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【第63話:悪夢】

【タイムリミット:残り9日】


寒い。暗い。息ができない。

悪夢を見ていた。


リリアが結晶化する瞬間の夢だ。

手を伸ばしても届かない。彼女の体が青い水晶に変わり、その瞳から光が消えていく。

「カイ」と呼ぶ声が、水底に沈んでいくように遠ざかる。


「――っ、はぁっ!?」


カイは弾かれたように跳ね起き、激しい目眩に襲われて枕に沈んだ。

視界が回る。天井のシミがぐるぐると渦を巻いている。


「……ここ、は……?」


カビ臭い天井。硬いベッド。

どこかの地下室のようだ。


『気がついたか、カイ』


枕元に置かれていたノクスが、安堵したように明滅する。


「ノクス……。俺、どうなったんだ?

宝珠は? リリアさんは?」


『宝珠は確保した。お前が気絶している間に、コラルの部下が回収していった。

……リリアの結晶化については、状況は変わらない』


「そっか……よかった……」


カイは脱力して息を吐いた。

生きて戻れた。ミッションは成功だ。

これですぐにコラルからコードを聞き出して、次へ――。


『カイ。落ち着いて聞け』


ノクスの声が、妙に重い。


『お前が地下水脈から引き上げられてから、高熱と感染症で生死を彷徨っていた。

……今日で、あれから「7日」が経過している』


「……は?」


カイの思考が凍りついた。

7日?

ただ寝ていただけの時間?


「嘘だろ……? ただでさえ余裕がないのに、一週間も無駄にしたというのか!?」


カイは慌ててノクスに問いかけた。


「ノクス! 今、残り日数は!?」


『リリア結晶化から21日経過。

残り日数は、9日だ』


「あ、あぁ……」


カイは頭を抱えた。

貴重な時間が、半分以上過ぎてしまった。

ただ移動し、迷い、寝込んでいただけで……。


「ふざけんなよ……! 俺の体!

なんでこんな時に……!」


カイは自分の太ももを拳で殴りつけた。

痛みはあるが、力が入らない。病み上がりの体は鉛のように重い。


「9日……。

移動時間を考えたら、もう何も失敗は許されない、いや最短ルートでもギリギリだ……」


絶望的な数字。

だが、嘆いている時間は1秒もない。


「……行くぞ、ノクス。

王様に謁見だ。コードを貰わなきゃ、この一週間が本当に無駄になってしまう」


カイはふらつく足で立ち上がった。

壁に手をつき、歯を食いしばって歩き出す。

その執念だけが、彼を突き動かしていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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