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【第85話:クリスタル・レイン】

【タイムリミット:残り2日(47時間)】


「総員、対空防御ッ!!」


獣王ヴォルグの怒号が響く。

だが、それより早く、空からの攻撃が始まった。


キメラたちが腹部から投下したのは、爆弾ではなかった。

青白く輝く、光の雨。


『第七戦略級魔法・クリスタルレイン』。


「避けろ! あれに触れるな!」


カイが叫ぶ。

だが、光の雨はあまりにも広範囲だった。

逃げ遅れた獣人たちが、光を浴びる。


パキッ……パキパキッ……。


「う、あ……?」


悲鳴すら上げる間もなく。

獣人たちの体が、次々と青い水晶へ変わっていく。

親を庇った子供が。

武器を取った戦士が。

一瞬にして、水晶の彫像へと変わり果てる。


「な……んだ、これ……」


ガルドが呆然と立ち尽くす。

彼の部下である剣の都の兵士たちも、巻き込まれて結晶化していく。

敵味方の区別などない。無差別な虐殺。


「ザガン……貴様、味方ごと……!」


『味方? 違うね。

彼らは私の新しい世界の「いしずえ」だ。

……美しいだろう? 争いも、声もない。ただ静寂だけがある世界』


ザガンの狂った笑い声が響く。


「ふざけるな……! ふざけるなァァァッ!!」


カイは絶叫した。

リリアと同じ悲劇が、今、都市規模で起きている。


「カイ! こっちだ! 地下の鍛冶場へ逃げろ!」


ヴォルグが瓦礫を吹き飛ばしながら叫ぶ。

彼の左腕も、先端がわずかに結晶化していた。

ヴォルグは気にもせず、エルナを抱えて走る。


「ガルド! お前も来い!

ここで死んだら、ただの犬死にだぞ!」


カイがガルドの腕を掴む。


「放せ! 私は……!」


「生きろ! 生きて、自分の落とし前をつけろ!

……リーゼ王女が守りたかったのは、こんな世界じゃないはずだ!」


その言葉は、ガルドの混迷の呪縛に雷を打った。

彼は歯を食いしばり、走り出した。


一行は光の雨を逃れ、《鉱山迷宮》の地下にある鍛冶場へと滑り込んだ。

背後で、重厚な鉄扉が閉ざされる。

その向こうでは、なおも静かな破滅の音が続いていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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