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【第18話:廃棄迷宮への道】

「……マジかよ」


図書館の隠し扉の奥には、底が見えないほど深い縦穴が広がっていた。

穴の奥底から、ときおりガサガサと異様な音が聞こえてくる。


スレンの情報によれば、この下が『廃棄迷宮』。

評議会が失敗作を捨て続けてきた、ゴミ捨て場だ。


「ここを降りるのか?」


『深さ200メートル。

壁面には劣化防止の結界が張られている。滑ったら即死だ』


ノクスが淡々と告げる。


「リリアさん、ロープは?」


「あるけど、長さが足りないわ。

……途中にある足場を伝って降りるしかなさそうね」


二人は覚悟を決めて、縦穴へと降りていった。

湿った空気。下から吹き上げてくる腐敗臭。

壁には、無数の爪痕のような傷が刻まれている。


(これ、這い上がろうとした跡か……?)


カイは想像して身震いした。

ここに捨てられた実験体たちは、生きたままここで果てたのか。


「カイ、足元に気をつけて。苔で滑るわ」


先を行くリリアが声をかけてくる。

彼女の身のこなしは軽やかだ。壁のわずかな突起に足をかけ、猫のように降りていく。


一方、カイは必死だった。


「ひぃっ、滑った!?」


ズリッ!


「っと、危ない!」


リリアが腕を伸ばし、カイの襟首を掴んで支える。


「……ありがとう、リリアさん。

マジで命綱だわ、あんた」


「あなたが落ちたら、私も寝覚めが悪いもの。

……ほら、もう少しよ」


ようやく底に辿り着いた二人は、ヘドロのような泥の上に降り立った。

そこは、迷宮というよりは、巨大な下水道のようだった。

壊れた家具、割れたフラスコ、そして――白骨化した何かの骨が散乱している。


「……酷い場所ね」


リリアが口元を覆う。


「進もう。

スレンの言う通りなら、この奥に『オリジナル』のデータがあるはずだ」


カイはノクスを灯りに変え、暗闇の中を進み始めた。

足元の泥が、チャプ、チャプと不気味な音を立てる。


その音に混じって、別の音が聞こえてきた。


『……チ……シキ……』

『……ヨコ……セ……』


「……なんか聞こえないか?」


カイが立ち止まる。


「ええ。……複数の声が、重なってるみたいな」


闇の奥から、ズルリ、ズルリと巨大な影が這い出してきた。

それは、肉塊と古びた書物が融合したような、冒涜的な怪物だった。


「グルルル……チシキ……ヨコセ……!!」


「……出たな、本の化け物」


カイはノクスを構えた。

スレンが言っていた『魔導書擬態グリモア・ミミック』。

知識を詰め込みすぎて自我が崩壊した、悲しき成れの果てだ。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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