【第24話:評議会の追手】
「降伏せよ!! 反逆者スレン、および侵入者たちよ!!」
拡声魔法の声が響き、同時に研究室の窓ガラスが粉々に砕け散った。
飛び込んできたのは、武装した戦闘魔導師たちと、召喚されたガーゴイルの群れ。
「うわぁっ!? いきなり撃ってきやがった!」
カイは机の下に滑り込み、飛来する火球を避けた。
「私の研究室で暴れるとは、いい度胸だね」
スレンが杖を一振りする。
空中に展開された幾何学模様の魔法陣から、不可視の衝撃波が放たれ、ガーゴイルたちを壁に叩きつける。
「リリア君、右翼の魔導師を抑えて!
カイ君はボクの後ろで、ノクスの解析サポートを!」
「了解!」
リリアが前衛に飛び出し、魔導師たちの杖を次々と叩き折っていく。
殺さず、無力化する。その剣技は鮮やかだった。
だが、敵の数が多すぎる。
『カイ、増援が来るぞ。
塔の下層からも、上空からも包囲されている』
「完全に袋のネズミじゃねーか!」
スレンが舌打ちする。
「チッ……防御結界の出力が追いつかない。
このままじゃジリ貧だね」
スレンは研究室の奥にある、巨大なテラスへの扉を開け放った。
「カイ君、リリア君! こっちだ!」
「どこに行くんだよ!? ここは最上階だぞ!?」
「だから飛ぶんだよ!!」
スレンが指差した先。
テラスには、一台の奇妙な乗り物が鎮座していた。
それは巨大な箒のような形をしているが、後部に魔導エンジンらしき金属塊が取り付けられている。
「試作型高速飛行ユニット『コメット』。
ボクの最高傑作だ。これなら評議会の包囲網を、絶対、振り切れる!…たぶん」
「たぶんって…おい! これに乗るのか? 定員オーバーだろ!」
「密着すればいける! さあ急げ!」
リリアがカイの首根っこを掴んで引っ張る。
二人は強引に箒に跨った。
「スレン、あんたも来いよ!」
カイが叫ぶ。
スレンはテラスの縁に立った。
「嫌だ、ボクはここに残る!!」
「はぁ!? 殺されるぞ!」
スレンはニヤリと不敵に笑った。
「甘く見ないでくれたまえ。
ボクはこの塔の特級研究員だ。
それに、評議会の汚点(論文)の写しはまだここにある。
ボクを殺せば、その瞬間に世界中にバラ撒く仕掛けをしてあると言えば、彼らも手出しはできないさ」
それは命がけのブラフだ。
だが、スレンの瞳には微塵の迷いもなかった。
「行きなさい、カイ君、リリア君。
君たちの旅は、まだここで終わるべきじゃない」
スレンが杖を振り下ろす。
「発進!!」
ドォォォォォォン!!
魔導エンジンが咆哮を上げ、箒が弾丸のように空へ射出された。
「うわあああああああッ!!」
カイの絶叫を残し、二人はアークルーンの夜空へと消えていった。
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