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AIアシスタントと行こう!異世界テンプレ記  作者: tomo
☆第1章 異世界サバイバル
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閑話 過去と今(地球編)

”俺は”、坂本昇。

しがない高2のモブ”だった” …。

目立たず、騒がず、波風を立てずに穏便に過ごしていた”はず”…。しかし、今となっては、そんなこだわりはどうでもよくなっていた…。


霜の降りた、少し刺すような空気の朝。

通学路を一人で歩いていると、後ろから軽やかな足音が追いかけてくる。


「坂本君、おはよ。今日寒いね」


振り返れば、そこには冬の朝の光を反射して輝く、真鍋咲希がいた。


「真鍋さん、おはよう」


「1限から古文の授業なんて、何かの呪いじゃない? 絶対意識飛んじゃうよ」


「あはは、確かに。あの抑揚のない音読は、強力な催眠術だよね」


なんてことのない、他愛もない会話。けれど、周囲の視線は他愛なくはなかった。


あの資料室での出来事以来、真鍋さんは、何かと俺に頼み事をするようになっていた。

学校トップクラスの美少女が、地味なモブ男子と親しげに歩いている。それだけで、登校中の生徒たちの視線が「刺さる」のがわかる。

以前の俺なら、その視線に耐えかねて逃げ出していたかもしれない。

けれど、今の俺にとってそんな外野の逆風は、そよ風のようなものだ。


(彼女と友達になる。このことが、これほどワクワクすることだとは……)


あの時、資料を運んでよかった。そして、勇気を出して言葉を交わしてよかった。


坂本昇は、彼女に恋をしていた。


教室に着くと、案の定、親友の宮下が机を叩いて詰め寄ってきた。


「坂本、今日も真鍋さんと一緒って……。最近どうしたんだよ お前!?」


「……。あはは、何となくかな。でも宮下、ありがとうな」


「その余裕がムカつく! ありがとうって何だよ! 俺だって真鍋さんと仲良くなりたいっつーの!」


悔しがる宮下と下らない言い合いをしていると、他の生徒たちからも、自然と声がかかるようになった。


「昇、今日のテストの範囲、どこだっけ?」

「坂本君おはよー。消しゴム貸してくれない?」


真鍋さんとの接点がきっかけで、俺の世界は急速に広がり始めていた。かつてのモブキャラとしての殻が、内側から壊れていく。

だが、俺がこの変化を平然と受け入れられているのには、理由があった。


(……あっちの世界で生きていくには、良好な人間関係が必要不可欠だったからな )


ふと、意識の底に沈んでいた”過去”の記憶が、鮮明な映像となって蘇る。


—---


「ノベル、いつもありがとねぇ。助かるよ」


「いいって。任せてよ、院長先生」


そこは、アルサーク王国の西の端にある、小さな町の孤児院だった。

年老いた女性…、院長先生の前で、少年だったノベルは誇らしげに胸を張っていた。

孤児院の運営は、常に崖っぷちだった。貴族からの寄付は微々たるもので、二十人近い子供たちが食べていくには到底足りない。

だから、俺たちは生きるために必死だった。

年上の子が下の子の面倒をみる、そして十歳で教会で【スキル】を授かれば、すぐに冒険者ギルドで雑用の仕事を受けた。そうして稼いだわずかな報酬が、みんなの明日を繋ぐ糧になった。


ノベルには、そんな孤児院に、マーサという”妹”がいた。

妹といっても、血は繋がっておらず、正確な年齢すら分からない。けれど、俺にとっては誰よりも大切な存在だった。


「マーサ、ただいま。今日はみんなとうまくやれた?」


俺が仕事から帰ると、彼女はいつも真っ先に駆け寄ってきて抱きついてきて、俺の匂いを嗅ぐ。そして、一通りの”安心”を得ると、


「ノベルにい、おかえり。

…みんなとは、普通。

今日は、嫌なことされなかったよ」


「そうか。それはよかった。じゃあ、残りの掃除、手伝うよ」


俺が手を貸そうとすると、マーサは首を横に振った。


「だめ。これは私に与えられた仕事。ちゃんと働かないと、ご飯食べられなくなる…」


「……マーサ」


俺に手伝っていることをみられれば、また嫌がらせの元となることを恐れているのだ。


彼女の苦みの原因は、その”見た目” にあった。

マーサの容姿は、あまりにも整い過ぎていたのだ。

ゆえに、孤児院の中では異彩を放つ。

成長期の男女が肩を寄せ合って暮らす閉鎖的な環境。

可愛い子にちょっかいを出したい男子と、それに嫉妬して陰湿な嫌がらせを仕掛ける女子達。

マーサは、その美しさゆえに孤立し、それを見かねた俺が、持ち前のコミュニケーション能力と、時には拳で仲裁し、彼女の居場所を作り続けた。

そして、彼女は俺にだけは心を開き、俺もまた、”妹” を守ることを生きがいにしていたのだった…。



「おい、坂本! 大丈夫かお前? そろそろホームルーム始まるぞ」


宮下の声が、遠い異世界の空気を消し飛ばし、視界が現代の教室に戻る。


(……マーサ。あの後、あいつは無事に逃げ切れたんだろうか? )


俺の、あっちの世界での最後の記憶は、追ってから逃れるため、森の中を彷徨っていたところで途切れている…。

マーサを置いて、自分だけがこんな平和な世界に来てしまった。

胸を締め付けるような罪悪感と、どうしようもない無力感が心を支配する。


俺は、窓の外の青空に目を向け、心からの祈りをそっと送った。



妹との逃避行。貧しいが、生活出来ていた孤児院からなぜ逃げなければならなかったか?

その理由は、またの閑話の中でわかるかな?

次回から第二部を始める予定です。

よかったらまた見に来てね。

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