【第28話:10億ゴールドの男】
世界最大の経済都市、商人の都ヴァランザ。
その巨大な城門の前に立つ掲示板の前で、カイは石像のように固まっていた。
「……えっと、桁、間違ってないか?」
掲示板の中央には、カイの人相書きがデカデカと貼られている。
問題はその下の文字だ。
『指名手配:カイ』
『罪状:第一級国家反逆罪、王女殺害および国家転覆の容疑』
『賞金総額:1,000,000,000 G(10億ゴールド)』
10億ゴールド。小国が丸ごと買えるほどの金額だ。
「俺の首、高すぎだろ!? Eランクだぞ!? 査定ガバガバすぎないか!?」
『光栄に思え。お前の価値が認められた証拠だ』
ノクスが他人事のように言う。
「嬉しくねぇよ!! これじゃ街中の人間全員が敵じゃねーか!」
隣にいたリリアが呆れたように、フードを目深に被り直した。
「静かにしなさい、バカ。周りにバレるわよ」
「でもリリアさん! 10億だよ!? 俺、自分の首を切り落として換金所に行きたい気分だよ!」
『ふむ。自分の生首を持って換金するやつがいれば、歴史に名を残せるだろう』
ノクスが呆れたように突っ込む。
『それにしても、剣の都のガルドめ。思い切った値をつけたな。
これでは、路地裏の乞食から大商会の私兵まで、都市の人間すべてが刺客になったも同然だ』
カイは青ざめながら周囲を見渡した。
商人の都は、活気に満ちている。だが、行き交う人々――商人、傭兵、観光客――の視線が、どこか値踏みするように鋭い。
ここでは「金」こそが神であり、法であり、正義だ。
この都市の地下には、《黄金迷宮》が広がっているという噂さえある。
金貨で埋め尽くされた通路、罠だらけの宝庫、迷い込む者を永遠に逃さない欲望の迷路……。
「……で、どうするの、カイ。
スレンの紹介状があるとはいえ、この状態で情報屋に接触するのはリスクが高すぎるわ」
リリアが警戒を強める。
彼女の手はマントの下で常に剣の柄に触れている。
カイは深呼吸をし、思考を巡らせた。
正面から情報屋を訪ねれば、間違いなく売られる。
10億ゴールドという金額は、仁義や信用を紙切れに変えるには十分すぎる破壊力だ。
「……作戦を変えよう」
カイは決意を込めて言った。
「こそこそ隠れるから怪しまれるんだ。
この街のルールに従おう。
つまり――『金を持ってる奴が偉い』というルールに」
「どういうこと?」
「変装だ。それも、とびきり派手なやつな。
俺たちは追われるネズミじゃない。
観光に来た、世間知らずの『成金夫婦』になりすますんだ」
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