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【第59話:死の謁見】

【タイムリミット:残り17日】


「……小僧。貴様、何が見えている?」


処刑台の上で、老人が動きを止めた。

カイのハッタリ――「あんたが王の所有物を着服している証拠を握っている」という嘘が、見事に刺さったのだ。


カイはノクスを光らせ、分析結果を突きつけるような仕草をした。


「全部だ。

あんたの靴底の泥……それが《王の回廊》と呼ばれる立ち入り禁止区画の土だってことも。

今ここで俺を殺せば、俺の相棒ノクスがそのデータを都市中にバラ撒く手筈になっていることもな」


ハッタリだ。そんな機能はない。

だが、後ろ暗い人間ほど、見えない監視者の影に怯えるものだ。


老人の額に冷や汗が伝う。

沈黙が広場を支配する。


やがて、老人は杖を下ろし、深く溜息をついた。


「……クソガキが。

交渉成立じゃ。ついて来い」


老人が処刑台の床板を蹴ると、隠し階段が現れた。


「王は気まぐれじゃ。

貴様のような嘘つきを、気に入るかもしれん」


地下深く。

迷路のような通路を抜けた先に、その《城》はあった。


城といっても、それは巨大なガラクタの山で作られた玉座の間だった。

金貨、宝石、盗品、そして骨。

あらゆる欲望が積み上げられた山の頂点に、小さな影が座っている。


「王よ。謁見希望者を連れて参りました」


老人が恭しく頭を下げる。


カイは玉座を見上げた。

そこにいたのは、筋骨隆々の大男でも、狡猾な策士でもなかった。


ダボダボの王衣を纏い、退屈そうに巨大なキャンディを舐めている、

まだ十歳にも満たないような《幼女》だった。


「……あ?」


少女が気だるげにカイを見下ろす。

その瞳は、右目が金色、左目が銀色。

そして首元には、ノクスと同じ材質の黒いチョーカーが巻かれている。


『……カイ、警戒しろ』


ノクスがかつてないほど強く警告する。


『あの小娘……ただの子供ではない。

あれは《生きた古代兵器》だ。我と同じ……作られた存在だ』


少女――盗賊王コラルが、ニタリと三日月形に口を歪めた。


「へぇ。

面白そうなオモチャが来たね。

――ねえお兄ちゃん。あたしのために死んでくれる?」


カイは、その無邪気な殺意の前に立ち、静かに笑い返した。

膝の震えを必死で抑えながら。


「死ぬのはごめんだな。

だが――もっと面白い遊び(ゲーム)を提案できるぜ、陛下」


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