表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【毎日投稿】全てを奪われた元王子、仮面の軍師となり、暗躍無双して復讐を誓う  作者: 三日月猫@剣聖メイド1〜4巻発売中!


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/28

14歳ーリリエット警護任務編 第27話 王子グレイスと烏の爪の団員たち


「―――我が名はグレイス・フォン・ランベール。亡き先王ガイゼリオンの嫡子にして、烏の爪の団長レイスである。久しいな……我が師、ギルベルトよ」


 俺のその言葉に、目の前に立つギルベルトは、唖然とした表情を見せる。


 他の者たち……烏の爪の団員たちも同様に目を見開き、呆けた顔で俺のことを見つめていた。


「……え? グレイス・フォン・ランベール……? どういうこと? それって、先代の王様の子供の……王子様の名前だよね……? ジェイク、これ、どういうことだと思う?」


「オ、オイラに言われても分からないよ!」


 マリーゴールドとジェイクは目をグルグルと回し、混乱した様子を見せる。


 そんな中、アビゲイルは祈るようにして手を組み、恍惚した表情でポソリと、開口した。


「……すごい。私にとってレイスさんは、こんな駄目駄目な私を導いてくれた、絵本の中の白馬の王子様のような存在でしたが……本当に王子様だったんですね……素敵……」


「ちょ、アビー!? 目をハートにしている場合じゃないでしょ!? レイスくんが王子様ってことは、その、つまり……!」


 マリーゴールドがアビゲイルに突っ込みを入れていた、その時。


 モニカがこちらに近寄り……俺の前に、膝を付いてきた。


「もしやと思っていましたが……やはりレイス殿はグレイス殿下であられましたか。改めまして、私はモニカ・ルイ・ユースディアと申します。先王ガイゼリオン様に仕えていた親衛隊騎士の、嫡子でございます。本来、私は、グレイス殿下にお仕えする予定の騎士でございました」


 モニカのその言葉を聞いて、慌ててガウェインが、こちらにやってくる。


 そして彼はモニカの隣に並び、同じように地面に膝を付いた。


「お、同じく、親衛隊騎士のガウェイン・ウェルザ・アストレアと申します! 本来、俺とモニカ、ルキナは、貴方様の親衛隊騎士になる予定で――おい、ルキナ! 何ボサッとしている! 早くこっちに来い!」


「レ、レイスが……グレイス殿下、だって……? う、嘘だろ……? だってアタシ、あいつに今まで酷い態度を……」


「ルキナ!」


「あ、あぁ!!」


 そう言ってルキナは俺の前までやってくると、ガウェインとモニカの隣に並び、膝を付いてこちらに頭を下げてくる。


「お、遅れて申し訳ございません! ルキナ・フォン・エリニュオスです! そ、その、殿下には今まで、ひ、酷い態度をしてしまい……」


「別に気にしていない。あと、俺はもう王子ではない。楽にして構わないぞ」


「で、ですが……」


「今まで通りで頼む。俺はこの世界では死んだ身となっている。だから……王子グレイスではなく、烏の爪の団長レイスとして扱って欲しい」


「「「はっ!!」」」


 ルキナ、モニカ、ガウェインの三人は勢いよく立ち上がると、胸に手を当て、騎士の敬礼を取ってくる。


 いつも通りにと頼んだのだがな……そこら辺は後でもう一度頼むしかない、か。


「………殿下」


 その時。ギルベルトが、俺に、泣きそうな目を見せてきた。


 そして彼は俺の傍まで近寄ると……ギュッと、俺の身体を抱きしめてきた。


「……よくぞ……よくぞ、ご無事で……! このギルベルト、今以上に安堵した時はございませんぞ……!」


「…………心配、かけたな」


「殿下、申し訳ございません! 私の警護が甘かったせいで、陛下を……ガイゼリオン様を……!」


「良い。第一、あの時のお前は一線を退き、騎士から退役した身だった。あれはお前のせいではない。全ては、ガストンとハデスの仕業だ」


「眼帯をしておられますが、その左目は……いったい……」


 ギルベルトが、心配そうにこちらを覗きこんでくる。


 俺は自分の左目の眼帯を撫で、自嘲気味に笑みを溢した。


「ガストンの奴にくれてやった。何、この借りはいずれ返すつもりだ」


「殿下。今すぐ王国を離れましょう。貴方様がご存命であったなら、私の目的は変わってくる。今すぐ神聖国家に向かい、亡命致しましょう。王国と同盟国であるあの国なら、殿下も安寧とした暮らしを――」


「安寧とした暮らし? いったい何を言っているのだ、お前は?」


「殿下……?」


「俺の中には、死んだ者たちの怨嗟の声が常に轟いている。奴らを蹂躙し、殺し尽くせ、とな」


 俺はチラリと、背後にある林の中に視線を向ける。


 そこには、俺を見つめる、父上とハンナの姿がある。


 二人は血だらけの姿で、俺に、お前がやれと囁いてくる。


 ……そうだ。


 死んだ者の無念は、その意志を引き継いだ者が遂げなければならない。


 俺はギルベルトから離れると、野営地の中央に立ち、仲間たちへと向けて声を張り上げる。


「俺たちは今から別の国へと移動する。だが、先程も言った通り、俺はいずれこの王国に戻り国盗りを行う。今まで黙っていて悪かったが、俺の目的は、再びこの地をランベール王家の手に取り戻すこと。そして、俺を助けるために死んだ、父上や我がメイドのような犠牲者を出さない……強者によって弱者が虐げられない、優しい国を造り出すこと。それが、国を奪われた王子である俺の目的だ」


 俺は深呼吸した後、烏の爪の皆に向けて、再度、口を開いた。


「今一度問う! 烏の爪の団員たちよ! 俺と共に理想を追いかけ……王国に戦争を仕掛け、世界を変える意志はあるか!」


「「「はっ!!!!」」」


 ルキナ、ガウェイン、モニカの3人は即座に返事を返し、敬礼する。


 その後、アビゲイルも、すぐに開口した。


「わ、私も、レイスさん……いえ、レイス様に従います。貴方について行って間違ったことなど、一度もありませんから……!」


「や、ちょ、アビー、それって妄信なんじゃ……まぁ、いいけどさ。私も、レイスくんについて行くよ。私には世界を変えるとか、そんな大きな夢はないけど。でも、レイスくんにはたくさん助けられたから。君の力になりたい」


 そう言って微笑むマリーゴールド。


 そんな彼女の横に立つジェイクも、笑みを浮かべ、開口する。


「オ、オイラも! レイス……じゃなかった、殿下にはたくさん助けられたから! ついて行かない選択肢はないって!」


 ジェイクの言葉に皆が笑みを浮かべた後。


 最後の一人、ルーカスに、視線が集まる。


 その視線に、ルーカスはため息を吐いて後頭部を掻いた。


「……てめぇら、分かってんのか? レイスが王子だった以上、俺たちは単なる反乱軍ではなく、ランベール王国正規軍という名目で、相手に戦争を吹っ掛けることになるんだぜ? こっちの神輿は先代王家の王子様だ、ガチの戦争になるのは免れない。この中から死人が出る可能性だってある。いや、この少人数で王国騎士団と戦争なんてしたら、間違いなく全滅だろうな。一人も生き残れねぇよ」


「無論、俺もこの少人数で戦争を仕掛ける気はない。各国を回り、王国に対抗する兵を募るつもりだ」


「だとしても、お前の理想と復讐のせいで、俺たちは戦場に立たされるんだ。これは、今までやってきた傭兵稼業とはレベルが違う。相手は犯罪者ではなく、国そのものなんだからな」


 そう口にして、俺とルーカスは無言で睨み合う。


 そんな俺たちの間の空気に、皆が、緊張した面持ちを見せた後。


 ルーカスはフッと笑みを溢し、目を閉じた。


「……と、ここまで危険性を語っても、じゃあ脱退するって奴は出て来ねぇか。良いじゃねぇか。ただの孤児の集まりだったのに、随分と一端の戦士になったもんだ」


「え? ルーカス?」


「悪いな、お前らを試した。この先、レイスの秘密を知って、もし脱退するって奴がいたなら……始末しなきゃいけねぇって考えてたからな。勿論、俺もレイスに従うぜ。どのみち王国に残ったら指名手配は免れねぇんだ。妹のような犠牲者を出さない世界……お前なら作れるって信じてるぜ、レイス」


 てっきり、ここで烏の爪を脱退するのかと思っていたが……ルーカスは誰よりも覚悟が決まっていた、ということか。


 俺はルーカスの言葉にフッと鼻を鳴らし、皆に向けて口を開く。


「ありがとう。お前たちを信用して、正体を明かして良かった」


 俺の言葉に、笑顔を見せる烏の爪の団員たち。


 そんな中、ギルベルトが慌てて、俺に声を掛けてきた。


「で、殿下! まさか、王国に戻ってくる気なのですか!? なりませんぞ!! 私は反対です! 殿下はこのまま神聖国家の保護を受けて、安全な暮らしをお送りください! 神聖国家の聖王は、ガイゼリオン様とは旧知の仲。ですから……!」


「仮に、俺が神聖国家で保護された生活を送ると仮定して……その後は、どうなると思う?」


「……聖王のご息女は、殿下と同じ歳だと聞いております。恐らく殿下の身の安全を保障するために、聖王は、ご息女と殿下の婚姻をお勧めになられるでしょう。そうなれば、聖王家の身内となり、殿下は神聖国家の人間となる。ガストンも無用な手出しはできません。神聖国家側も、騎士王家の血は、欲しいと思いますから……その可能性が高いかと」


「神聖国家の聖王女の婿となる、か。それは自由のない、籠の中の鳥となれと言っているようなものだな」


「ですが……安全性は最も高いです」


「何故、安全と言い切れる? サイラスから聞いた。ガストンは、この大陸全土を支配する気でいると。ならば、各国を吸収し、聖王国にもその手を伸ばす可能性が高い。今は、森妖精族(エルフ)の国に侵攻していると聞いているしな。神聖国家の婿となっても、一時の平和に甘んじるだけだ」


「そ、それは……」


「俺は、絶対に理想と復讐を遂げてみせる。籠の中の鳥にはならない。何故なら俺は、夕闇を翔る自由なカラス、なのだから」


「で、殿下、ですが……! ゲホッゴホッ!」


「ギルベルト様!」


 モニカが慌ててギルベルトに駆け寄り、彼の背中を摩った。


 ギルベルトはこちらに顔を向けると、悲しそうな表情を浮かべる。


「殿下。私は今まで、陛下と殿下を奪った、ガストンへの復讐心だけで生きてきました。各地で反乱軍を募り、東西南北の関所を守る騎士団長……四聖騎士団に戦いを挑みましたが、歳のせいか御覧のありさまで。命を賭けることでしか、贖罪を果たす方法が無かったのです」


「……」


「ですが……殿下が生きていると分かった今、私は何を捨てでも、貴方様を守らなければならなくなった。私には……もう、時間が……」


「レイス様!」


 その時。人質であるリリエットを連れたサイラスが、慌てた様子で戻ってきた。


 俺は仮面を被り、サイラスに声を掛ける。


「どうした、サイラス」


「た、大変でございます! 遠くの方から、大量の……スケルトンの群れが!!」


「魔物……アンデッドだと!?」






      ◇  ◇  ◇  ◇  ◇







「くふふふふふふ。烏の爪……まさか、まだガストン様に歯向かおうとする者がいたとは」


 烏の爪の団員たちが野営地を開いた場所から、数十メートルの距離がある崖の上。


 そこで魔導士ハデスは、杖を地面にカンと叩きつけ、笑みを溢す。


「さて。我が下僕たちよ。反乱軍たちの息の根を止め、リリエット様を奪還せよ」


 その言葉に、地面から這い出てきた……錆びついた剣と盾を持った骨の軍勢は、のしのしと、野営地へと向かって侵攻を始めるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ