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【第93話:黒鉄の散華】視点:ガルド

【タイムリミット:残り45分】


「愚かな」


ザガンが手をかざす。

床から巨大な水晶のゴーレムが出現し、ガルドに襲いかかる。


「カイ! エルナ! 走れ!!」


ガルドは叫びながら、ゴーレムの懐に飛び込んだ。

一閃。豪快な斬撃がゴーレムの腕を砕く。


「おっさん! 何言ってんだ! 一緒に……!」


「邪魔だと言っている!!」


ガルドは振り返らずに怒鳴った。

その目には、カイが見たことのない「優しさ」があった。


「ザガンの本体を守る障壁バリアがある。

あれを破るには、私がこの場のエネルギーをすべて引き受ける必要がある」


「な……!?」


ガルドは懐から、一つの魔道具を取り出した。

要塞の区画を強制閉鎖する、緊急隔壁の制御装置だ。


「カイ。

……かつて、リーゼ様がお前を逃がした時。

私はそれを『弱さ』だと笑った」


ガルドがボタンに指をかける。

天井から、分厚い隔壁が降りてくる。

ガルドとザガンをこちらの部屋に残し、カイたちを奥の通路へと押し出すように。


「だが、今ならわかる。

あれは……『強さ』だったのだな」


「やめろ! ガルド!!」


カイが隔壁に駆け寄る。


ガルドはニヤリと笑った。

それは、騎士団長の仮面を脱ぎ捨てた、ただの武人の笑顔だった。


「勘違いするな。貴様を助けるのではない。

私の汚れてしまった騎士道を、最後に少しだけ磨き直したいだけだ」


「クソったれがぁ!!」


「行け! カイ!!

リリアを……頼んだぞ!!」


ズゥゥゥゥン!!!!


隔壁が完全に閉まり、カイたちの声が遮断される。


閉ざされた部屋。

ガルドは一人、無数のゴーレムと、神を気取るザガンと対峙した。


「……さて。

独り舞台は慣れていないが……精々、派手に散るとしようか」


ガルドは全身の魔力を燃やし尽くした。

その輝きは、水晶の冷たい光よりも熱く、そして眩しかった。


「我が名はガルド・ヴィクトリアス・アイゼン!

黒鉄の騎士なり!!」


激突音。

そして、爆発。

それが、罪深き英雄の、最期の咆哮だった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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