【第62話:水と電気と獣の骨】
【タイムリミット:残り16日】
■ 作戦開始
深夜2時。
屋敷の外で、突然、花火が上がった。
ドォォォン!!
「敵襲か!?」
「いや、ただの悪戯だ!」
騎士たちが一瞬、窓の方へ気を取られる。
その隙に、カイは通気口から「大量の水」を流し込んだ。
屋根裏にあった貯水槽のバルブを、安酒を染み込ませた布に火をつけて爆破し、破壊したのだ。
「なっ、水漏れ!?」
「宝珠を守れ!」
「なんだこの水、酒臭いぞ!?」
騎士たちが慌てて台座に覆いかぶさる。
だが、それはカイの狙い通りだった。
水に濡れた床は滑りやすくなる。
そして――彼らの鎧は金属製だ。
カイは通気口から、一本の電導ワイヤーを垂らした。
その先には、盗賊の都の発電機から直結した、盗電用のケーブルが繋がっている。
「感電しなッ!!」
バチバチバチッ!!!!
「ぐわぁぁぁぁ!?」
水浸しの床を通じ、電流が騎士たちを襲う。
致死量ではないが、麻痺して動けなくなるには十分だ。
「今だ!」
カイは屋根裏から飛び降り、滑る床を器用に滑走して台座へ迫る。
だが、隊長格の騎士が、麻痺に耐えて剣を抜いた。
「貴様ぁぁぁ……! 盗賊風情が!」
「悪いな! 俺は剣じゃ勝てないんでね!」
カイは手に持っていた「骨」を投げた。
ただの骨ではない。コラルの城にいた黒豹の唾液がついた、強烈な獣臭のする骨だ。
その匂いに反応したのは、屋敷の番犬――ではなく、床下から侵入していた「スラムの野良魔獣」たちだった。
カイが事前に通気口から餌を撒いて、屋敷の床下まで誘導していたのだ。
ガウッ! ガルルッ!
床を突き破り、飢えた魔獣たちが騎士に飛びかかる。
「な、なんだコリャァァ!?」
「魔獣だ! どこから入った!?」
混乱の極み。
阿鼻叫喚の地獄絵図。
その隙に、カイは宝珠を台座から――盗まなかった。
代わりに、台座の下の床板を外した。
そこは、古井戸へと続くダストシュートになっていた。
水攻めのために調べ上げた、唯一の抜け道。
「バイバイ、太陽!」
カイは宝珠ごと台座を蹴り落とした。
自分も一緒に飛び込む。
ドッパァァァン!!
地下水脈の激流の中、カイは宝珠を抱きしめた。
冷たい水が全身を打つ。息ができない。
だが、その腕の中にある光だけは、絶対に離さなかった。
(取った……! これで、リリアさんを救える……!)
暗い水底で、カイは一瞬だけ微笑んだ。
その瞬間、激流が彼を飲み込み、意識は闇へと溶けていった。
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