【第23話:初期論文の真実】 視点:スレン
研究室に戻ってきたカイが、黒い封筒を机に叩きつけた。
「持ってきたぞ。……これがあんたの欲しかったものか?」
スレンは封筒の中身――古い羊皮紙の束を確認し、震える手でそれを開いた。
『人造聖女計画 初期論文』。
評議会が隠蔽していた、魔法文明の汚点。
「ああ、間違いない。……これだ」
スレンは貪るように文字を追った。
数式、魔法陣の図解、そして被験者たちの記録。
ページをめくる手が止まる。
『被験者No.31:スレン・アークライト』
姉の名前。
そこに記されていたのは、あまりにも無機質な観察記録だった。
『第七王家因子を投与後、適合率は98%を記録。
しかし、精神汚染が進行。
実験開始から72時間後、被験者は「幻聴」と「幻覚」を訴え、錯乱状態に陥る。
魂の定着に失敗したと判断し、データの回収後に廃棄処分とした』
(……72時間)
スレンは唇を噛んだ。
姉は三日間、狂気の中で苦しみ続けて死んだのだ。
それを「廃棄」の一言で片付けた連中。
「……スレン?」
カイの声に、ハッと顔を上げる。
彼は心配そうに、しかし過度な同情は見せずにこちらを見ていた。
「……大丈夫だよ、カイ君」
スレンは片眼鏡を外し、目をこすった。
「ただ、確認したかっただけさ。
姉さんが無意味に死んだんじゃないってことを。
……この論文によれば、姉さんのデータがあったからこそ、計画は次の段階へ進んだ。
つまり、今の《聖女》がいるのは、姉さんのおかげなんだ」
それはあまりにも皮肉で、残酷な真実だった。
だが、スレンにとっては一つの救いでもあった。
姉の命は、少なくとも世界に痕跡を残したのだから。
「……さて。感傷に浸っている時間はないようだね」
スレンが視線を窓の外に向ける。
賢者の塔の周囲に、無数の飛行魔獣と、評議会の執行官たちが集結しつつあった。
「……もうバレたのか」
カイが窓の外を見て舌打ちする。
「当然さ。アカシック・ヴォルトに侵入したんだ。
評議会も血眼になって追ってくるよ」
スレンは立ち上がり、白衣を翻した。
「君たち、逃げる準備はできているね?」
「ああ。いつでも行ける」
「よろしい。
……せっかくボクの研究室へ遊びに来てくれたんだ。
最高の脱出劇を見せてあげないとね!」
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