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【第32話:カジノ・ロワイヤル(前編)】

ダンスで一汗かいた後、二人はカジノのメインフロアへと移動した。

ルーレット、ポーカー、ブラックジャック。

欲望と金が飛び交う戦場だ。


「さて、資金を増やすか」


カイは手持ちのチップをジャラジャラと鳴らした。

ホテルの支払いで残金は心許ない。ここで勝たなければ、明日の宿代もないのが現実だ。


「大丈夫なの? イカサマなんてしたら、すぐに裏に連れて行かれるわよ」


「イカサマはしない。

……ただ、『視る』だけだ」


カイはルーレット台の前に座った。

ディーラーは、糸目の男。

その指先には、微細なタコがある。熟練の職人か、あるいは詐欺師の証だ。


『カイ、あのディーラー。

盤面に微弱な磁力を流している。

特定の数字に玉が入らないように操作しているぞ』


ノクスの分析が脳内に響く。


「だろうな。

……リリアさん、俺の背後に立っててくれ。

死角からの視線をガードしてほしい」


「了解。……背中は任せなさい」


カイはチップを置いた。

赤の9。


「ノーモア・ベット」


ディーラーが玉を投じる。

カラカラと音を立てて回る白い玉。


カイの視界には、ノクスによる予測軌道線ラインが見えていた。

盤面の傾き、玉の反発係数、そしてディーラーが操作する磁力の干渉。


すべてが計算できる。

だが、計算通りに行かないのがギャンブルだ。

ディーラーが手元のスイッチを操作し、玉の軌道を変える瞬間。


(……そこだ!)


カイはテーブルの下で、隠し持っていた「微弱電流を流すコイン」を弾いた。

パチッ。

一瞬だけ、ルーレット台の磁場が乱れる。


玉が不自然に跳ね、隣のポケットへ。


「赤の9。……お客様の勝ちです」


ディーラーが目を見開く。


「へぇ。ビギナーズラックってやつかな?」


カイはニヤリと笑い、山積みのチップを引き寄せた。

周囲の客がどよめく。


「次。黒の17に全額オールイン


「……承知いたしました」


勝負は続いた。

カイはノクスの演算と、リリアの動体視力による合図(ディーラーの指の動きを読み取る)を組み合わせ、連戦連勝を重ねていく。


チップの山が、塔のように高くなっていく。


「おい、見たかあのガキ」

「イカサマか?」

「いや、何もしてなかったぞ」


ざわめきが大きくなる。

狙い通りだ。

派手に勝って、派手に目立つ。

そうすれば、必ず「親玉」が出てくるはずだ。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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