【第17話:夜の図書館デート(偽)】視点:リリア
学園潜入任務、三日目。
今日は夜の図書館で、残りのノクスの秘密に関わる情報を探すことになっていた。
「……静かね」
閉館後の図書館は、本の匂いと静寂に包まれていた。
月明かりが窓から差し込み、長い書架の影を床に落としている。
リリアはランタンを掲げながら、隣を歩くカイを横目で見た。
制服姿の彼は、相変わらず着慣れていない様子で襟元を気にしている。
(似合わないわねぇ……)
心の中で笑う。
でも、その不格好さが、なぜか愛おしく思える自分もいた。
「なぁリリアさん。この本、読める?」
「どれ? ……『古代ルーン語概論』?
無理よ、私は剣術科だったもの」
「A級なんだから、そういう教養もあるのかと思った」
「A級試験に古代語なんて出ないわよ。出るのは魔物の急所と、生存術だけ」
リリアは本棚に背を預けた。
こんな風に、命のやり取りもなく、ただ静かに本を探す時間。
それがどれほど贅沢なことか。
「ねえ、カイ」
「ん?」
「もし……全部終わったら。
追われることもなくなって、自由になったら、あなたはどうするの?」
カイは手を止めて考え込んだ。
「そうだな……。
田舎で畑でも耕すかな。
毎日、魔物の気配に怯えずに、昼まで寝て、美味い飯を食う。
……最高じゃん」
「ふふ、あなたらしいわね」
「リリアさんは?」
問い返されて、リリアは言葉に詰まった。
「私は……冒険者かしら。…よくわからないわ。
剣以外の生き方なんて、教わってこなかったから」
少し俯いたリリアの手に、温かいものが触れた。
カイの手だ。
「じゃあさ。
俺の畑、手伝ってよ」
「……は?」
カイは少し顔を赤くして、視線を逸らしながら言った。
「人手は多い方がいいし。
A級冒険者の用心棒がいれば、イノシシ除けにもなるだろ?」
「……私をカカシ扱いする気?」
「いや、そういう意味じゃなくて……。
その……一人じゃ、寂しいからさ」
リリアの胸が高鳴った。
これは、プロポーズ? いや、ただの雇用の勧誘?
どっちにしても、彼の不器用な優しさが嬉しかった。
「……考えておくわ。
給料が高かったらね」
「Eランク価格でお願いします……」
二人は顔を見合わせて笑った。
この穏やかな時間が、ずっと続けばいいのに。
そう思わずにはいられなかった。
その時。
図書館の奥から、ガサリ、と何かが這いずる音がした。
リリアの表情が一瞬で剣士のものに戻る。
「……カイ、下がって」
「ああ。……嫌な予感がする。
警備員じゃない。なにかもっと、異様な気配の音だ」
平穏は終わりを告げた。
夜の図書館に、異形の影が迫っていた。
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