表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/96

【第82話:再会の翼】

【タイムリミット:残り2日半(60時間)】


獣王との「交渉バトル」は、壮絶なものだった。

エルナの重力魔法とノクスの連携、そしてヴォルグの剛腕のぶつかり合い。

地形が変わるほどの破壊の末、決着は――引き分けだった。


正確には、カイが「ヴォルグの足元の岩盤を溶解液で溶かして落とし穴を作る」という卑怯なアシストをしたおかげで、ヴォルグが盛大にズッコケて終わったのだ。


『いい戦いだった。エルナ。この短期間でよく成長した』


ノクスの声が、エルナの脳内に響く。

エルナが一息つくと、胸元のノクスが滑らかに浮遊し、再びカイの胸元へと戻っていった。


「……ありがとう、ノクス」


「ガハハハハ!!

魔法に、落とし穴か! 気に入った!

卑怯もまた戦術! 勝てば官軍、生き残った奴が強い!」


ヴォルグは豪快に笑い、二人を「客人」として迎え入れた。



その夜。

獣王の屋敷(といっても巨大な洞窟だが)で、盛大な宴が開かれた。

骨付き肉の山、樽ごとの酒。

獣人たちが太鼓を叩き、踊り狂っている。


「食え食え! 人間にしては骨のある奴らだ!」


ヴォルグがカイの背中をバシバシと叩く。

衝撃で肺が飛び出しそうだ。


「い、痛ぇよ獣王様……!

で、話の続きだ。

……俺たちを匿ってくれるのか?」


カイは痛む背中をさすりながら、本題を切り出した。


「ああ。俺は強い奴が好きだ。

それに、あの騎士どものスカしたツラも気に入らん」


ヴォルグは酒を一気に飲み干し、ニヤリと笑った。


「だが、ただ飯を食わせるわけにはいかんな。

お前ら、目的があるんだろ?」


「……ああ。

ザガンに奪われた仲間を取り戻したい。

そのために、この都市にある『重力鉱石』と、鍛冶設備を借りたい。」


「ザガン……あのむかつく武器商人の野郎か」


カイの言葉に、ヴォルグの目が鋭くなった。


「奴は、我が都市の『重力鉱石』を、安く買いたたこうとしてる。

裏で交易路を荒らしてやがるのさ。卑怯な手を使いやがって…」


ヴォルグが険しい表情で骨付き肉を噛み砕く。


「俺は鼻が利くんだ。

あの武器商人からは、腐った悪意の匂いしかしねぇ。

……カイ、お前らが作ろうとしてる『兵器』。

それがザガンの鼻っ柱をへし折れるなら、全面協力してやるぜ!」


「……マジか?」


「その代わり、完成したら一番に俺に見せろ!

もしも、しょぼい《デキ》だったら、晩飯のおかずにするからな!

ガッハハハ!」


豪快すぎる条件。

だが、カイにはそれが一番信頼できる契約に思えた。

書面もハンコもない、力と信頼だけの約束。


「よし!交渉成立だ。

……見せてやるよ、獣王様。

世界をひっくり返す、最高の大博打をな!」


カイは酒杯を掲げた。

隣では、エルナが獣人の子供たちに囲まれて、慣れない手つきで肉を食べている。

その顔には、泥汚れと一緒に、心からの笑顔があった。


(……悪くない夜だ)


だが、カイはまだ知らなかった。

この宴の音が、外からの来訪者にかき消されるまで、そう時間はかからないことを。



宴が終わり、獣人たちがそれぞれの住処へと帰っていく。

カイとエルナは、洞窟の外に出て、星空を見上げた。


「……きれいね」


エルナが呟く。

聖女の都では、こんなに星が近くに見えることはなかった。


「ああ。」


カイは空を見上げながら、少し遠い目をした。


「……あの飛竜、元気にしているかしら」


エルナが突然、そう呟いた。


「野生に戻ったんだから、きっと大丈夫だよ」


カイが答えると、エルナは少し寂しそうに微笑んだ。


その時。


空から、大きな影が近づいてくる。


「……なんだ、あれ?」


カイが警戒して立ち上がる。

エルナも、その影を見上げた。


影はゆっくりと降りてくる。

月光に照らされて、その姿が現れた。


「……まさか」


カイが驚きの声を上げる。


飛竜だ。竜の渓谷で調教した、あの飛竜が。


飛竜の首に、カイが結びつけた「飛竜の卵の殻」が、月明かりに照らされて微かに光っている。


「お前……戻ってきたのか」


カイが近づくと、飛竜はカイの手に頭をすり寄せた。

親しみを示す動作だ。


「覚えていてくれたのね!」


エルナが嬉しそうに叫ぶ。

飛竜は、エルナの方にも首を向け、優しく鳴いた。


エルナが飛竜の首を撫でながら、優しく語りかける。


「あなたは、私たちを空へ連れて行ってくれた。

風のように速く、自由に……」


エルナが少し考えてから、微笑みながら言った。


「……『疾風ゲイル』。

あなたの名前は『疾風ゲイル』よ」


飛竜は嬉しそうに鳴き、大きく翼を広げた。

まるで、その名前を気に入ったかのように。


「いい名前だな。……疾風ゲイルか」


カイが感心したように言う。


「うん。この子は、もう私たちの仲間よ」


エルナが飛竜の首を抱きしめるように撫でた。


「……ありがとう、疾風ゲイル。よろしく頼むぜ」


カイが飛竜の首を軽く叩いた。


「でも、なんで戻ってきたんだろうな」


カイが首を傾げると、胸元のノクスが明滅した。


『飛竜は、一度信頼した相手を忘れない。

特に、卵の殻を結びつけられた相手には、強い絆を感じる。

そして、エルナの魔力が飛竜の体に残っている。

その魔力を通じて、お前たちが危険にさらされていることを察知したのだろう』


「私の魔力を覚えていてくれたのね」


エルナが嬉しそうに言う。

飛竜は、エルナの手に触れると、さらに嬉しそうに鳴いた。


「きっと、私たちのことが心配だったのよ」


エルナが優しく飛竜の首を撫でる。


疾風ゲイルは、カイたちの近くに留まり、一緒に夜を過ごした。

その姿は、もう野生の飛竜ではなく、カイたちの仲間として、そこにあった。


エルナはうれしそうに、飛竜の首を撫で続けるのだった。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


少しでもお楽しみいただけましたら、

広告の下にある 【★★★★★】 を押して応援していただけると、執筆の励みになります!


↓↓↓ 広告下のこちらより ↓↓↓

(※感想もお待ちしております。)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ