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【第35話:屋台街の休日】視点:リリア

競売までの数日間、二人は潜入準備という名目で、街を歩き回った。


昼下がりの屋台街。

スパイシーな肉の串焼きを頬張りながら、リリアは隣を歩くカイを見た。


「んー! これ美味しい!」


「食い過ぎだろ。さっきクレープ食べたばっかじゃん」


「冒険者は体が資本なのよ。食べられる時に食べておくの」


リリアは笑って、自分の串焼きをカイの口元に差し出した。


「ほら、一口あげる」


「いらねーよ……あむ」


結局食べるんじゃん、と笑い合う。


手配書が街中に貼られているのに、変装している今の二人は、誰からも怪しまれていない。

ただの、仲の良いカップルにしか見えないだろう。


(……不思議)


リリアは思う。

追われているはずなのに。

明日はどうなるかわからないのに。

今、この瞬間だけは、世界で一番幸せな気がする。


服屋でカイに似合うシャツを選んだり。

大道芸人のパフォーマンスを見て拍手したり。

カフェで地図を広げて、次の目的地の話をしたり。


リリアが広げたのは、アル=ヴェルド大陸の簡易地図だった。

七つの迷宮都市が、大陸の東西軸に沿って配置されている様子が、一目で分かる。


「……ねえ、カイ」


「ん?」


「商人の都の地下って、剣の都の迷宮と似た構造をしてる気がしない?

もしかして、噂の通り、七つの迷宮は全部つながってるのかしら?」


カイは地図を見つめながら、少し考え込んだ。


「……そういえば、剣の都の迷宮の最深部で、崩落で塞がれた巨大な通路を見たことがある。

あれは、他の迷宮へと続く道だったのかもしれないな」


「この世界にある迷宮は、元々一つの巨大迷宮だったという言い伝えがあったわね。」


「もし本当なら、すごいことだよな。大陸全土を覆う巨大な迷宮なんて」


二人は地図を見つめながら、そんな噂話を交わした。


「……ねえ、カイ」


「ん?」


「もし、この旅が終わっても……またこうして、二人で歩けるかな」


ふと口をついて出た言葉。

カイは少し驚いた顔をして、それから優しく笑った。


「当たり前だろ。俺たちは相棒なんだからな。」


「ふふ。」


リリアはカイの袖を掴んだ。

この温もりが、ずっと続けばいい。

心の底から、そう願っていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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