【第7話:跳ね橋の向こう側】
錆びついた鎖の悲鳴とともに、巨大な跳ね橋が完全に上がりきった。
カイとリリアがいる城外への道と、リーゼ王女が残った城内は、深い堀によって分断された。
「王女様!! 嘘だろ、逃げてくれよ!!」
カイは堀の縁にすがりつき、対岸へ向かって叫んだ。
だが、その声は燃え盛る炎の轟音にかき消される。
対岸の石畳の上。
ガルドの大剣が振り上げられるのが見えた。
白いドレスを纏った小さな影が、逃げる素振りもなく、凛と立っている。
そして。
ドスッ、という鈍い音が、距離を超えてカイの鼓膜を叩いた気がした。
白い影が、糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
「あ…………」
カイの喉から、空気だけが漏れた。
思考が真っ白になる。
つい数分前まで、生きていた。
「生きて、抗え」と、カイに微笑みかけてくれた人が。
「あ、あ、あああああああ…………!!!」
絶叫が夜空に吸い込まれていく。
自分の無力さが、ナイフのように心臓を抉った。
ノクスを拾わなければ。迷宮に入らなければ。もっと強くあれば。
もしも、もしも――。
「カイ!! 立つんだ!!」
リリアの鋭い声と共に、襟首を強く引かれた。
「まだ王女様が――」
「もう死んだわ!! 見なさい、追手が来る!!」
リリアに無理やり顔を向けさせられる。
城壁の上から、無数の弓兵がこちらに狙いを定めていた。
矢の雨が降り注ぐ。
「走れ!! ここで死んだら、あの方の死が無駄になる!!」
リリアは泣いていた。
碧色の瞳から大粒の涙を流しながら、それでも剣士としての顔を崩さずに、カイの手を引いた。
カイは足をもつれさせながら、リリアに引きずられるように走り出した。
背後で燃える王城が、カイの網膜に焼き付いて離れない。
あれが、俺が選ばれた代償なのか。
一人の少女の命を踏み台にして、俺は生き延びるのか。
暗い地下水道への入り口に飛び込んだ瞬間、カイの心の中で何かが砕け、そして冷たく固まった。
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