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【第36話:バルコニーの約束】

競売前夜。

ホテルのバルコニーで、カイとリリアは夜風に当たっていた。

眼下には眠らない街の灯り。

空には満月が浮かんでいる。


「……いよいよ、明日ね」


リリアが呟く。

明日の夜、『闇の競売』に奴隷として潜入し、血液を奪取する。

失敗すれば死。成功しても、世界中を敵に回す逃走劇の再開だ。


「怖い?」


「少しね。

……でも、あなたがいるから大丈夫」


リリアがカイの方を向く。

夜風が彼女の髪を揺らし、プレゼントした髪飾りが微かに音を立てる。


「カイ。私、あなたに謝らなきゃいけないことがあるの」


「謝る? なにを?」


「最初、あなたのこと……ただの足手まといだと思ってた。

守ってあげなきゃ死んじゃう、弱い子だって」


リリアは苦笑する。


「でも違った。

あなたは弱いけど、誰よりも強い。

……私、あなたの背中を見るのが好きよ」


「……よせよ。照れるだろ」


カイは手すりを握りしめた。

心臓がうるさい。


「リリアさん。

……俺も、約束する」


カイはリリアの目を見つめた。


「全部終わったら……誰も知らない田舎に行こう。

そこで畑を耕して、朝はゆっくり起きて、美味い飯を食う。

……二人で」


それは、プロポーズに近い言葉だった。

明日、生きて帰れる保証なんてない。

だからこそ、未来の約束をしたかった。


リリアの瞳が潤む。


「……うん。行こう。

二人で……静かな場所へ」


二人の顔が近づく。

触れ合うほどの距離。

互いの吐息がかかる。


(キス……するのか?)


カイが目を閉じかけた、その時。


ドォォォォォン!!


遠くで花火が上がった。

二人はハッとして、パッと離れた。


「あ、あー……! 花火! 綺麗だな!」


「そ、そうね! すごい音!」


顔を真っ赤にして誤魔化す二人。


「……明日、全部終わったら。この続き、したいな…。」


カイが小声で言うと、リリアは耳まで赤くして、コクンと頷いた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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