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【第16話:人造聖女の噂】視点:スレン

深夜の研究室。

スレンはカイたちが持ち帰ったデータを、魔導スクリーンに投影していた。


「……ビンゴだ」


学園の地下書庫にあったのは、評議会の《出納記録》だった。

表向きは魔法触媒の購入履歴だが、その中身は異常だ。


『第七王家因子適合体……納入数:12』

『廃棄数:11』

『成功例:1(聖女の都へ移送)』


「成功例が、一体だけいる……?」


スレンの指が震える。

姉が命を落とした実験。その果てに、評議会はついに《完成品》を作り出していた。


(聖女の都セレスティア……。

あそこは宗教国家だ。まさか、彼らが崇める《聖女》の正体が、我々の都で作られた人造人間だというのか?)


あまりにも冒涜的で、そして滑稽だ。


「スレンさん、コーヒー淹れたけど……どうしたの、怖い顔して」


カイがマグカップを持って近づいてくる。

スレンは慌ててデータを隠そうとしたが、間に合わなかった。


カイの目が、スクリーンの一点を凝視している。


『被験者No.31:スレン・アークライト(廃棄済)』


「……これ」


カイがスレンを見る。

その目には、憐憫ではなく、静かな理解の色があった。


「お姉さん、か?」


スレンは息を吐き、片眼鏡を外した。

素顔の彼女は、年相応の弱さを隠せない、あどけない少女の顔だった。


「……そうだよ。

ボクの名前は、姉さんから取ったんだ。

天才だった姉が《失敗作》としてゴミのように捨てられたあの日から、ボクはスレン・アークライトになった」


スレンは自分の手を握りしめた。


「ボクは知りたいんだ。

姉さんが最期に何を見たのか。

そして、このふざけた計画の果てに何が生まれたのか」


カイは何も言わず、ただコーヒーをスレンの手元に置いた。


「……付き合うよ」


「え?」


「俺たちも、その《人造聖女》ってやつに関係ある気がする。

ノクスが……その名前に反応して震えてるんだ」


スレンはカイを見た。

この少年は、弱いくせに、時々ぞっとするほど核心を突く。


(……危ういな)


スレンは思う。

この少年は、知識への探求心で動いているわけではない。

ただ《生きる》ために、泥臭くあがいている。

その純粋な生存本能は、時にボクのような狂った研究者よりも、深く真実に到達してしまうかもしれない。


「……ありがとう、カイ君。

でも、深入りしすぎないほうがいいよ。

知識は時として、猛毒になるからね」


スレンは忠告した。

だが、すでに運命の歯車は回り始めていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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