【第61話:単独潜入】
【タイムリミット:残り17日】
「……で、どうやって盗むんだよ、これ」
カイは使者の屋敷の屋根裏で、通気口から眼下の広間を覗き込んでいた。
コラルの城から放り出された後、必死でこの屋敷まで辿り着いたのだ。
中央の台座に鎮座する『白夜の宝珠』。
眩い光を放つその宝珠の周囲を、白銀の鎧を着た聖騎士たちが固めている。
窓も扉も、蟻の這い出る隙間もないほど厳重に封鎖されている。
『隙がないな。
正面突破は不可能。隠密も、あの感知結界の前では無意味だ』
ノクスの分析は冷酷だ。
カイはポケットを探った。
武器はない。
あるのは、スラム街で手に入れた安酒と、花火、そして――コラルの城からくすねてきた、黒豹がしゃぶっていた「骨」だけだ。
「……リリアさんがいれば、一瞬で片付くのにな」
弱音が漏れる。
もし彼女がいたら、「私が囮になるから、その間に盗みなさい」と言ってくれただろう。
その背中に守られて、自分は走るだけでよかった。
でも今は、誰もいない。
この暗い屋根裏で、埃にまみれて一人ぼっちだ。
日数も減り、体力も限界に近い。
「……いないなら、俺のやり方でやるだけだ」
カイは頭を振って、感傷を追い払った。
リリアがいない分、自分が二倍考え、三倍動くしかない。
カイは目を閉じ、屋敷全体の構造を脳内に描いた。
風の通り道。
騎士たちの巡回ルート。
そして――この屋敷の地下に眠る「古井戸」の水脈。
「ノクス。
あの宝珠の台座……あれ、浮いてるよな?」
『ああ。反重力魔法で固定されている』
「なら、重さが変われば警報が鳴る」
カイはニヤリと笑った。
弱者には弱者の、泥棒には泥棒の戦い方がある。
「だったら――《重さごと》盗めばいい」
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