【第55話:赤蛇団の襲撃】
【タイムリミット:残り25日】
警告したにも関わらず、連中は諦めていなかったらしい。
隠れ家のあるスラム街の最下層へ向かう途中、カイは袋小路に追い込まれていた。
「へへっ、兄ちゃん。いい度胸してるじゃねぇか」
退路を塞いだのは、先ほどの少年の仲間と思わしき、屈強な男たち五人。
腕には赤い蛇の刺青。手には錆びついたナイフや鉄パイプが握られている。
「俺たちのシマでデカい口叩いた落とし前、つけてもらおうか」
リーダー格の男が、舌なめずりをして近づいてくる。
カイは壁を背にして立った。
逃げ場はない。武器もない。
(……リリアさんがいれば、五秒で終わるのにな)
またしても、思考がそこに行き着く。
剣閃一閃。彼女が舞うように敵を無力化し、「世話が焼けるわね」と笑う。
そんな当たり前の光景は、もうない。
「……金なら持ってないぞ」
「嘘つけ。その懐の膨らみ、いいモン隠し持ってんだろ?」
男たちがジリジリと間合いを詰める。
『カイ。戦闘推奨ではない。回避ルートを算出する』
ノクスの声が響く。
『敵戦力5。武装レベル低。知能レベル低。
……右側の壁、地上3メートルの位置にある配管。あれは老朽化しており、衝撃を与えれば破裂する』
カイの視界に、一本の赤いラインが引かれる。
それは逃走経路ではなく、反撃の道筋。
「おい、聞いてんのかコラァ!」
リーダーが鉄パイプを振り上げた瞬間。
カイは動いた。
逃げるためではない。
足元の空き瓶を拾い上げ、全力で右上の壁に向かって投げつけた。
ガシャン!!
瓶が配管のバルブに直撃する。
シューーーッ!!
凄まじい音と共に、高圧の蒸気が噴き出した。
「ぐわぁぁぁぁ! 熱っ、熱ぅぅぅ!?」
蒸気が男たちを直撃する。
地下都市の暖房用パイプだ。火傷するほどの熱気が路地に充満する。
「今だ!」
カイは蒸気で視界を奪われた男たちの隙間を縫うように駆け抜けた。
リーダーの股下をスライディングで抜け、背中を踏み台にして塀を乗り越える。
「あばよ! 火傷には水が効くらしいぞ!」
「待ちやがれ、クソガキィィィ!!」
怒号を背に、カイは複雑に入り組んだスラムの迷路を疾走した。
息が切れる。足が重い。
けれど、止まるわけにはいかない。
(戦える……俺一人でも、知恵とノクスがあれば!)
それは小さな自信。
だが同時に、戦いの後に背中を守ってくれる人がいない孤独が、冷たく胸に染みた。
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