【第58話:暴君コラル】視点:コラル ★新規POV
退屈だった。
世界は、どうしてこうも退屈なのだろう。
盗賊の都の最深部。
誰にも見つけられない《影の城》の玉座で、コラルは欠伸を噛み殺した。
見た目は十歳ほどの少女。
豪奢だがサイズの合っていない王衣をまとい、その手にはペロペロキャンディが握られている。
だが、その右目は金色、左目は銀色に輝くオッドアイ。
そして首元には、決して外れない黒いチョーカーが食い込んでいた。
「王よ。街から手紙が届いております」
影から現れた側近が、震える手で羊皮紙を差し出す。
例の、《七王家の遺産》に関する手紙だ。
コラルは指先だけでそれを受け取り、一瞥して丸めた。
「……遺産の在り処を知ってる、だって?」
「はい。新入りのネズミが、そう吹聴しております。
すぐに始末しましょうか?」
コラルは丸めた紙を口に放り込み、ガリガリと噛み砕いた。
紙の味。インクの味。そして――わずかに残る、書き手の《必死な匂い》。
「……へぇ。この手紙、嘘の味がしないね」
コラルは玉座から飛び降りた。
その動きは、重力を無視したように軽やかで、不気味だった。
コラルには記憶がない。
気づいた時には、この街の地下実験室でカプセルの中にいた。
体には無数の改造手術の痕。
脳には、人を殺すための膨大な戦闘データ。
彼女は、古代文明が作り出した《生体兵器》の失敗作だった。
失敗作ゆえに捨てられ、この掃き溜めのような街で、力によって王の座を奪い取った。
「ねえ、じい」
モニターに映る処刑台の映像を見ながら、コラルは目を細めた。
そこに映っているのは、震えながらも虚勢を張っているひ弱な少年。
「そのネズミ、あたしが遊んであげていい?」
コラルはニヤリと笑った。
その笑顔は無邪気で、そして底知れぬ狂気を孕んでいた。
「最近、壊れてないオモチャが欲しかったの。
……もし、あたしを楽しませてくれたら、生かしてあげてもいいかな」
コラルが指を鳴らすと、影の中から巨大な二匹の黒豹が現れた。
「ねぇクロ、シロ。お前たちも、美味しそうだと思わない?」
少女の笑みが闇に溶ける。
盗賊王コラル。
彼女にとって、他人の命はキャンディよりも軽い。
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