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【第65話:わずかな希望】

【タイムリミット:残り9日】


カイはコラルから貰ったコードをノクスに入力した。


『コード認証……承認。

第七権限セブンス・オーソリティ、限定解除』


ノクスが激しく明滅し、黒い表面に赤い幾何学模様が走る。

以前よりも強力な魔力の波動を感じる。


『……ふう。久しぶりに深呼吸をした気分だ。

我のメモリ領域が拡張されたぞ、カイ』


「で、どうなんだ?

これがあれば、ザガンの結晶化を解けるのか?」


カイが縋るように問う。

ノクスは数秒の沈黙の後、冷酷な事実を告げた。


『結論から言えば、コラルの言う通りだ。

第七権限は、あくまで魔力の「出力リミッター」を外すもの。

だが、結晶化を解除するための「逆位相プログラム」を実行するには、触媒が必要だ』


「触媒……?」


『第七王家の純粋な血液因子。

通称――《聖女の血》だ』


カイは膝から崩れ落ちそうになった。

ここまで命がけでやって来て、まだ足りないのか。

あと9日しかないのに。


「……聖女の血って、あの『聖女の都』にいる聖女様のことか?」


『可能性は極めて高い。

ザガンの人造聖女計画……そのオリジナルが、聖女の都に幽閉されている』


カイは唇を噛み切った。

血の味が口の中に広がる。


商人の都から盗賊の都へ。そして次は聖女の都へ。

大陸を横断するような長旅だ。


「……遠いな」


「遠いよー」


コラルがキャンディを舐めながら、他人事のように言う。


「聖女の都セレスティアまでは、馬車で飛ばしても20日以上はかかるかな。

あ、でもお兄ちゃんの足ならもっとかかるかもね」


20日。往復したら40日。

完全にタイムオーバーだ。


「……詰んだか」


カイが絶望に沈みかけた時、コラルが玉座から飛び降りてきた。

彼女はカイの顔を覗き込み、オッドアイを輝かせた。


「ねえ。お兄ちゃん、ザガンのこと嫌い?」


「……あ?」


「あたしは嫌い。

あいつ、あたしのこと『失敗作』って言って捨てたから」


コラルの声に、初めて明確な殺意が混じった。


「だからさ。

お兄ちゃんがザガンの邪魔をしてくれるなら……ちょっとだけ手伝ってあげてもいいよ」


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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