【第33話:カジノ・ロワイヤル(後編)】視点:ザラ
「……止めてきなさい」
支配人室で、ザラは短く命じた。
モニターの中のカイは、すでに店の利益の3%を叩き出している。
これ以上は、ビジネスの許容範囲を超える。
「はっ。……実力行使でよろしいですか?」
「いいえ。
丁重に、VIPルームへご案内して。
……私が直接、相手をするわ」
ザラは立ち上がり、真紅の口紅を引き直した。
数分後。
VIPルームの重い扉が開く。
「ようこそ、幸運な紳士とお嬢さん」
ザラは営業用の完璧な笑みを浮かべて二人を迎えた。
カイとリリア。
間近で見ると、手配書よりもずっと幼く、そして必死な目をしている。
「あ、どうも。
……あなたがオーナーさんですか?」
カイが警戒しながら尋ねる。
成金の演技は崩していないが、その指先はわずかに震えている。
「ええ。ザラよ。
……随分と稼いだようね。
どうかしら? チップを換金して帰る前に、私と最後の勝負をしない?」
「勝負?」
「ええ。
あなたが勝てば、チップを倍にしてあげる。
でも、もし私が勝ったら……」
ザラはテーブルに手配書を広げた。
「その10億の首、置いていってもらうわよ?」
空気が凍りついた。
リリアが隠し持っていた投げナイフの柄に手をかける。
黒服たちが一斉に銃を構える。
一触即発。
だが、カイだけが突然、笑い出した。
「ははっ……!
やっぱバレてたか。
変装なんて意味なかったな、リリアさん」
カイは上着を脱ぎ捨て、成金の仮面を外した。
そこにあるのは、Eランク冒険者としての、泥臭い覚悟の表情。
「いいぜ、ザラさん。
その勝負、受けて立つ。
……ただし、俺が勝ったらチップはいらない。
あんたが持っている『情報』をもらう」
「情報?」
「『人造聖女計画』……そして、この街に隠された『血液』の在り処だ」
ザラは目を細めた。
この少年、ただの逃亡者ではない。
商人の都の闇に、自ら手を突っ込もうとしている。
(……面白い)
ザラはキセルを置き、トランプのデッキを手に取った。
「いいわ。
ポーカーで勝負よ。
……イカサマはなし。純粋な心理戦でいきましょう?」
それは、女狐と詐欺師の、命を懸けた化かし合いの始まりだった。
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