライカの表情には、一瞬だけ複雑な影が差した。


「……あいつだけが会いたがっているなら、良かったのだがな… 」


「ライカ殿、用件と言うのは例の【真理の乙女】の件かな?」


ユタル老師が、ソファに深く腰掛けながら尋ねた。ライカは重い溜息とともに頷く。


「はい、老師。……事態は、私の想像以上に面倒なことになりつつあります。

私の元へ、自称【真理の乙女】の信者を名乗る者たちが、連日のように押し寄せているのです。彼女に会わせろ、と」


「…まだ、言ってるんですか」


坂本が眉をひそめた。

ライカは何度も

「彼女は女神ではない。強力な力を持つ一介の少女だ」と説明を繰り返してきた。

しかし、一度火がついた信仰心は止まらない。


あの日、領都で肌で感じた

”人ならざる圧倒的な圧力”

その恐怖と畏怖が入り混じった実体験が、彼らの深層心理に【神格】としてこびりついて離れないのだ。


「たちが悪いことに、信奉者の中には、王都の貴族社会でも相応の顔の利く者も多く含まれており、私でも、力尽くで追い返すには限界がある……。

そこで、私の副官とも相談したのだが……」


ライカは意を決して、坂本と真鍋を真っ直ぐに見据えた。


「一度、彼らと直接会ってはもらえないだろうか? 私の館へ彼らを招待し、公式な形で顔を合わせる。

君たちの意思を直接示し、彼らを納得させる。

……それが、現状で最も被害が少ない解決策だと思っている」


「……なかなか、どうしたものかな」


坂本は顎に手を当てた。真鍋も不安げに坂本の袖を掴む。


「……彼女を、呼んでもいいですか?」


「ああ、もちろんだ 」


ライカが頷く。


「AIアシスタント、具現」


室内の空気がわずかに振動し、坂本のすぐ傍らに、粒子が収束するように一人の女性が姿を現した。

黒髪を後ろできっちりと束ね、この世界には存在しない「スーツ」という機能美に溢れた衣服を完璧に着こなす女性。

知的で清潔感があり、その瞳には一切の無駄がない。


『坂本様、何かお手伝いできることはありますか?』


年頃、24歳のアイは、落ち着いた声で一礼した。


「アイ、ありがとう。

ライカさんの相談に乗りたいんだ。真鍋さんも会話に入れるよう、ライカさんと老師に言語共有を頼めるかな?」


『かしこまりました。システム同期プロセスを開始します。対象者二名……脳内確認メッセージに、意識下で「はい」と回答してください』


ライカと老師が頷く。

一瞬、頭の芯が冷たくなるような感覚が走り、直後、真鍋の言葉が「意味」として直接脳に流れ込んできた。


「もー、本当にチートよ! 坂本君だけずるいってば…。

あ、アイさんの悪口じゃないからね、感謝してるからね!」


真鍋が唇を尖らせる。

スキルの熟練度が上がったおかげか、最近ではこうしてアイを具現化できるようになった。

坂本のチート性能を再認識させられる瞬間でもある。


『……坂本様。接続完了、および周辺データの共有を完了しました。現状の政治的リスク、および真鍋様の精神的負荷を考慮した具体案を提示します』


アイは手に持ったバインダー(のような仮想インターフェース)を指先で弾いた。


「いつ見ても、不思議な現象じゃのう……。ノボルよ、お主も相当に人外じゃぞ」


ユタル老師が苦笑するが、アイは表情を一切崩さず、事務的なトーンで告げる。


『ライカ様の提案通り、一度「場」を設けるべきです。

ただし、真鍋様を【女神】として確定させてはいけません。

彼女を、遠き神域の意志を現世に伝える【女神の使徒】として格付けし直します』


「使徒……?」


『はい。神そのものであれば国に縛られますが、使命を帯びた「使徒」であれば、その役目を果たすために移動する自由が担保されます。

単なる対面ではなく、こちらが主導権を握るための「演出」を行います。

ライカ様、老師。会場の設営と招待客の選別について、以下の条件を遵守してください』


アイのテキパキとした指示が、応接室に響き渡る。


「……よし。アイ、その方針で行こう。そうすると――」


坂本も、話を詰めて行く。

真鍋も頷く。


騎士と、魔導士、そしてAIと少年少女。

奇妙な顔合わせによる「作戦会議」は、夜が更けるまで続けられた。


そして、作戦名【真理の乙女作戦】の幕が開けることとなった。



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