【第25話:空飛ぶ箒の脱出劇】
「速すぎぃぃぃぃぃッ!!」
カイはリリアの腰にしがみつき、風圧で涙目になりながら叫んだ。
スレンの『コメット』は、空飛ぶ箒というよりはロケットだった。
音速に近い速度で、魔法の都の尖塔群を縫うように飛翔する。
「カイ、しっかり捕まって! 追手が来るわ!」
リリアが操縦桿を握りながら叫ぶ。
背後から、評議会の戦闘魔導師が放った――ガーゴイルたちが迫っていた。
ヒュンヒュンヒュン!
魔法の矢が雨のように降り注ぐ。
『右舷、回避行動!』
ノクスの指示に合わせ、リリアが箒を急旋回させる。
身体がGで軋む。
「くっ……! リリアさん、運転荒すぎ!」
「文句言うならあなたが代わって!」
「嫌だ、ボクはここに残る!!」
カイはリリアにしがみついたまま、必死に叫んだ。
「…《残る》の意味違うから!」
(間)
「ノクス……なんとか迎撃できないのか!?」
『攻撃機能はない。だが、撹乱なら可能だ』
ノクスが明滅する。
『都市の交通管制システムにハッキングをかける。
……今だ!』
次の瞬間、空中に浮かぶ信号機代わりの魔石たちが、一斉に暴走した。
赤、青、黄色が乱滅し、一般の飛行魔導師たちが空中で立ち往生する。
「どけぇぇぇ!」
ガーゴイルたちが混乱した市民と接触事故を起こし、次々と墜落していく。
「やった!」
「油断しないで! 目の前!」
前方に、巨大な魔力防壁が展開された。
都市全域を覆う『遮断結界』だ。
「壁にぶつかるぅぅぅ!」
「ぶち破るわよ!!」
リリアは箒の出力を最大にした。
「カイ、あなたのノクスで結界の『綻び』を見つけて!
一点突破するわ!」
「無茶苦茶言うなよぉぉぉ……!」
カイはノクスの《戦術視覚》を最大出力にした。
赤いレーザーラインが網の目のように広がり、広域結界全体をスキャンする。
カイは血眼になって『綻び』を探す。
視界の中、巨大な光の壁の、ほんのわずかな魔力の揺らぎが見えた。
「2時の方向! あそこだけ魔力がちょっと薄い!」
「了解……ですわ! 絶対!!」
リリアが箒を急上昇させ、その一点に向かって突っ込む。
衝撃。閃光。そして――。
パァァァン!!
ガラスが割れるような音と共に、結界が砕け散った。
二人の乗った箒は、そのまま夜の闇へと飛び出した。
眼下には、遠ざかる魔法の都の輝き。
「……ぬ、抜けた……奇跡だ……ふぅ」
カイは箒の上で脱力した。
心臓がまだバクバク言っている。
「今の……かなり、やばかったわね」
リリアも肩で息をしているが、その顔はどこか晴れやかだった。
空を飛ぶ高揚感と、自由への開放感。
「次はどこへ行くの、相棒?」
リリアが振り返る。
カイは夜風に吹かれながら、スレンから託された地図を飛ばされないように広げた。
「……南西だ。
世界最大の欲望の街、『商人の都ヴァランザ』」
カイは地図の一点を指差した。
「ここに、人造聖女計画に必要な『オリジナルの血液』が運び込まれているらしい。
箒は星空の下、南西へと機首を向けた。
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